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2018/1/22 15:00

これを知らずしてロシア料理は語れない! 軍の野戦食から国民食へ進化した最強時短缶詰「トゥションカ」とは?

缶を開けてみると、びっしりと白い肉の脂が!

 

ロシアのスーパーには必ず置いてあり、ロシア人がよく使っている缶詰食材といえば「トゥションカ」。圧力鍋で肉をじっくり煮たものが入ったシンプルな缶詰です。牛肉、豚肉、羊肉と、さまざまな種類があり、塩胡椒と玉ねぎでじっくりと煮てあります。しっかり熱で滅菌処理がされているため、保存料や化学調味料は一切入っていません。また、じっくり煮込んで溶けた玉ねぎが入ったブイヨンと一緒に缶に詰められているので、旨味もたっぷり。

 

おすすめの使い方としては、スープにそのままいれたり、野菜炒めにいれたり、マカロニと和えたり。味つけが自由にできるのが魅力です。その濃いブイヨンのおかげで、コンソメなどを追加する必要はまったくありません。

 

そんなトゥションカ、実はもともとロシア軍の野戦食なのです。戦場でも栄養価が高く、調理時間短縮、長期保存できるトゥションカ。そのおいしさと便利さから、軍隊以外にも広まり今や国民の味となっています。

 

アレンジしやすく、時短料理で大活躍!

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なかに入っている肉は、玉ねぎや塩胡椒、臭み消しのローリエを加えられ、圧力鍋でじっくり煮込んであります。しっかり煮込んであるせいか、玉ねぎは溶けてしまっており、確認することはできません。脂が多いものの、ブイヨンがたっぷり濃厚でコンソメなどなしにスープに入れたり、マカロニに和えたりするだけで1品完成してしまう手軽さが魅力。味つけのアレンジをしやすいので、あと1品欲しいという時に便利です。

 

様々なメーカーが出していますが、同居しているロシア人のお義母さんが言うには、リアルな動物の絵が印象的な「エリンスキー」というメーカーがオススメです(下写真)。使用している肉の部位のせいなのか、肉質が良いそう。価格は約100~200ルーブル(日本円で200~400円)。お肉とブイヨンが詰まった338グラムの缶詰は持つとずっしりしています。未開封であれば、なんと3年もの長期保存が可能でアレンジも自由。調理済みのお肉がこの価格で手に入るのでお得感があります。

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ロシアのお母さんのレシピを受け継ぎ、筆者の家ではゆでたマカロニと和え、野菜と炒めながらケチャップやスパイスで味付けしたりスープに入れたりします。スープに入れる際も水で野菜を煮て、そのなかにトゥションカを投入して沸騰させるだけなので、とても簡単です。

 

下記の写真は実際に作った際のもの。ゆでたマカロニに牛肉のトゥションカ、冷凍の野菜ミックスを入れて炒め、塩胡椒で味を整えただけのわが家の究極時短料理です。マカロニを茹でる時間を省けば、10分ほど炒めるだけの調理時間ながら、牛肉のブイヨンの味がマカロニに染み込んで旨味たっぷりに仕上がります。大人も子どもも大好きな忙しい時の一品です。

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上記のように、時短料理には欠かせないトゥションカですが、わが家では持ち運びやすさから旅行にもよく持って行きます。ヨーロッパでは旅行の際、ホテルに滞在する以外の選択肢としてアパートメントホテル滞在があります。アパートメントホテルにはキッチンがついているのが標準で、朝・昼・晩とご飯を自分たちで作ることができるので、滞在費を抑えられたり、現地の生活を感じられたりするといったメリットがあります。このトゥションカさえあれば肉料理が1品できてしまうので、節約にもなりますし、現地で材料を購入するのに奔走する時間が省けるため、とても便利です。

 

また、小さい子どもやお年寄りがいる家庭でも重宝します。筆者も子どもが小さいときに肉を食べさせるのも一苦労でした。ひき肉だけではレパートリーが少ないと思って、細かく切ったり、圧力鍋でじっくり煮たりしましたが、時間と手間がやたらとかかりました。この缶詰なら、肉がほろほろと柔らかく、子どもでも簡単に食べられます。また、肉のバリエーションを変えたり、味つけを変えたりしながら、子どもたちにもさまざまな肉料理を手軽に食べさせてあげることができるようになりました。

 

時代を超えて愛される国民食

300グラム以上の肉がぎっしり入っているのに、手に取りやすい価格。3年という長期保存が可能で、実際の調理時間は驚くほど短くて済みます。旨味はしっかりあるものの、味つけ自体は薄味なのでレシピのアレンジがしやすいです。

 

もともと軍の野戦食として、保存性に優れ、調理時に余計な手間の要らないために重宝されたこの肉の缶詰め。その後はソ連の混乱を生き抜く重要な栄養源になり、いまや忙しいロシアっ子の栄養源にもなっています。時代を超えてロシア人を支えるトゥションカが国民食として根づいているのも納得です。