グルメ
ラーメン
2017/6/25 10:45

時代を超えたラーメンを筆頭に何を食べてもウマい真の名店「龍朋」――サニーデイ・サービス田中 貴presents 女性も喜ぶ旬なラーメン

ラーメン好きなミュージシャンとして知られる、サニーデイ・サービスの田中 貴さん。年間600杯以上を食べ歩く田中さんが、女性にイチオシのお店を紹介するとしたら? そんな発想からはじまった本企画。今回は、神楽坂にあるノスタルジックな雰囲気の一軒が登場します。

 

多趣味でクリエイティブな店主のセンスを感じさせる多彩なラーメン

場所は駅から出てスグ。矢来口から徒歩1分程度の、メイン通りにつながる路地を少し下りたところにある「龍朋」です。これまで紹介してきたお店とはちょっと違い、年季を感じさせるいで立ち。壁には短冊に書かれたメニューが並び、そのなかにはラーメン以外の料理も。これはひょっとして、”町中華”と呼ばれるジャンルでしょうか? 田中さんに聞くと、今回の趣旨を教えてくれました。

 

「雑誌で特集が組まれるなど、町中華は注目されている分野だと思いますが、個人的に『龍朋』はちょっと違うと思います。確かにここにはラーメン以外の料理もありますし、昔ながらの面影も漂うなど、町中華的な要素も。ただ、メニューの多くが革新的でクオリティも抜群。おいしい中華料理を提供する老舗レストランというイメージでしょうか。そして真骨頂はラーメンですねもちろん女性にオススメな魅力もあり、だからこそ紹介したいんです」(田中さん)

オープンは1978年。もうすぐ40年を迎えますが、老舗にしか出せない温かさがところどころからにじみ出ています
オープンは1978年。もうすぐ40年を迎えますが、老舗にしか出せない温かさがところどころからにじみ出ています

 

この貫禄で「龍朋」となれば、出てくるのは鶏ガラスープによるやさしい醤油味やクリアな塩味など、昔ながらのラーメンを想像しがちです。ところがどうでしょう。田中さんが「女性なら塩かな?」とオーダーして提供されたのは、乳白色のスープと鮮やかなトッピングが印象的な一杯でした。

「塩ラーメン」(¥600)。豚のゲンコツと鶏のモミジによるスープに、宗田節と煮干しのダシを加えた動物+魚介系。コンソメやこぶ茶を使った塩ダレが奥深いうまみを生み、中細麺によく絡みます
「塩ラーメン」(¥600)。豚のゲンコツと鶏のモミジによるスープに、宗田節と煮干しのダシを加えた動物+魚介系。コンソメやこぶ茶を使った塩ダレが奥深いうまみを生み、中細麺によく絡みます

 

「醤油味の『ラーメン』(¥600)がスタンダードですが、女性には梅干しとシソのトッピングでさっぱりさせた塩ラーメンがいいかもしれません。僕が最初ここに来たのは90年代末とかでしたけど、衝撃的でしたね。当時はこういった、いわゆる豚骨魚介スープの店が注目を集めていましたが、それよりもずっと前からこの味。店主の松崎隆明さん(通称マスター)と話をして分かったのですが、多趣味で新しいもの好きなマスターの性格が、独創的なラーメンを生み出したんだと思います。梅のアイデアもかなり斬新ですもんね」(田中さん)

 

マスターが中華料理店で学んだ仕込みの丁寧さと、長年の仕事で培った卓越なる調理技術。それは、練炭で数十年絶やさず炊き続けるスープひとつをとっても明らか。そこに衰えない探求心が加わり、オリジナリティとインパクト性の高い一皿が生み出されるのです。そして次に紹介する「トマトたまごめん」も、同じような背景から考案されたもの。いまでは女性に大人気となっているそうです。

「トマトたまごめん」(¥720)。基本のラーメンのうえから、オイスターソースや砂糖などで味付けをしたトマトと玉子のあんをかけた一杯。具もおいしいですが、ラーメンそのものの味もしっかり感じられて絶妙に調和しています
「トマトたまごめん」(¥720)。基本のラーメンのうえから、オイスターソースや砂糖などで味付けをしたトマトと玉子のあんをかけた一杯。具もおいしいですが、ラーメンそのものの味もしっかり感じられて絶妙に調和しています

 

さらに田中さんは季節限定麺の魅力にも言及。晩秋~春は「生姜ラーメン」、初夏~秋口は「冷中華」が提供されており、しかもどちらも女性にウケそうなおいしさなのだとか。ということで、現在提供中の後者をオーダーしてみました。

「冷中華」(¥850)。生姜の搾り汁やレモンが甘酸っぱいタレに自然の清涼感を醸し出し、ほんのり香るゴマ油も絶妙。羽衣のような薄焼き玉子や、しっとりしてやわらかい短冊切りのチャーシューもお見事です
「冷中華」(¥850)。生姜の搾り汁やレモンが甘酸っぱいタレに自然の清涼感を醸し出し、ほんのり香るゴマ油も絶妙。羽衣のような薄焼き玉子や、しっとりしてやわらかい短冊切りのチャーシューもお見事です

 

「僕は『つけめん』(¥720)もお気に入りですが、とにかくこれだけメニューが多いにもかかわらず、ハズレがないんです。それはやっぱり熟練の経験値があってこそ。先ほどの『冷中華』のチャーシューにしても、冷たいからこそ脂身の少ない部分だけを入れてくれているんですが、おいしさへの細やかな配慮を突き詰めたひとつの例といえるでしょう」(田中さん)

 

飯やつまみもあってラ飲みにも最高!真の名店は何を食べてもウマい

ここまで麺類の話を中心にしてきましたが、冒頭でお伝えしたようにラーメン以外の料理も充実しているのが同店。そこで田中さんにイチオシを聞いてみることに。すると、次に紹介するメニューには複雑な思いがあるのだとか。それは一体?

 

「『龍朋』の人気メニューであり、僕も大好きな逸品が『チャーハン』。ただ、たまに”チャーハンがおいしい店”として紹介されるなど、そればかりがクローズアップされているような気も。もちろんこの『チャーハン』は絶品なのですが、それだけ食べて同店を知ったつもりになるのは非常にもったいないことです。たとえばこのおいしさの大きな秘訣はチャーシューにあると思うのですが、それはほかのメニューにも共通する具材なわけで。繰り返しになりますが、真の名店は何を食べてもウマいんです」(田中さん)

「チャーハン」(¥770)。固めに炊いたご飯と、卵、ネギ、チャーシュー、塩、胡椒などで仕上げる、あくまでシンプルなレシピ。セットのスープは、やはり白濁した同店ならではのもの
「チャーハン」(¥770)。固めに炊いたご飯と、卵、ネギ、チャーシュー、塩、胡椒などで仕上げる、あくまでシンプルなレシピ。セットのスープは、やはり白濁した同店ならではのもの

 

実はラーメンだけでなく、数多くの名店のチャーハンも食べている田中さん。「龍朋」のそれは、確かにほかに負けない超ハイレベルにあるとしながらも、初めての人にオススメしたいのはラーメンであると言います。それは同じく「The Lahmen」と掲げられている看板も、静かに物語っているのかもしれません。そして、種類豊富な料理はつまり、おつまみにもなるということで。

八丁味噌で作った自家製テンメンジャン決め手の「回鍋肉」(¥820)、塩と黒胡椒とホイップクリームでまさかのおいしさに仕上げた「きゅうりのクリーム和え」(¥500)。しっかり冷えた「びんビール(中)」(¥530)とも抜群の相性です
八丁味噌で作った自家製テンメンジャン決め手の「回鍋肉」(¥820)、塩と黒胡椒とホイップクリームでまさかのおいしさに仕上げた「きゅうりのクリーム和え」(¥500)。しっかり冷えた「びんビール(中)」(¥530)とも抜群の相性です

 

「全席がテーブル式。なかにはソファもあってくつろげますから、ラ飲みの名店でもあるんですよ。ひとりでしっぽり飲むのも格別ですが、数人で来ればいろんなメニューをシェアできるので楽しさも倍増ですよ」(田中さん)

ゆとりある空間にテーブルが並べられ、席数はおよそ36。通し営業で、アイドルタイムを気にせず来店できるのもうれしいポイントです
ゆとりある空間にテーブルが並べられ、席数はおよそ36。通し営業で、アイドルタイムを気にせず来店できるのもうれしいポイントです

 

旧花街に由来する石畳の歩道がモンマルトルに似ているなど、“小さなパリ”と称される神楽坂。パワースポットやお洒落な雑貨店も多く、女性の東京観光エリアとして高い人気を誇ります。美食の街として知られるようにおいしいお店も多いですが、お出かけの最後はぜひ「龍朋」で乾杯し、ラーメンで締めを!

 

取材・文=中山秀明 撮影=田実雄大

 

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