グルメ
2016/5/21 14:11

“第四の肉”はラム!ブレイクの仕掛け人に聞いた「あなたの知らない(羊の)世界」

焼肉、熟成肉、グルメバーガー、肉フェスなど、世は肉ブーム真っ盛り。他方では、「牛、豚、鶏に続く第四の肉は?」という話をちらほら聞きますが、その筆頭候補は羊であるといえるでしょう。理由はいくつかあり、大きな要素として挙げられるのが、訪日外国人の増加に伴う食のグローバル化と、それに付随した羊食の拡大。日本人よりも羊肉をよく食べる外国人が多ければそれだけ供給と消費も増えるわけですが、とはいえ決して外的要因だけではありません。「もっと日本に羊肉を!」という草の根運動がありました。
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それが2015年の未年に立ち上がった「Lambassador Project(ラムバサダープロジェクト)」。9名の食のプロを「ラム肉大使=ラムバサダー」に任命し、様々な活動を通してラムの魅力を発信していくというムーブメントです。仕掛け人は、オージー・ラム(MLA豪州食肉家畜生産者事業団)という、現地の生産者からの出資で輸出相手国でのPRやマーケティングを行う組織。先日、同プロジェクトの活動第1弾となるレシピブックが完成し、発刊を記念するパーティが開催されました。そこで、担当者をたずねてインタビューを実施。企画の概要や成果、今後の活動などをお伝えしましょう。

 

ラムを飲食のプロに根付かせてバイヤーから消費者へとつなげたい

伺ったのは、オージー・ラムの三橋一法さん。話を聞くと、羊には知られざる特徴がいっぱい。まず、生後1年未満の仔羊はラム、1年以上の成羊はマトンとされますが、マトンのなかでも1年~2年未満の羊は「ホゲット」と分類されることがあります。ただ日本ではあいまいになることを避けるためにホゲットとして扱いません。また、欧米諸国ではやわらかい肉質のラムが広く愛されており、特にフランスでは食肉の最高素材として扱われています。一方、中国、中東、北アフリカではマトンのほうが愛されているようで、嗜好が分かれますね。ちなみに、オーストラリアは中国などに輸出もするのでマトンも扱いますが、食文化的にはラムが愛される欧米型です。

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↑三橋一法さん。ビジネス・デベロップメントマネージャーとして、ラムバサダープロジェクトを運営しています

 

各国の羊飼育頭数でも大きな差があります。FAOの統計(国際連合食糧農業機関/2012年実施)によると、世界一は中国の1億8700万頭で2位はインドの7500万頭。この2国は人口に比例しているともいえますが、3位はなんとオーストラリアで7500万頭弱。ちなみに、日本は飼育数が1万2800頭で、輸入元は70%がオーストラリア。つまりはオージー・ラムなのです。これは供給量や品質の高さによるとのことですが、それもあってオージー・ラムの使命は大きいそう。

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↑オージー・ラム駐日代表のアンドリュー・コックスさん。パーティの冒頭で「これからも面白い企画を発信していきたい」と決意を語りました

 

そうして発足したラムバサダープロジェクト。その手法は実にクリエイティブなアプローチで成り立っています。まずは若手料理人や料理研究家といったこれからの食を担うプロに根付かせ、次にバイヤー、最後に消費者へと浸透させていくというもの。いまはその初期段階にあり、様々なセミナーやイベントが開催されているのです。今回のレシピブック発刊やパーティもその一環ですね。

 

年間200gしか食べない日本のラム文化を変える施策は今後も続く

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上の写真は今回のプロ向けレシピブック。非売品で店頭には並びませんが、多くの飲食店などに置かれることでしょう。そしてパーティではレシピブック内の料理が提供されました。一部を紹介していきます。

 

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渋谷「アデニア」、亀戸「デカリー」のオーナーシェフ・入江眞史さんによる「オージー・ラム骨付き背肉のロティ ピカタ仕立て エストラゴン」の香るソース。力強いラムに、ラムのチーズと香草がうまみを引き立てます。

 

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今回の会場となった虎ノ門ヒルズ「ピルエット」の小林直矢シェフによる「オージー・ラムレッグ スローロースト 3種の胡椒」。大地の香り漂うラムが、スパイシーな味付けでよりワイルドに。

 

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珍しかったのは、北海道の「東洋肉店」代表・東澤壮晃さん(写真右)による、ラムのサラミ(写真手前左)と生ハム(写真手前右)。対面でラム肉の様々な話をしてくれました。

 

最後に三橋さんは今後の展望について語ってくれました。

「日本では2005~2006年にジンギスカンブームが起き、一気にラム肉が注目されましたが、流行ゆえ一過性で終わってしまいました。現在、オーストラリア人の1年間のラム消費量が9kgに対し、日本人は200gと45倍もの開きがあります。ラムバサダープロジェクトの成果もあって消費量は約1割増えましたが、まだまだ伸びしろはあるはず。一層活性化させるため、今年はさらにラムバサダーを増やすなどで盛り上げていきたいですね」

 

【URL】

Lambassador Project http://aussielamb.jp/lambassador/

 

【SHOP DATA】

Pirouette(ピルエット)

住所:東京都港区虎ノ門1-23-3 虎ノ門ヒルズガーデンハウス 1F

電話番号:03-6206-6927

アクセス:東京メトロ銀座線「虎ノ門駅」4番出口徒歩6分

営業時間:ビストロ・カフェ:ランチ11:30〜14:30(L.O.)/ディナー18:00〜21:30(LO)、エピスリー:11:00〜21:30

http://pirouette.jp/