グルメ
ラーメン
2017/7/7 18:30

「燕三条系ラーメン」がじわじわと勢力を拡大中! 田中 貴も足繁く通う“背脂煮干し”の実力とは?

サニーデイ・サービス 田中 貴のラーメン狂想曲 麺工 豊潤亭[武蔵小金井]

 

ラーメン好きミュージシャン田中 貴(サニーデイ・サービス)さんが気になるラーメン店を訪問し、一杯の味わいを一曲に例える当コラム。新潟県の燕三条に強烈なラーメンがあると聞いて、ツアーの合間に一人で途中下車したのは10年ほど前。その後も何度となく訪れている大好きなご当地ラーメンですが、燕三条きっての人気店が新たな味に挑戦したとのことで、早速その様子をチェックしてきました。

 

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田中 貴

2008年に再結成を果たし、以来ライブを中心にマイペースながらも精力的に活動を続けるサニーデイ・サービスのベーシスト。8月27日に、19年振りとなる日比谷野外音楽堂でワンマンライブを開催。ファン待望のイベントにつき、チケットは即日完売した。

 

斬新なご当地ラーメンはもう生まれない?

ご当地ラーメンといわれる、その地方独特のラーメンがある。それらが生まれた背景には、料理人の独創性はもちろんだが、「なるべくしてそうなった」部分も大きいのではと思っている。

 

百年ほど前に浅草で流行っていたラーメンという食べ物を、全国の人が「オラの街でもアレをやるべ」と作ろうとしたが、レシピも写真もない。食材だって同じものは手に入らない。そのなかで作り上げたがために、各地で見た目も味もバラバラに進化したのではないか。逆に、情報も物流も栄えた現代では、地方の人気店は東京の最先端のラーメンを見事にコピーした店が多い。

 

新潟の燕市・三条市あたりには、全国的にみてもトップクラスの奇抜なラーメンがある。通称「背脂煮干し」と呼ばれるラーメンは、町工場で働く人たちの出前として戦前に生まれた。のびにくく食べ応えのある超極太ゴワゴワ麺に、塩分補給のために醤油をガツンときかせたスープ。丼一面が真っ白になるほどの背脂は、スープを冷めにくくするだけではなく、その甘味でしょっぱさを和らげる。見た目も味わいもド級のインパクトは、その土地と時代ならではの不便さから生まれたのだ。

 

東京で本格的な燕三条の味が食べられる潤グループ

燕三条系で最も人気があるラーメン店といえば潤グループ。ボスの松本潤一さんは、燕市で生まれ、叔父が営むラーメン店で修行し25年前に独立。「一麺入魂」の座右の銘のもと、新潟県内と東京に十数店舗展開するほどまでに育て上げた。

 

東京での最新店である豊潤亭は、他の店舗とは違う特別な麺を使う。加水率50%以上という、いわゆる燕三条系ラーメンとは真逆の、水分の多い自家製麺を使っているのだ。一般的なラーメンと比べてもべらぼうに高い水分量だが、柔らかさだけではない独特の弾力がある。

↑中華そば(770円) 潤グループといえば燕三条系に岩のりを入れた元祖。磯の風味と歯応えがコッテリしたスープに絶妙にマッチング。背脂の量は、標準から鬼脂まで選べる
↑中華そば(770円) 潤グループといえば燕三条系に岩のりを入れた元祖。磯の風味と歯応えがコッテリしたスープに絶妙にマッチング。背脂の量は標準から鬼脂まで選べる

 

燕三条系の通常の麺が讃岐うどんのような食感なのに対し、これは博多うどんのよう。濃ゆーい醤油と背脂をたっぷりまとったニュルニュルプニュプニュとした麺を啜ると思わず声が出た。いやーん、こんなの初めて!

 

地元の伝統の味を守るだけではなく、新しい味にチャレンジする潤さん。トップを走る者は、常に新たな道に向かっているのだ。

 

<この一杯からはこんな音色が聴こえてきた!>

The Steve Miller Band  「Abracadabra」

標準でもこの背脂の量。コッテリ好きなら、中脂〜大脂と増したくなるが太りたくない。そんな時、背脂ラーメンマニアはこの呪文を唱える。アブラカダブラ……。

 

【店舗情報】

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麺工 豊潤亭

住所:東京都小金井市本町2-6-10 シティライブ武蔵小金井 1F

営業時間:11:00~15:00、18:00~23:00

定休日:なし

 

取材・文/田中 貴 撮影/黒飛光樹(TK.c)