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2017/9/14 17:00

【レビュー】広角側最強の高倍率ズームレンズはコレだ! “2mm”の差が生むタムロン「16-300mm」の描写力

数ある一眼カメラ用交換レンズのなかでも、1本持っておくと便利なのが広角から望遠までを1本でカバーできる高倍率ズームレンズだ。特にAPS-Cサイズ用で300mm程度までカバーする製品は、比較的コンパクトで超望遠域(450mm相当前後)までカバーできるとあって人気が高く、レンズメーカー製のほか純正レンズも数多い。

 

ただ、APS-Cサイズ用高倍率ズームの多くは広角端が18mm(27mm相当前後)となっており、広角側が物足りないケースも少なくない。そうしたなか、広角端が16mm(24mm相当前後)と広角側に強いレンズも存在する。それが、タムロンの16-300mm F3.5-6.3 Di II VC PZD MACROだ。ここでは、この16-300mm F3.5-6.3の特徴を実写を交えて紹介する。また、後半では他社の300mmまでの高倍率ズームとのスペック比較も行う。

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↑高倍率ズームレンズの多くは、カメラのキットレンズ(標準ズーム)よりは多少大きくなるものの、1本でダブルズームキットと同等か、それ以上の焦点距離をカバーできて便利。このレンズも長さ99.5mm、最大径75mm、質量540g(ニコン用)と、300mmまでカバーするレンズとしては小型・軽量。旅行など、荷物をできるだけ減らしたい場合にも最適だ

 

【特徴1】広角側が16mmで室内や記念撮影などに有利

18mmと16mmでは焦点距離は2mmしか違わないが、画角にすると対角線方向に7度近く違い、16mmのほうが数値の印象以上に広い範囲を写すことができる。そのため、狭い室内での撮影や壁などがあって後ろに下がれない状況で重宝する。また、記念写真で背景を広く入れたい場合や多人数での集合写真を撮るときなども有利だ。

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↑16mm(25.6mm相当・上)と18mm(28.8mm相当・下)の画角比較。飛行機の屋内展示を見下ろして撮影した。16mmでは飛行機全体を写すことができたが、18mmでは尾翼や跳ね上げられたキャノピーが一部切れてしまった

超広角域ではないため、最短撮影距離(39cm)で撮影しても極端なデフォルメ効果は期待できないが、遠近感が適度に誇張されて広角らしい写りが得られるのも魅力だ。

 

【特徴2】300mmで約0.34倍の近接撮影が可能

35mm判換算で450mm相当前後となる望遠側では、超望遠レンズならではの引き寄せ効果(遠くのものを大きく撮れる効果)や圧縮効果(被写体の遠近感が目立たなくなる)を得ることができ、被写体に適度に近づいて絞りを開ければ、背景を大きくぼかすことも可能だ。

 

最短撮影距離は全域で39cmなので望遠でも被写体にかなり近づくことができ、300mmでの最大撮影倍率は約0.34倍。マクロレンズ的な使い方が可能なので、花や小物などを撮影する場合にも最適だ。

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↑新宿の展望台から六本木方向を300mm(480mm相当・上)と200mm(320mm相当・下)で撮影。手前のビルから背景のビル群まで4~5km離れているが、200mmで撮影したものに比べ、300mmで撮影したもののほうがビル群が近くに感じられる。これを望遠レンズの「圧縮効果」という。400mm相当以上の超望遠域では、この効果が特に強くなる。撮影時は、できるだけ絞りを絞って、背景をぼかさないようにするのがコツ。この写真では、F8まで絞っている

 

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↑300mm(480mm相当)で撮影。花のしべにピントを合わせ、できるだけ大きく写すため、最短撮影距離付近で撮った。このように、マクロ撮影的な使い方も可能だ。開放絞りはF6.3とやや暗めだが、近接撮影であれば背景を大きくぼかすことができる

 

【特徴3】AFが高速かつ静かで動きモノに強い

動く被写体を撮る場合は、カメラ本体のAF性能や連写性能がポイントとなるが、いくらカメラ側の性能が高くてもレンズ側のAF速度が遅いと被写体を的確に捉えられない。その点、本レンズは超音波モーター「PZD(Piezo Drive)」が採用され、高速で静かなAFが可能。さらに、AF後に切り替えなしでMFでピント位置を微調整できる「フルタイムマニュアルフォーカス」にも対応する。AF作動中はピントリングが回転しないので、レンズがホールドしやすいというメリットもある。

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↑コンティニュアスAFを使い電車を連続撮影。AFの作動が速く、ほとんどのカットでピントが合っていた

 

【特徴4】手ブレ補正搭載で夜景撮影などにも向く

手ブレ補正機構「VC」を採用。これにより、開放絞りこそF3.5-6.3と暗めながらブレの少ない写真が撮影できる。ただし、動きのある被写体の場合には、高速なシャッター速度が必要なので基本的には補助的なものと捉えたい。とはいえ、フラッシュの使用できない室内撮影や夕景撮影など、手ブレによる失敗は大幅に緩和できる。

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↑16mmで夜景を手持ち撮影。絞り開放でシャッター速度は1/3秒だ。スローシャッターでも手ブレ補正を有効にして広角側を使うことで、高い確率で手ブレすることなく撮影できる

 

【他社比較】300mmをカバーするレンズとしては非常に小型・軽量

300mm程度の焦点距離をカバーするAPS-Cサイズ用交換レンズは、タムロン以外にもソニー DT 18-250mm F3.5-6.3(Aマウント用)、ニコン AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-5.6G ED VRとAF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-6.3G ED VR、リコー smc PENTAX-DA 18-270mmF3.5-6.3ED SDM、シグマ 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSMの5本がある。

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しかし、広角側がどれも18mmからとなっており、16mmまでカバーしているのは本機のみだ。大きさや重さは、焦点距離が異なるため単純比較はできないが、300mmまでカバーするレンズのなかでは最も小さく軽い。加えて、撮影倍率も最も高いのが魅力だ。

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↑ソニー DT 18-250mm F3.5-6.3

 

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↑ニコン AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-5.6G ED VR

 

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↑ニコン AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-6.3G ED VR

 

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↑リコー smc PENTAX-DA 18-270mmF3.5-6.3ED SDM

 

 

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↑シグマ 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM

 

【まとめ】ハイ・コスパで使い勝手のいい1本

一眼レフの高画質を生かしつつ、できるだけ小型・軽量に機材をまとめる場合や、レンズ交換を行う手間を省きたい場合に高倍率ズームは便利。そうしたレンズのなかでも、タムロンの16-300mmは、広角や近接撮影、動きモノに強いと3拍子揃ったレンズだ。

 

単に焦点距離だけを見るとダブルズームでもいいようにも感じられるが、広角や近接撮影の面ではそれらのレンズを凌駕しており、1本持っておいて損のないレンズだ。また、集合写真から遠くの被写体まで1本で撮れるという点で、運動会などの撮影にも適していると言える。

 

最近発売され、そのカバー域の広さから大人気となっている同社の18-400mmレンズと比較しても、望遠側こそスペック的に物足りなく感じられるかもしれないが、大きさやコストの面でのアドバンテージは大きい。鳥や飛行機撮影など400mmクラスの望遠が有利となる被写体を撮ることが多いのでなければ、過不足のない手軽なレンズとして本機も有力な選択肢になるだろう。