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2017/1/3 16:00

爆発的ヒットもシンプルなアイデア出しから――ヒットメーカーが語る“掛け算式”ネタ出し法

2丁拳銃という漫才コンビをご存じだろうか。93年デビュー組で、メンバーはボケの小堀裕之さんとツッコミの川谷修士さん。川谷さんの奥さんである野々村友紀子さんはかつて高僧・野々村というコンビで舞台に立っていた経験があり、現在は放送作家として活躍している。

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目から血が出るくらいおもろいことを考えろ

2丁拳銃の先輩でもある野々村さんは、夫の相方である小堀さんがあまりにもだらしないため、次のような言葉でしばしば説教しているという。

 

「芸人なら毎日、目から血が出るくらいおもろいことを考えろ」

 

〝毎日〟ではないし、ましてや〝目から血が出るくらい〟でもない。しかし、筆者もそこそこの頻度で面白いことを考えなければならない。第一の理由は、何といってもこのコラム。ネタの種類とマクラ、そして構成までを考えてから書き始める。すんなり構成が浮かべばもちろんそのまま書き進めることができるし、ぴしっと決まった感じのマクラを思いついた時も、その後の流れはいい。ただ、何も浮かばないことがある。

 

ネタ集め

自分を追い詰める時間が可能な限り短く済むように、情報収集は欠かさない。情報バラエティー番組は午前中から時間をずらしながら各局をすべてカバーし、PCとiPhone でネット由来の話を集める。気になった情報はページごとEvernoteにクリップしておいて、内容によって特徴づけて分類しながら、後で引き出しやすいようにしておく。

 

そうやって集めたものを、移動中の電車の中とかでぼーっと眺める。すると、なぞかけみたいな感覚でアイデアが浮かぶことがある。経験則的に、こういう時間が大切らしいことがわかってきたので、絶対必要なデータ集めの意識は高く保っておくよう努力している。

考え続けるという行い

そんな筆者が 『アイデアが枯れない頭のつくり方』 (高橋晋平・著/CCCメディアハウス・刊)を手に取った理由は、純粋な危機感だ。本当にアイデアが枯れない頭が作れるならぜひそうしたい。著者であるおもちゃの企画開発者高橋晋平さんは2007年に 『∞(むげん)プチプチ』というメガヒット商品を生み出したアイデアマンだ。 『ほじれるんです』 とか 『5秒スタジアム』、 『鳥人間』 などをはじめとする50種類以上のおもちゃを商品化してきた。ヒットメーカーを絵に描いたような人である。

 

しかし、そんな高橋さんでもアイデアはただでは降りてこないようだ。

 

実際には、幾度となくいわゆる「スランプ」を経験してきたのです。半年間、一度も企画が通らなかったり、何を考えればいいのかまったくわからなくなったり、二度と企画なんて考えたくない、と思ったり。そんなことを繰り返してきました。

『アイデアが枯れない頭のつくり方』より引用

 

仕事ができる人というのは、こういう負のループのような状態から抜け出す術を知っている人なんだろう。

 

筆者は冒頭部分で〝そこそこの頻度で面白いことを考え続けている〟と書いた。無意識のうちに「かなり頻繁に」という響きを持たせてしまっていたと思う。でも、そうじゃないのだ。〝そこそこ〟程度の頻度で面白いことを考えなければならない人は、実はどこにでもいるに違いない。

 

私の職業はいわゆる「企画」ですが、企画という仕事は、物事を考える仕事というより、物事を考え続ける仕事です。さらに言うと、企画を仕事にしている人だけではなく、ビジネスマンは皆、アイデアを出し続けなければなりません。

『アイデアが枯れない頭のつくり方』より引用

 

考え続ける。筆者の場合、締め切りという目盛りによって一度はリセットになるけれど、そのすぐ前もすぐ後も、考え続けるという行い自体には何の変わりもない。ならば、楽しくできるようにする方法はないか。

 

アイデア出しはシンプルである

アイデア出しのプロである高橋さんには、現場で培った多くのノウハウがある。ここで特に紹介しておきたいのは、掛け算で具体的なコンセプトにたどり着く方法だ。

 

まず、商品の形態を表すシンプルなキーワード(A)を決めておいて、それにランダムな形でさまざまな言葉(B)をかけ合わせていく。A×Bの組み合わせは無限大だ。最高に面白い組み合わせは、いくら論理的に考えても出ないこともあれば、まったくの偶然でひらめくこともある。こうした過程を経て生まれたのが、先に紹介した『ほじれるんです』だ。実際の段取りを踏まえ、高橋さんは言う。

 

「アイデア出しとは本当にシンプルである」

 

方法論は人それぞれだろう。でも、アイデアの女神は、「難しい」と思った瞬間に逃げて行ってしまう。それに、いいアイデアを出そうと力めば力むほど遠ざかってしまう。実体験を顧みると、そんな気がしてならない。

 

掛け算を軸にしながら、気負わず構えず、そして焦らず考え続けることが一番いいのかな。

 

(文:宇佐和通)

 

【参考文献】

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アイデアが枯れない頭のつくり方

著者:高橋晋平

出版社:CCCメディアハウス

 

2013年のTEDxTokyoに登壇するなど新進気鋭のアイデアパーソンとして活躍する、バンダイ社員の高橋晋平さん。世界で335万個を売ったキーチェーン玩具「∞(むげん)プチプチ」など斬新なおもちゃを企画し、独自の発想法を確立させてきた。※脳科学者・茂木健一郎氏との特別対談も収録。

 

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