本・書籍
2015/3/25 0:00

危険な人物を事前に察知する方法

日本は安全な国だ。過激派組織もなければ、夜中でも一人で外を歩くことができる。
日本が世界と比較してどれだけ安全かを計測する「世界平和度指数」という指標がある。
これはイギリスのエコノミスト紙が、暴動の可能性や殺人件数など24項目にわたって162カ国を対象に分析し、各国や地域がどれくらい平和かを相対的に数値化したものだ。それによると、2014年のランキングでは日本は8位にランクインしている。しかし、それでも連日メディアが流すニュースには日本国内での犯罪や事件の報道が絶えない。しかも、世間を騒がせる兇悪犯罪を思い返してみると、被害者のすぐそばにいる人が犯人だったというケースが少なくない。

 

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こんなデータがある。2008年にアメリカでは1万4000件の殺人事件が起きているが、その中で赤の他人による犯行はわずか1742件。その4倍近くの件数は被害者をよく知っている人間が犯人だった。犯罪者はあなたのすぐそばにいるかもしれない。私たちはどのようにして自分たちの身を守れば良いのだろう。
そこで『FBI元心理分析官が教える 危険な人物の見分け方』という本を紹介したい。

 

 

FBI心理分析官(プロファイラー)とは?

この本の著者メアリー・エレン・オトゥールはFBI(アメリカ連邦捜査局)の元心理分析官(プロファイラー)だ。
彼女は引退するまで、性犯罪、誘拐、連続殺人、強盗など数多くの事件を解決に導いてきた。そのキャリアは28年に及び、世界中の警察から相談を受け、世界的に有名な連続殺人犯(シリアルキラー)にも接触し、彼らが犠牲者にどのようなことをしたのかも見てきたという。では、具体的にプロファイラーとはどのような仕事なのだろうか? おそらく、私たちが持つプロファイラーのイメージは、よくドラマや映画で描かれるような、殺人現場に残った1つの痕跡から、犯人がどんな生い立ちでどのような人物かという結論を導き出すという万能捜査員だろう。しかし、これは事実とは異なる。少なくとも、ちょっとしたディテールひとつを取り上げて全体的な結論を導き出したりはしない。
プロファイラーはまず行動を観察し、犯罪現場での観察結果を受けとめ、そこでおこなわれた行動を考える。そこに鑑識結果や検視報告など有益な情報を加える。その情報を活用して犯罪捜査分析(プロファイリング)と捜査および取り調べの戦略、訴追と裁判の戦略をつくっていく仕事なのだ。

 

 

危険な人物とは?

危険な人物とはいったいどんな人間なのだろうか。凶悪犯罪者・重大犯罪者に多いとされるのが反社会性パーソナリティ障害である。彼らは法律などの社会規範に沿うことができない。無責任で自身の行為に自責の念をもたないといった性質をもち、冷淡で共感に欠けることから集団生活においてはトラブルメーカーになりやすい。自身の利益のためにウソをつき人の操作に長け、衝動的に暴力行為に及ぶ傾向がある。彼らは殺人を犯した直後でも、妻の隣で眠ることができるし、自分が放った火のせいで家が焼けようと人命が失われようと良心の呵責や罪悪感を持つことはない。そうした犯人が気にかけているのは捕まりたくない、刑務所に入れられたくないという自身のことだけだ。
貴志祐介によるサイコ・ホラー小説『悪の教典』の蓮実聖司を例に挙げればイメージしやすいだろうか。見た目は魅力にあふれているが、その内面は決定的に他者への共感能力に欠け、他人を利用するだけ利用しどうなろうと関心を持たず、驚くほど無頓着に去っていくことができるーー。スキップのような軽い足取りで。

 

 

直感で危険回避はできない。

動物たちには本能的に危険を察知する能力が備わっていると言われる。よく知られているのは、震災などの前触れとしてなまずが暴れたりクジラが岸に打ち上げられたりすることだ。他にも犬や猫・鳥なども危険を察知すると普段とは違った行動をすると言われてる。
では人間の場合はどうか。私たちが危険な人物に出くわした場合、直感的に危険を回避することができるのだろうか? 答えはノーだ。確かに、背筋に悪寒が走る、心臓が高鳴る、お腹がずんと重くなる、といった感覚に襲われ、それがトラブルの予兆だと考えることはあるだろう。私たちは自分たちの身体的な感覚をついつい信じてしまいたくなるものだ。しかし、それにより危険を回避できるのであれば、多くのオレオレ詐欺は回避できるだろうし、ストーカーや家庭内暴力を行うような人物の本質を見誤ることもないだろう。このような出来事にあった被害者に尋ねると「こんなことが自分の身に起こるとは思わなかった」と返ってくる。つまり、直感はまったく働かなかったということだ。

 

 

危険な人物から身を守る。

それでは、危険な人物から身を守るにはいったいどうすればよいのだろうか。まずは、普段、私たちが何気なくしている行動を振り返ってみよう。例えば、フェイスブックで友達になる。知人の車に乗る。隣人を家に招き入れる。子どもを近所の家に泊まりにやる……。これらの行為がどうして危険でないとわかるのだろうか。あなたが直感で判断しているのであればこれらの行動を考え直した方がよいだろう。先にも述べたように危険な人物は身近にいる場合が多く、見た目で判断することは困難だし、直感が働くことはない。
ある人物が危険かどうかを判断するには多くの人間の内面を読み取る練習をすることだ。そのためには会話を通して相手から必要な情報を引き出し、質問に対しどんな反応を示したかを観察・分析し、その行動を生みだしているパーソナリティ(人格)を理解することだ。そして、判断を下せるほどの十分な材料をそろえるた上で、あなた自身が感情や偏見に惑わされず、冷静に合理的に決断を下すことが大切だ。プロファイラーと同じように。

 

(文・学研BookBeyond店長 酒井)

 

 

【文献紹介】

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FBI元心理分析官が教える 危険な人物の見分け方
著者:アリー・エレン・オトゥール(著) アリサ・バウマン(著) 松本剛史(訳)
出版社:学研パブリッシング

ストーカー、通り魔殺人、ネット犯罪……。日々凶悪化する犯罪の実行犯は、じつは私たちのすぐそばに潜んでいるかもしれない。長年、FBIでさまざまな犯人を分析してきた心理分析官の著者が、危険な人物を見分けるための具体的なノウハウを伝授する。

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