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2017/8/24 18:19

“絶対買い”な究極の高倍率ズームレンズ爆誕! 待望のタムロン「18-400mm」を実写レビュー

一眼レフ用交換レンズに究極の1本といえる高倍率ズームレンズが登場した。それが、タムロン 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLDだ。このレンズはAPS-Cサイズ一眼レフ用の交換レンズで、35mm判換算で27-600mm相当(キヤノン用は28.8-640mm相当)の22.2倍ズーム。従来の高倍率ズームレンズは、望遠側が300mm(450mm相当程度)までをカバーする製品が多く、いわゆるダブルズームキットの画角を1本でまかなえるレンズという位置付けだったが、このレンズはダブルズームを超える超望遠域までをカバー。これまではハードルの高かった超望遠撮影を、手軽な高倍率ズームレンズという形態で実現している。

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↑タムロン 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD。重さは400mm域をカバーするレンズとしては軽量な705g。300mm前後をカバーする高倍率ズームに比べるとやや長めでフィルター径も72mmと大きいが、約22.2倍というズーム倍率は驚きに値する。●参考価格/8万3700円

 

しかも最短撮影距離が0.45mと短く、最大撮影倍率は約0.34倍(35mm判換算では約0.51倍)で、望遠マクロレンズ的な使い方も可能。さらにはシャッター速度にして約3.5段分の手ブレ補正機構や、小型で静かなAF機構、屋外での撮影に配慮された簡易防滴構造を採用するなど、常用レンズとして極めて優れたレンズとなっている。ここでは、そうした魅力の数々を、従来のレンズとの比較や実写で確認していこう。

※本記事の作例にはキヤノン用を使用

 

5本の高倍率ズームを揃えるタムロンの自信作

タムロンはシグマやトキナーなどと同様のレンズメーカーだが、なかでも高倍率ズームレンズを得意とし、今回の18-400mmに加え、16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO、18-270mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD、18-200mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC、そしてフルサイズ対応の28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZDの計5本が現行製品としてラインナップされている。ここでは、ワイド側に強い16-300mmと18-400mmのスペックや実写での画角を比較してみよう。

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スペックを比較すると、最短撮影距離は16-300mmが0.39mと短く、近接撮影に強いが、最大撮影倍率は約0.34倍で18-400mmと同等。大きさは16-300mmに比べて18-400mmが22mmほど長く、最大径も4mmほど太い。質量は、165gほど重い。とはいえ、400mmをカバーするレンズを別に持つとしたら、同社製ではSP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2(1990g・ニコン用)、他社製で比較的軽量なものを選ぶとしてもシグマ 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary(1160g・シグマ用)などが必要になることを考えると、165g増で400mmまでカバーできるのは魅力的な選択肢といえるだろう。

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↑16-300mm(左)と18-400mm。並べて比べると18-400mmが大きく感じるが、ミドルクラスの一眼レフと組み合わせると重さや大きさのバランスがよく、400mm域を使用しても安定してカメラを構えられる。エントリー機との組み合わせでは、ややレンズ側が重く感じるものの、鏡筒側をしっかり支えることで安定する

 

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↑鏡筒には、AF/MF切り替えスイッチと手ブレ補正スイッチを用意。AF時の作動音は極めて静か。ただし、ピントリングが回転するタイプなので、撮影時はズームリングを持つのがおすすめ。そのズームリングは、幅が広く操作しやすい

 

望遠側と広角側の描写を実写で比較

実際にキヤノン用のレンズを用いて画角を比較してみると、望遠側は圧倒的に新製品の18-400mmのほうが被写体を大きく撮れる。これなら、運動会で子どもの表情を遠くから狙ったり、動物や鳥、飛行機を撮ったりする場合も活躍してくれそうだ。

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↑それぞれのレンズの望遠端、18-400mmの400mm(640mm相当・上)と16-300mmの300mm(480mm相当・下)で撮影。300mmでも十分望遠の切り取り効果は得られるが、400mmはさらに被写体を大きく写せることがわかるだろう

 

一方で、広角側は16-300mmが優位。数値上はわずかな違いだが、実際に撮影してみると写せる範囲の差は大きく、広角側の描写を重視するのであれば16-300mmという選択肢も十分考えられるだろう。

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↑それぞれのレンズの広角端、18-400mmの18mm(28.8mm相当・上)と16-300mmの16mm(25.6mm相当・下)で同じ場所から撮影。広角端はわずか2mmの違いではあるが、その数値以上に差は大きく、左右の木の写り込んでいる範囲などを見るとその違いがわかる

 

動く被写体を狙う場合は、ISO感度を高めて被写体ブレを防ぐのがコツ

ここからは、 18-400mmの作例を見ていこう。まずは動物撮影に挑戦してみたところ、大型の動物から小動物まで存分に撮影できた。しかも600mm相当まで対応しているで、小動物の表情をアップで狙うといったことも可能だ。ただし望遠側では絞り開放でもF6.3とやや暗めなので、ISO感度をできるだけ上げて速いシャッター速度で撮るのがポイント。手ブレ補正が搭載されているので手持ちでも撮影できるが、シャッター速度を上げないと被写体が動いてぶれてしまうからだ。1/250秒以上を目安にできるだけ速いシャッター速度で撮影しよう。

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↑トラが吠える瞬間の表情を400mmで狙った。絞り開放(F6.3)での撮影であったため、ピントが心配だったが、AFが高速かつ正確でトラの目にしっかりピントを合わすことができた

 

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↑カンガルーの子どもが立ち上がった瞬間を狙った。400mmで撮影したが、薄暗い場所だったので感度をISO800までアップ。絞り開放で1/60秒という厳しい条件だったが、強力な手ブレ補正によりブレなく撮ることができた

 

花などの撮影では、約0.34倍の最大撮影倍率が効果を発揮する。しかも、400mmのテレ端で被写体から少し離れた位置(撮像面から45cm)でこの倍率が得られるため、レンズの影も写り込みにくく撮影しやすい。手ブレ補正も機能するので、手持ちでも比較的撮りやすい。

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↑最短撮影距離付近でバラを撮影。F8まで絞って撮影しているが、400mmでの近接撮影ということもありピント前後のボケ量が大きい。ボケ描写が柔らかく美しいのは、さすがボケ描写に定評のあるタムロンだ

 

続いて広角側での作例を見てみよう。強いデフォルメ効果が得られるほどではないが、適度に遠近感を強調した撮影が楽しめる。

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↑18mmで屋内に展示されたクルマを撮影。クルマのヘッドライトに近寄って大きく写しつつ、背景を広く写し込むことができた

 

約3.5段分の強力な手ブレ補正を夜景撮影で検証

冒頭で本レンズの手ブレ補正効果は約3.5段分と紹介したが、単に手ブレが補正されるだけでなく、ファインダー像も安定するのでフレーミングも行いやすくなる。今回は、実際にどの程度効果があるのか、夜景を撮影して検証してみた。

 

広角端では手すりに肘を立てるなどしてカメラを安定させれば、1/2秒程度でもそこそこの歩留まりで撮影が可能。1/4秒程度なら、かなり高い確率でぶれずに撮影できた。同条件で望遠端でも撮ってみたが、1/15秒での撮影が可能であった。一般に「1/35mm判換算焦点距離(mm)」以上で撮影するとぶれにくいといわれており、本レンズに当てはめると広角端なら1/30秒以上、望遠端なら1/800秒以上が該当する。そこから3.5段分の効果があるとすると、計算上は広角端で1/3秒、望遠端で1/60秒となるが、今回の検証ではそれよりも遅いシャッター速度でもブレなく撮影できており、特に望遠撮影時には数字以上の効果が期待できそうだ。

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↑18mmで撮影したイルミネーション(上)は、1/4秒で手持ち撮影を行ったが、複数枚撮影してもほぼブレなく撮ることができた。400mmで撮影したもの(下)は、手すりに肘を立ててカメラ安定させることで1/15秒で撮影できた。これは640mm相当の画角であること考えると非常に強力。複数枚撮影したが、約半数が成功カットとなった

 

低速シャッターが使えることで表現の幅が広がる

1/2秒や1/4秒といった低速シャッターでの撮影は、被写体を意図的にぶらして撮りたい場面で活躍する。例えば、風景撮影で滝や清流の水の流れをぶらす場合や、夜景でクルマのライトを光跡にして写す場合、スナップ撮影で人物をぶらして動きを演出する場合などに有効。こうした撮影は、従来は三脚必須であったが、最近は各メーカーともに手ブレ補正が強力になり手持ち撮影でも対応できるようになってきた。本レンズでも広角から中望遠域であれば、そうした撮影が楽しめる。

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↑70mm(112mm相当)でライトアップされた噴水を手持ちで撮影。上の写真では、感度をISO1600まで上げて1/100秒(絞りはF5)で撮っているが、水が玉状になって写っている。下の写真では、感度をISO400まで下げ、絞りをF11まで絞って1/6秒で撮影。水の流れが大きくぶれることで、水の流れが線状となっている。このように低速シャッターが使えることで同じ被写体でも表現に変化が加えられる

 

単体で見ると安くはないが“総合的にお買い得”なレンズ

従来、400mm域をカバーする交換レンズは1kgを超えるレンズがほとんどで、約700gでそれを達成した本レンズの意義は大きい。しかも広角域からカバーする高倍率ズームは、この18-400mmが初となる。価格は実売価格で8万3700円と決して安くはないが、同様の焦点距離をカバーするために何本かのレンズを組み合わせることを考えれば十分にお得で、さまざまなシーンで活躍してくれるはずだ。特に広角での記念撮影から超望遠で遠くの被写体を大きく撮るケースの多い、子どもの運動会や発表会、旅先での撮影にはもってこいのレンズといえる。

 

高感度撮影が難しかったフィルムカメラの時代やデジタル一眼の黎明期には、開放F値が暗めであることから使いにくいと感じていたユーザーも少なくなかった高倍率ズーム。しかしながら、近年ではカメラの高感度化が進み、手ブレ補正も進化したことでF値が暗いことによる失敗や不安は、かなり解消している。そうした点も考慮すると、手軽に超望遠が楽しめる本レンズは、いまの時代に合った極めて価値のある1本だといえる。