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2016/6/9 13:34

【レビュー】往年のオーディオブランド「Aurex」の名を冠したハイレゾCDラジオの音質に迫る

オーディオコンポが電器製品の華だった時代、電機メーカーのほとんどがオーディオブランドを持っていた。例えばトリオ(ケンウッド)、Lo-D(日立)、オプトニカ(シャープ)などがあった。Aurex(オーレックス)もそんなブランドのひとつで、東芝のオーディオ商品に使われていたものだ。

 

オーレックスブランドの製品は90年代前半くらいから長らく途絶えてしまっていたが、2016年になって、突如現代に復活した。それがCDラジオの「TY-AH1000」だ。東芝は以前からCDラジオを販売しており、国内でも高いシェアを維持してきたが、ハイレゾ音源がブームとなっているいま、CDラジオでもハイレゾに対応し、より音質にこだわったモデルを新たに開発。そのモデルに、往年のオーレックスの名前を冠したのだ。

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TY-AH1000(実売価格2万9800円)は、CD、FM/AMチューナーを内蔵したスピーカー一体型のモデル。大きな特徴となるのは、CDラジオとしては初めてハイレゾ音源に対応したこと。ハイレゾ音源は、SDカードスロット、USBメモリーからの再生が可能なほか、PCと接続できるUSB DAC機能も備えている。ハイレゾ音源のファイルはFLAC、WAV(PC/USBメモリーのみ)で、いずれも最大96kHz/24bitまで対応する。PCとの接続時も専用ドライバーのインストールなどの面倒な手間は必要ないので、誰でも簡単にハイレゾ音源を再生できる。このほか、Bluetooth(NFC)オーディオ機能も備えており、スマホなどの音楽をワイヤレスで手軽に再生可能だ。

 

東芝レグザのオーディオ設計陣もチューニングに参加

そのTY-AH1000を使ったみた印象をレポートしよう。横幅40cmの外観はちょっと大きめのBluetoothスピーカーという感じ。横に長いボックス形状だが、CDドライブ部分の周囲にキャリングハンドルが備わっていて、持ち運びも手軽に行える。

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肝心なスピーカーやアンプ部分は、新たに開発した新サウンドシステムを搭載。ハイレゾ対応の20mmシルクドーム・トゥイーターと高磁束密度マグネット採用の8cmウーファーによる2ウェイスピーカーで、本体の大部分を占める大型バスレフ型BOXに組み込まれている。

↑左右にウーファーとツイーターを備える
↑左右にウーファーとツイーターを備える

 

アンプは、トゥイーターとウーファーをそれぞれ個別に駆動するバイアンプ構成で、小型で高効率なデジタルアンプを使用。トゥイーター10W+10W、ウーファー15W+15Wの合計50W出力を得ている。こうした本格的な音作りはもちろんだが、開発には東芝の薄型テレビ「レグザ」で採用されているオーディオシステムの設計陣が加わって、入念なチューニングを施しているのだ。

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↑背面にはバスレフポートを搭載

 

ハイレゾはもちろんラジオやCDも高音質で楽しめる

まずは個人的にも懐かしいFMラジオを聴いてみた。FMの受信は背面にあるロッドアンテナを使う。AM受信用には付属のループアンテナを使用する。FMチューナーはワイドFM(FM補完放送)に対応しており、AMの電波が入りにくい地域でもFM放送でAMラジオが聴けるものだ。NHK-FMやJ-WAVEなどと聴いてみたが、室内で使っていても感度は十分。聴き応えのある厚みのある音で、アナウンスも明瞭だし、音楽もしっかりと力強く鳴る。CDラジオというと、本格的なオーディオよりも下に見てしまいがちだが、これはなかなか立派な音だ。

 

CDの音もなかなかで、なめらかな感触で聴き心地が良いのが特徴と感じた。デジタル臭いとげとげしい感じがなく、楽器の音色やボーカルもナチュラルだ。クセのないニュートラルな音質傾向なのでジャンルを選ばない。

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↑CDはトップトーディング方式

 

肝心のハイレゾ音源は、USBメモリーのほか、PCとの接続で聴いたが、ハイレゾらしいきめ細かな表現をしつつも、決してカリカリの硬い音にならない。ジャズでは、ベースやドラムのリズムが弾むように鳴り、身体が動くようなノリの良さがしっかり伝わる。クラシックは、楽器の音色がリアルに表現でき、オーケストラ全体の勢いのある音まで力強く再現する。反応の良さとパワー感が大きな特徴といえる。強いていうならば、左右の広がりや音場のスケール感がもう少し欲しいが、左右のスピーカーが一体化されたモデルでは仕方がないところだろう。

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↑USBやSDカードポートは前面に搭載

 

昔懐かしい左右独立のレベルメーターが備わっているのも楽しいし、大型ディスプレイで日本語には非対応ながら曲名表示も可能と機能は十分。欲をいえば、USBメモリーやSDカードからの再生は選曲がしにくいので、スマホ用アプリなどで選曲操作ができるともっと便利だと思う。

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↑画面は表示が大きく見やすい

 

Bluetoothの音も、圧縮音源とは思えないクセのない自然な再現で、気持ちの良い音。比較的手ごろな価格のため、高度なデジタル技術などは盛り込まれていないが、基本であるアンプやスピーカーを作り込むことで、ラジオからハイレゾ音源まで充実感のあるサウンドが楽しめた。Bluetoothスピーカーのように使えて、CDやラジオまで楽しめる多機能さがあり、パーソナル用のオーディオとしてはかなり魅力的。新生オーレックスの名に恥じない、注目のアイテムと言えそうだ。

 

【URL】
東芝エルイートレーディング http://tlet.co.jp/
TY-AH1000  http://tlet.co.jp/news/ty_ah1000.htm