本・書籍
2017/8/26 14:10

天然石けんにこだわる、フランス式オーガニック育児

フランスでは今、昔々から南仏で作られているマルセイユ石けんが再び脚光を集めている。

24338275 - spa soap shop with different colors and smells.

マルセイユ石けんと銘打った製品は多く出回っているが、本物は72%の刻印がある無着色、無香料の素朴な四角い大きな石けんだ。

 

オリーブオイルをメインにコプラ油、パーム油を加えた72%の南仏産植物油に、28%の地中海カマルグの海水のみで作られる風土が生んだ産物だ。大釜で植物油を溶かし、その石けん生地を海水で洗うことにより、不純物が取り除かれ純度の高い石けんに仕上がるのだそう。さらにそれを地中海の潮風に当て乾燥させるというのが伝統的な製法だ。

 

マルセイユ石けんによる排水は川や海の微生物を殺すことなく自然に分解されるのでとてもエコ。また、肌にやさしいので、赤ちゃんのいる家庭ではこの石けんは欠かせないものとなっている。

 

小児科医が勧めるマルセイユ石けんでの洗濯

「赤ちゃん衣類やタオルなどはサボン・ド・マルセイユを使って洗ってください。肌のアレルギーは一度出てしまうと治すのが大変。ですから、その要因となりそうな化学物質を敏感な赤ちゃんの肌から遠ざけることが肝心です」

 

新生児時期からフランスで育ったわが娘を診てくれていた小児科医は、最初に診察を受けたときそう言った。香りや仕上がり感がいい合成洗剤によるアレルギー症例が増えてきたため、フランスのドクターたちは昔ながらの天然石けんでの育児を新米ママたちに勧めているのだと聞いた。

 

安売りスーパーにあるまがい物ではなく、本物を選ぶようにとドクターにアドバイスされた。
サボン・ド・マルセイユは登録された名称ではないため、巷には添加物が入っているのにその名で売られているものが多いのだという。オーガニック専門店で扱うものは本物と聞いたので、私はそこで、あめ色をした四角いずっしりとしたマルセイユ石けんを買った。そして、私が育った昭和30年代はじめに母がそうしていたように、石けんを持ち、洗濯板を使って娘のベビー用品を毎日毎日せっせと手洗いで洗濯していたのだ。

 

柔軟剤を使ったフワフワの洗い上がりではなく、なんとなくゴワッとした洗い上がりの感触は気になったが、それこそが自然なのだろうと思っていた。

 

ところで、肌にやさしいマルセイユ石けんでも、赤ちゃんの肌から皮脂を落としすぎてはいけないからと、石けんでの肌洗いは週1~2回にして、あとはお湯で流すだけにということも同時にドクターからアドバイスされていた。

 

マルセイユ石けんを使った育児のおかげか、娘はずっと肌のトラブルはゼロで育ってくれたのだ。

 

石けんは古代ローマに時代に偶然から生まれた

『石けんのひみつ』(宮原美香・漫画、オフィス・イディオム・構成/学研プラス・刊)は、私たちがいつも何気なく使っている石けんが、いつごろから使われているのか、どうやって作られるのかを詳しく教えてくれる一冊だ。

 

本書によると石けんは偶然にできたようだ。

 

古代ローマ時代、サポー(sapo)という丘の上の神殿で、動物を焼いて神に供える儀式があったという伝説がある。そのとき、したたり落ちた動物の脂が木の灰と反応して自然に石けんができ、その成分がしみこんだ土がよごれを落とすふしぎな土として大切にされたというんだ。

英語で石けんのことをソープ(soap)というのは、このサポーの丘に由来するともいわれているんだ。

(『石けんのひみつ』から引用)

 

オリーブ油を原料にした石けんの誕生

石けんが今のように手や体を洗うのに使われるようになったのは、800年頃からだという。

 

今から1200年ほど前から、地中海沿岸にあるマルセイユ(フランス)やサボナ(イタリア)で本格的な石けん作りが始まったよ。この地域には、石けんの材料となるオリーブと海そうが豊富にあり、オリーブ油と海そうを焼いてできたソーダ灰(炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどをふくんだ灰)を原料とした石けん作りが手工業として発展したんだ。その後、石けん作りはスペインやイギリスなど他の都市にも広まっていったよ。

(『石けんのひみつ』から引用)

 

石けんの日本伝来は1500年中頃

日本に石けんが伝わったのは、ポルトガル人が種子島に鉄砲を伝えた後の1500年中頃だといわれている。ポルトガル語で石けんを意味する「サボン」という言葉から「シャボン」と呼ばれるようになった。が、石けんは当時は高級品だったので大名など、ごく一部の人しか手にすることができなかったそうだ。

 

国産の石けんがはじめて売り出されたのは1873年のこと。堤磯右衛門という人が横浜で石けんの製造と販売をはじめたのが最初だ。その後、大阪や東京でも石けんが製造されるようになり、やがて私たちの暮らしになくてはならないものとして一般家庭に浸透していったのだ。

 

石けんによる手洗いが大切な理由

食中毒やさまざまな感染症を防ぐためには、石けんによる手洗いがいちばん効果的だ。電車やバスのつり革、階段の手すり、ドアノブなどなど、外出先ではさまざまな物に触る。そのとき感染症の原因となるウイルスが手についてしまうのだ。

 

水でサッと手を洗うだけでは汚れは落とせない。大切なのは石けん使い、正しく洗うこと。

 

石けんは、油のように水に溶けにくい物質を、小さくして水の中に分解させる働きがあるから、水になじまないよごれを落とすことができるんだよ。

(『石けんのひみつ』から引用)

 

この本では、石けんを使った手洗いの手順をイラスト付きで丁寧に解説している。また、本書では石けんの種類、固形石けんができるまでの行程なども詳しく解説している。漫画なので難しい成分の話が出てきてもすいすいと読み進められる。

 

(文:沼口祐子)

 

【文献紹介】

20170825_suzuki_6

石けんのひみつ

著者:宮原美香(漫画)、オフィス・イディオム(構成)

出版社:学研プラス

みんなは毎日石けんで手を洗っているかな?感染症や食中毒にかからないためには、石けんで手を洗うことがとっても大切だよ。でも石けんはどんな種類があるのかな?どうやって作られているのかな?これを読めば、石けんのひみつがよくわかるよ!

BookBeyondで詳しく見る