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2018/2/19 16:30

あなたも使ってない? 子どもを混乱させるダブルバインドの罪と罠

愛する彼女の誕生日。「なんでも好きなもの買ってあげるよ」とリクエストを聞いたところ、彼女の答えが「じゃあ車が欲しい!」だったら、あなたはどうするだろう。

 

「車はさすがに無理だから、他のもので頼む!」と伝えれば、「だよね~。じゃあ、ネックレスがいいなぁ」と話はまるくおさまるだろう。まあ、どこぞの社長だったら、ポンと車を買っちゃうのかもしれないが。

 

だが、相手が子どもとなるとそうはいかない。

 

44043802 - mother scolds her child

 

思ってた答えと違う! 子どもが想定外の選択をしたら…

たとえば、ある休日の朝。「今日はどこに行こうか? 行きたいところに連れて行ってあげるよ」と言うと、「ディズニーランド!」と子どもが答えたとする。あなたが関西圏に住んでいたとしたら、どう答えるだろうか? おそらく、「ディズニーランドは遠すぎるから、他の場所にしよう」と言うであろう。

 

また別のある日、スーパーのお菓子売り場にて。「好きなお菓子を選んでいいよ」と言ったら、子どもが選んだのはおもちゃメインのお菓子だったとする。いやいや、それはおもちゃだし。そもそも、ラムネ嫌いでしょ。と心の中で突っ込みながら「それはダメ! 別のお菓子に変えなさい」と怒った。これは特に、ママたちのあるあるではないだろうか。

 

実は上記2つの言動は、子育てにおいて避けた方がいい「ダブルバインド」の状態なのだ。

 

 

ダブルバインドとは?

ダブルバインドとは、二重拘束、つまり同時に送られる2つの矛盾したメッセージの間で板挟みになってしまう状態のことを指す。

 

「どこでも好きなところに連れて行ってくれる」と言ったのに、行きたい場所を伝えたら、「それは無理」と言われた。「好きなお菓子を選んでいい」と言ったのに、好きなものを持っていたら「違うお菓子にしなさい」と叱られた。これでは、子どもにとっては「なんで?」と混乱してしまうのだ。

 

日常の中でよく起こりがちなダブルバインドだが、なぜ子育てにおいて避けた方がいいのだろうか。『ママも子どもも悪くない! しからずにすむ子育てのヒント』(高山恵子・著/学研プラス・刊)から詳しく見ていこう。

 

 

ダブルバインドが続くと自己主張しない子になるかも!?

子どもは、まだ親の真意を読み取ることができない。特に乳幼児期は、言われた言葉をその通りに受け取り、素直に好きな選択をするのだ。
だから、自分の選択を否定されたり、変更を余儀なくされたりするダブルバインドの状態が続くと、子どもは「どうせまた否定される」と思ってしまい、自分で選択をすることをやめてしまうのだとか! 自己主張する意欲もダウンしてしまう。

 

「パパやママの言葉に従ったのに、怒られた」と混乱し、かといって「矛盾だ」と訴えることもできないため、あまりにダブルバインドが続くと、常に不安になり、混乱状態から体調も悪化、場合によってはおねしょやチック(一種のクセのようなもの)などの神経症状が出ることもあると、高山氏は述べる。

 

また、ダブルバインドは「昨日はいいと言ったのに、今日はダメと言われた」など、時差で起こる場合もあるのだとか。思い当たる節がある人も多いのではないだろうか。

 

 

ダブルバインドの回避法

日常でよく起こりがちなダブルバインドだが、どうしたら回避できるだろうか。高山氏がアドバイスするポイントは、次の2つ。

 

1.本当にしてほしいことだけをシンプルに伝える

小さな子どもには、親の言葉の裏にある感情や言葉の裏表を読み取る能力がまだ備わっていないため、「○○をしてね」「☓☓はやめてね」などとシンプルでわかりやすい言葉をかける

 

2.あらかじめ条件をつけておく

「この3つの中から好きなものを選んでいいよ」など最初に条件づけをしておくと、子どもは混乱せず、親も想定外の答えにイライラせずにすむ

 

たとえば、「テレビを見てもいいよ」と言ったものの、ダラダラと見続けていた子どもに「いつまで見てるの!」と叱るのもダブルバインド。はじめに「30分だけテレビを見てもいいよ」「この話が終わったらおしまいね」などと条件を決めて説明しておくといいそうだ。

 

 

一度は気持ちを受け入れることが大切

うっかり条件づけや説明をし忘れて、結果的に意図しないことをされた場合はどうしたらいいだろうか。高山氏によると、まずは一度子どもの思いに共感すること、これが大切だという。

 

選んでほしくないお菓子を持ってきた場合は、「それが欲しいのね」と、まず子どもの気持ちに共感して受け入れる。そうすることで、子どもは「自分の気持ちを言ってもいいんだ!」と自信につながるのだそうだ。その後に「でも、これはおもちゃでお菓子はほんの少ししかないから、別のにしようか」などとダメな理由を話すとOK。頭ごなしに叱るよりも、ずっとスムーズにいくのではないだろうか。

 

『ママも子どもも悪くない! しからずにすむ子育てのヒント』には、他にもついイラッとさせられがちな子どもの行動の意味や対策法、親自身の気持ちの切り替え法などがわかりやすく書かれている。一度読んで終わり、というものではなく、子どもの成長過程で時折読み返すと、その度に発見や気付きがある。私自身、何度も助けられている一冊だ。今回のダブルバインドにしても、「子どもは予想外の選択をするもの」と頭に置いておけば、どんな答えが返ってきてもどんと構えていられる。

 

完全な人はだれ一人いません。まず「不完全な自分」、そして「不完全なわが子」を愛してあげましょう。

(『ママも子どもも悪くない! しからずにすむ子育てのヒント』あとがきより引用)

 

高山氏のあたたかいアドバイスのおかげで、少し肩の力を抜いて子どもと向き合えそうだ。

 

 

【著書紹介】

GKNB_BKB0000405913722_75_COVERl

ママも子どもも悪くない!しからずにすむ子育てのヒント

著者:高山恵子(編・著)
出版社:学研プラス

子どもをイヤ!と思うことがあってもOK! ほかの子と比べて、焦らなくてもOK!無理にほめなくてもOK! 臨床心理士として活躍する著者が贈る、目からウロコのアドバイス。いつも手元に置いて、繰り返し読みたくなる1冊。

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