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2017/4/24 17:06

“息をのむほど柔らかなボケ味”とウワサの「STFレンズ」の実力は?【徹底検証】

3月に発売されたソニーの「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」は、アポダイゼーション(APD)光学エレメントを内蔵し、ほかとは一線を画する高品位なボケが得られる中望遠単焦点“STFレンズ”である。前回は、その描写の特徴やほかのレンズとの違い(比較)などを紹介した。今回のレポートでは、この100mmSTFの描写をより詳細にチェックしながら、その特徴を生かした活用方法を考えてみたい。

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↑35mmフルサイズに対応する、Eマウント用レンズ「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」。参考価格/18万6300円

 

ピントが合った部分の描写性能は?

“αレンズ史上最高のぼけ味”とメーカーが謳うほど、非常に滑らかで美しいボケ描写が得られる「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」だが、ピントを合わせた部分の描写はどうだろう? いくら前後のボケが美しくても、肝心の被写体(ピントが合っている部分)の描写がアマいと興醒めである。ここでは、そこに注目しつつ、絞り値を変えながらチェックしてみよう。なお、以降の絞り表記は、カメラや撮影データに表示される「F値」に統一したい。

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高性能(高画質設計)を謳うレンズでf11も、絞り開放時はわずかにシャープさが落ちる製品も少なくない。さて、この100mmSTFの場合はどうか? 同じ構図で絞りをF5.6、F8、F11と変えて撮影してみた。

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↑この構図の四角で囲った瓦部分を拡大して、解像度をチェックしていく

 

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↑F5.6(開放)

 

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↑F8

 

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↑F11

 

カメラを三脚に据えた状態で、絞りを開放から1段づつF11まで絞って撮影(絞り優先オート・ISO100・手ブレ補正/オフ)。そして、画面左上に位置する瓦屋根の一部分を切り出す。一般的なレンズでは、絞りを開けると画面周辺部で描写がアマくなることが多いのだ。しかし、このレンズの場合は、絞り開放時から画面の隅々までシャープな描写である。拡大してチェックしても、気になる“あら”は見られない。切り出した瓦屋根の部分を見比べても、その違いはほとんど感じられない(オートホワイトバランスに起因する色のバラツキを除き)。

 

ピントを合わせた部分の描写が確認できたところで、いよいよ本丸、ボケ描写についてみていこう。

 

“STFゾーン”内でのボケ描写の違い

滑らかなボケ描写を生み出すアポダイゼーション(APD)光学エレメントの効果が得られるのは、絞りがF5.6(開放)からF8までのゾーン内になる。クリックストップ位置で言えば、F5.6、F6.3、F7.1の3ポジションである。

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今回も同じ構図で絞りを変えながら撮影し、比較。ここでは開放側から見るよりも、アポダイゼーション効果が得られないF8を起点に見ていくと、その違いがわかりやすいだろう。

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↑この構図で、全体の印象に加えて四角で囲った部分を拡大し、ボケ描写について比較する

 

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↑F8

 

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↑F7.1

 

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↑F6.3

 

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↑F5.6(開放)

 

F8からF7.1、F6.3と絞りを開けていくと、当然背景ボケの度合いは大きくなる。しかし、玉ボケになっている部分の輪郭を見比べると、意外にもF8との差はあまり感じない。ところが、F5.6(開放)で撮影すると、輪郭が劇的に滑らかになってくる(輪郭が消失する、と言えるかも)。このボケ描写の変化と、先ほどチェックしたピントが合った部分の解像性能から判断する限り、個人的にはこのレンズの良さを引き出す設定は“開放一択!”になると思う(ピント位置前後もハッキリ見せたい場合は別だが)。

「マクロ域切り換え機能」を搭載

鏡筒のマウント部に近い所(細くなる直前)には「マクロ切り換えリング」が搭載されている。通常の撮影では、最短撮影距離が0.85mの「0.85m-∞」に設定しておく。そして、さらに近接してボケを生かした撮影を行う場合は、最短撮影距離が0.57mに短縮される「0.57m-1.0m」に設定する。

 

このリング操作で光学系がメカニカルに連動し、ピントが合わせられる距離範囲が変わるのである。なお、0.57m時の最大撮影倍率は「0.25倍」で、これは高画質設計の中望遠単焦点レンズとしては立派な値だ。ここでは「0.57m-1.0m」ポジションを利用して、美しいボケ描写を生かした花やアクセサリー小物などのクローズアップ撮影を堪能してみたい。

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↑「マクロ切り換えリング」の設定は、リングの向かって左に装備されるロック解除のボタンを押しながら行う

 

冬枯れの花壇に“春の訪れ”を感じさせるクロッカスの花が咲く。特に小さい花ではないが、通常ポジションの「0.85m-∞」だと、あまり大きくは写せない。そして、花の周囲(地面)も広く写り込んでしまい、肝心のクロッカスの存在感も弱まってしまう。だが、「0.57m-1.0m」に設定して最短撮影距離付近で撮影すると、かなりクローズアップ度が高まり、背後に写る地面も大きくぼかすことができる。また、周囲の地面もあまり画面内に入らなくなり、結果的に一輪のクロッカスの存在感が強まってくる。

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↑「0.85m」付近で撮影

 

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↑「0.57m」付近で撮影

 

続いてクロッカスよりも小さい梅の花を撮影。こういった被写体も「0.57m-1.0m」で最短撮影距離付近で撮影すると、特定の花(一輪)が目立つような写真にできる。梅や桜のような花木は、花だけでなく枝の部分も目立つ…と言うか、目障りになることが多い被写体である。だが、滑らかで自然なボケが得られるこの100mmSTFなら、自然で上品な仕上がりが期待できる。

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ソニー α7RⅡ FE100mmF2.8STF GM OSS 絞り優先オート F5.6 1/640秒 WB:オート ISO100

 

変則的な撮影スタイルでも安定する「光学式手ブレ補正機構」

アポダイゼーション(APD)光学エレメント以外にも、本レンズの特徴はいろいろある。コントラストAFだけでなく像面位相差AFにも対応したAF機構や、光学式手ブレ補正機構。これらの機構の搭載も、快適に撮影を行うための重要な要素である。特に、減光が起きるアポダイゼーション(APD)光学エレメント内蔵による“シャッターの低速化”を考えると、光学式手ブレ補正機構の搭載はありがたい。

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↑フォーカスモードスイッチの下に配置される「手ブレ補正スイッチ」。今回の使用した「α7RⅡ」には、5軸ボディ内手ブレ補正機構も搭載されているが(シャッター速度換算で最大4.5段分の補正効果)、レンズ側の光学式手ブレ補正機構の効果と相まって、さらに撮影領域を広げることができる

 

植え込みの片隅に咲く小さなスイセンは、整った花弁と黄色の鮮やかさが印象的だった。その可愛らしさや美しさを表現するため、カメラを低い位置まで下げて、水平に近いアングルで狙う。この撮影スタイルによって、被写体と背景との距離が長く保たれ、大きなボケを得ることができる。そして、STFレンズ特有の美しいボケ描写により、背景の雑木林や前景の別の花を、幻想的な描写に仕上げることができた。

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ソニー α7RⅡ FE100mmF2.8STF GM OSS 絞り優先オート F5.6 1/320秒 -0.3補正 WB:オート ISO100

 

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↑上の写真の状況。このように、かなり雑然とした状態だが、カメラ位置を極端に下げることで、被写体の前後を大きくぼかすことができた。そんな変則的な撮影スタイルでは「光学式手ブレ補正機構」の働きにより、カメラブレの防止や構図の安定を図ることができる

 

“FE100mmF2.8STF GM OSS”Gallery

ここまでいろいろと紹介してきたが、この100mmSTFは実に撮影意欲をそそる1本だ。ということで、最後に本レンズで撮影した作例を何点か紹介しておこう。

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ソニー α7RⅡ FE100mmF2.8STF GM OSS 絞り優先オート F5.6 1/100秒 -0.3補正 WB:オート ISO160

 

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ソニー α7RⅡ FE100mmF2.8STF GM OSS 絞り優先オート F5.6 1/250秒 -0.3補正 WB:オート ISO100

 

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ソニー α7RⅡ FE100mmF2.8STF GM OSS 絞り優先オート F5.6 1/400秒 -0.3補正 WB:オート ISO100

 

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ソニー α7RⅡ FE100mmF2.8STF GM OSS 絞り優先オート F5.6 1/100秒 -0.3補正 WB:オート ISO320

 

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ソニー α7RⅡ FE100mmF2.8STF GM OSS 絞り優先オート F5.6 1/100秒 WB:オート ISO100