グルメ
2017/4/14 16:00

いま話題の「UMAMI BURGER®」を評論家はどう見てる? 日々進化を続けるバーガー事情の最前線

黒船系バーガーVSハンバーガー評論家・松原好秀 「UMAMI BURGER®」編

 

LA発のハンバーガーショップ「UMAMI BURGER®(ウマミバーガー)」と「THE COUNTER®(ザ・カウンター)」が3月下旬、都内に相次ぎオープンした。どちらも滑り出しは順調で、連日開店前から行列ができているという。一昨年にはNYの「シェイクシャック」と「ベアバーガー」が日本上陸を果たした。2020年の東京オリンピックへ向けて海外店の日本進出は続くだろう。

 

この状況、単に「ハンバーガー店がまたひとつ増えた」という程度の小さな変化ではない。新しい店がひとつ上陸するたびに、いままで私たちが知らなかったような「新しいハンバーガーの食べ方」や「新たな食材」、その「調理法」が新たに米国から持ち込まれ、日本に紹介されているーーと考えるとよいだろう。つまり、ハンバーガーについて私たちの知らない世界が「まだまだある」ということだ。

 

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事実、本場米国でもハンバーガーは日々進化し続けている。先の4店はいずれも今世紀に誕生した店ばかりだ。そうした新興のハンバーガーショップによる最新・最先端の技術やスタイルが日本に居ながらにして味わえるという、そんな刺激的でわくわくするような状況に、いま私たちはあるのだ。

 

本記事では日本初上陸で話題の「UMAMI」と「THE COUNTER」、それぞれの魅力や特色について触れながら、これから行く人のためにその楽しみ方をガイドしていこうと思う。

 

なぜUMAMI BURGER は、店名に「うま味」を冠したのか? 

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まずはUMAMI BURGER。2009年にLAの1号店オープン。現在全米に24店を展開する。海外の出店は日本が初めて。3月24日にオープンした日本1号店の場所は東京青山。表通りからやや入った立地で、おしゃれなアパレルショップや美容室の隣に一戸建て住宅が並ぶような、この界隈独特の入り組んだ街並みの中にある。席数70席の店内も同様、和洋・新旧、さまざまなテイストが混在する独特のセンスだ。

 

「うま味」を研究したアメリカ人

同店のキーワードは「UMAMI」。UMAMIとは日本語の「旨味」「うまみ」のこと。創業者アダム・フライシュマン氏は、甘味・酸味・塩味・苦味に次ぐ第五の味とされる「うま味」に着目して、研究の末、うま味を最大限に引き出す調理法を編み出し、「UMAMI ダスト」「UMAMI マスターソース」なる調味料を独自に開発した。日本の食から導き出されたそれらの研究成果を、米国を代表する食べ物「ハンバーガー」に落とし込むあたりがアダム氏の面白さだ。その点で今回の出店には、日本で生まれたものがまた日本に戻ってきたような、そんな里帰り的な意味合いもある。

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実際に店へ行くとどんな感じかーー。着席して注文を終えるとまず「ウェルカムピクルス」が運ばれて来る。いわゆる「お通し」だが、代金は無料。トリュフの風味を利かせたケチャップ、そして、きゅうりとビーツ(赤カブ)の酢漬けが並ぶ。ディルとガーリックが利いて酒飲みに持って来いのつまみだ。ビールは樽生が8種。ボトル4種。ワインは7種類すべてカリフォルニア産で揃えている。

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↑「ウェルカムピクルス」は、きゅうりとビーツの漬け物とウマミケチャップのセット

 

フードメニューはバーガー15品のほかに前菜4品、サラダ4品、サイドメニューが10品。注目は、ジャガイモでなくサツマイモを揚げた「スウィートポテトフライ」。大学芋のようなカチカチではなく「ほくっ」としているのが意外なおいしさ。シナモンが品よく香り、ついつい手が伸びる。

↑「スウィートポテトフライ」(648円)。サイドメニューはソースやチーズをトッピングしたポテトがバリエーション豊富
↑「スウィートポテトフライ」(648円)。サイドメニューはソースやチーズをトッピングしたポテトのバリエーションが豊富

 

風船のように膨らむ「うま味」

そこへバーガー登場ーー。「UMAMI ダスト」「UMAMI マスターソース」を駆使したシグネチャー「ウマミバーガー」。パティはチョイスグレードのUSアンガスビーフを毎朝店で挽いた170グラム。バンズは牛乳をふんだんに使ったリッチでソフトな生地感。そこへローストしたトマトとしいたけ、ソテーしたオニオン、オーブンでベイクしたパルメザンチーズなど、うま味をふんだんに含んだトッピングが乗り、トリュフ風味のウマミケチャップがかかる。フォークとナイフで食べてもよし、手で持ってガブリとかぶりついてももちろん構わない。バーガー袋は卓上に備えはないが、頼めば出てくるそう。

↑「ウマミバーガー」(1490円)。背の高いパティの上にキャラメルオニオン、パルメザンフリコ、ローストトマトとしいたけ、上からウマミケチャップ。全バーガー、バンズをレタスラップに変更可能
↑「ウマミバーガー」(1490円)。背の高いパティの上にキャラメルオニオン、パルメザンフリコ、ローストトマトとしいたけ、上からウマミケチャップ。全バーガー、バンズをレタスラップに変更可能

 

ひと口目、ファーストバイトの感想……甘い。そしてやわらかい。アチラのバーガーにはめずらしく、丸くて甘い味わいが特徴的だ。特にバンズは日本のバンズのように甘い。よくあるアチラのバンズはもっとドライで淡白だ。ふんわりやわらかなパティの感じもめずらしい。そうした特徴すべてが新しく、かつ個性的だ。

 

パティは鉄板でグリル。焼き加減は中に赤味を残すミディアムレア。しいたけと混ざり合った肉のうま味がじんわり感じられる。食べるうちにバンズからくる丸い甘味と、丸い肉のうま味とが増幅し合ってやがてひとつになり、風船のように口いっぱいに丸く膨らんでゆく。その満たされゆく口福感!

↑日本限定メニュー2品のうちの1品「ユウナミバーガー」(1382円)。真鱈のフライがハーブの利いたタルタルソースとコールスローのミックスとともにカレー風味でまとまる
↑日本限定メニュー2品のうちの1品「ユーナミバーガー」(1382円)。真鱈のフライがハーブの利いたタルタルソース、コールスローとともに、カレー風味でまとまる

 

「甘味はうま味」である。しかもこれは「幸福なうま味」である。日本限定バーガーの「ユーナミ(U-nami)」、男らしいという意味の「マンリー(Manly)」など、どのバーガーを食べても同じようにかならずその「幸福なうま味」と出合える。それぞれのトッピングの味を経由しつつ、でも最後には「うま味」という同じ目標地点にたどり着く。そこにブレがない。しいたけを入れたり、トリュフを香らせたり、一見複雑そうだが、造りは至ってシンプル。どの食材も「うま味」を表現するためにある。それ以外のムダなもの・余計なものは一切入っていない。すべては「うま味」のためーーそれがUMAMI BURGER だ。

 

「うま味」の秘密ーー「UMAMI ダスト」と「UMAMI マスターソース」

そのうま味の源、「UMAMI ダスト」と「UMAMI マスターソース」は、パティを焼く時に使う調味料なので、見た目にはわからない。「ダスト」は昆布、干ししいたけ、鰹節など、だしの素となるような食材を砕いてブレンドした粉末。「マスターソース」は醤油をベースに、中華料理の海鮮醤(ハイセン)などを加えた甘くて塩辛い調味料で、どちらも店内で作っている。17種類におよぶソース類もすべてイチから店で手作り。手間もかかれば暇もかかる。先ごろ日本に上陸したのは、そんな手間暇かかったハンバーガーを出すレストランである。

↑チョコレートバンズでアイスクリームを挟んだUMAMI BURGER のデザート「チョコレートスライダー」(540円)は全3種類
↑チョコレートバンズでアイスクリームを挟んだデザート「チョコレートスライダー」(540円)は全3種類

 

ここだけの追加情報……ただ一品、UMAMI 独特の丸くやわらかな味とは方向の違うバーガーがあるという。それが「スローバック(Throwback)」。敢えて薄く平たく成形し、ウェルダンに焼き込んだパティ2枚が醤油漬けのピクルスなどと合わさる一品で、私はまだ食べていないのだが、そう聞くとなるほど、他のバーガーにはない「尖った」ものが感じられる。3度目あたりの訪問で試してみたいメニューだ。

 

楽しむべきはその「うま味」。他の店では味わえない唯一無二の「UMAMI」ワールドを、ぜひ皆さんにもご体験いただきたい。

 

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― shop data ―

所在地:東京都港区北青山3-15-5 Portofino内

アクセス:東京メトロ 表参道駅B5出口から歩3分

オープン:2017年3月24日

営業時間:11:00~22:00(LO21:30)

定休日: 無休