本・書籍
2017/11/5 16:00

時間もやる気もない人たちのための勉強法とは?

「わずか3ヵ月で英語が完璧に聞き取れる」

 

「英語力0のOLがバイリンガルになった」

 

「年齢、学歴、才能いらずで英語ペラペラ」

 

そんなことがあるんだろうか? 中学校から英語を習い始めて、高校までで6年。大学の第二言語も英語を履修して英会話学校にも通ったから、筆者の場合、英語は10年+α勉強したことになる。

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頭の中のキャビネット

英語学習法にはものすごく興味があるので、ついつられてウェブ広告をクリックしてしまう。そんなに短期間で英語が完璧に聞き取れたり、バイリンガル並みの表現力が身についたりするなら、筆者の10年+αは何だったのか? 長く続くメソッドの説明文を読み、受講料のところに行きつくと、設定価格はぶっちゃけかなりお高めだ。

 

「英語の学習で大切なのは絶対時間じゃない。方法論の質だ」

 

そう言われてしまえば筆者の方法論は間違っていたと認めざるを得ない。だって、まだ理想とする英語力には達していないのだから。

 

筆者はさまざまある英語学習法をディスるつもりはまったくない。

 

画期的な学習法が存在するのも事実だろうし、そういう方法で爆発的に英語力がアップした人もいるだろう。

 

そして、話は英語に限らない。

 

仕事が忙しくて絶対的に時間が足りない―そのために始める前から諦め気味の―人が何かを勉強するのに、最も効率的な方法とは何だろう?

 

それは、インプットした知識を整理し、必要な時にスッと出せるキャビネットのようなものを頭の中に作っておいて、使い勝手を最良の状態に保っておくことだと思う。そういうものは、どうやったら作れるんだろうか? しかもできるだけ時間をかけずに、である。

 

最も効率がよい勉強法とは?

“時間もやる気もない人向け”という特色をはっきり打ち出した『暗示で500%能力を引き出す勉強法』(内藤誼人・著/学研プラス・刊)は、ちょっとドキッとするまえがきから始まる。

 

人生は、“勉強”しているヤツが勝てるような仕組みになっている。勉強していないヤツは勝てない、という、きわめて単純な原理に基づいて世の中は動いている。

『暗示で500%能力を引き出す勉強法』より引用

 

文章は、次のように続く。

 

高校時代までは死ぬほど勉強していたのに、大学時代になってそのスピードが鈍り、社会人になると、一切勉強しなくなる人がいる。そんな人が勝ち抜いて行けるほど、この社会は甘くない。

『暗示で500%能力を引き出す勉強法』より引用

 

学生時代とちがい、社会人になると勉強自体に割ける時間が圧倒的に少なくなるのは当然だ。だからこそ、習い事や資格取得講座の広告で「短い時間で最大限の効果が出る」ことがうたい文句になるのも当然だろう。

 

著者の内藤誼人さんは心理学の専門家で、心理学のデータを実社会や日常生活で実践的に応用していく研究をなさっている。

 

次々と繰り出される60のヒント

第1章:心理術で“心に眠った”やる気を引きずりだせ

第2章:「勉強術」は「仕事術」

第3章:「読書術」で、効率よく知識を鍛えろ

第4章:努力を長続きさせるための「学習術」

第5章:あらゆる知識を自分の血肉にするための「記憶術」

 

60項目のヒントが、上に示した5章に分けられている。そして各項目の最期に、まとめのひと言が記されている。下に記したのは、ヒントのフレーズとまとめのひと言の組み合わせの例だ。この組み合わせ、納得がいく。

 

・「昔から頭がよかった」という記憶をデッチあげろ➡お気に入りの記憶をデッチあげよう。

・余分なモノは、目の届かない場所へ遠ざけろ➡ひとつずつ制覇せよ

・テレビは、読書のサブテキストと位置づけろ➡読書+映像で、効率アップ

・「エッチな気持ち」がクリエイティブな発想を呼ぶ➡恋愛感情は、創造性や独創性を刺激する。

・「忘れちゃってもいいや」と思えば、かえって忘れない➡「忘れないぞ」と念じてはいけない。

 

項目だけ見ると煽り感が目立つかもしれないが、対応する内容の論文が紹介されていて、説得力は十分だ。しっかりとした論拠があって、それを誰が読んでもわかりやすい内容に噛みくだいた上で、キャッチーな見出しがつけられている。

 

勉強したくない人たちのための How to study

内藤さんがこの本の対象として想定した人たちをもう一度確かめておこう。あとがきに次のような文章がある。

 

私が対象とする読者は、「勉強などしたくない」と心に決めてしまっている人たちだ。そういう人たちに、いかにやる気を出させるか。いかに机に座らせるか。まるで勉強したくないと駄々をこねる子どもに、なんとか勉強をさせたい母親のような気持ちで本書を執筆した。

『暗示で500%能力を引き出す勉強法』より引用

 

そういうアプローチの根底にある心理学の専門家としての蓄積は、巻末の参考文献の圧倒的な数を見れば一目瞭然だ。強く感じたのは、なんとか勉強させたい母親にありがちな押し付けではなく、家庭教師のお兄さんの視線に近いものだ。

 

ちなみに本書には、「時間も努力も足りない人に贈るちょっとブラックな記憶術」という言葉がサブタイトルとして使われている。そもそも勉強したくない人に向けて書かれた本を、勉強したいと少しでも思っている人が読んだらどうなるか。そりゃあ、スゴいことになるでしょうね。

 

(文:宇佐和通)

 

【文献紹介】

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暗示で500%能力を引き出す勉強法 時間も努力も足りない人に贈るちょっとブラックな記憶術

著者:内藤誼人

出版社:学研プラス

勉強する時間がない、続かない、効果があがらないと悩む多くの社会人に本当に足りないのはテクニック。心理学のデータを実践場面に応用する研究の第一人者、内藤誼人氏による、目からウロコの勉強&記憶術。誰でもできる簡単なテクニックで、勉強成果は倍増。

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