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2017/9/14 5:30

【西田宗千佳連載】製造のトレンドで決まるサイズ、重要なのは用途提案

「週刊GetNavi」Vol.58-4

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↑縦横比18.5:9のディスプレイを採用した「Galaxy Note8」

 

20年前は4:3、5年前は16:9ばかりだったディスプレイは、ようやくバラエティ豊かな縦横比へと拡大を始めた。技術の進歩により、液晶や有機ELなどのフラットパネルディスプレイが主流になり、さらにその周囲にある「額縁」を可能な限りなくす技術ができたことで、ディスプレイの縦横比を細かく変え、「使い勝手のいい比率」のものを作りやすくなったことが、実現の背景にある。縦横比を変えるどころか、角を丸くしたり円形にしたりしたディスプレイも作れる時代で、過去に比べると自由度ははるかに高くなっている。

 

とはいうものの、今後も、完全にディスプレイの縦横比が自由に選べるか……というとそうではない。結局、「たくさん作られていて、安く手に入る」ことが、ディスプレイの縦横比のトレンドを決めるからだ。

 

スマホでは21:9のディスプレイが増えていくが、これがすべてのシーンで有効か、というとそうではない。例えば、ペンを使って文房具的にメモをとる機能を重視した製品の場合、単純に「縦長」であることは便利なのだろうか? 16:9もしくは4:3に近いものにして、横幅を確保したほうが使いやすいかもしれない。しかし、サムスンは最新の「Galaxy Note8」で、ディスプレイを「Galaxy S8+」に合わせた。量産の効いた高品質なパネルを使うほうが、コストを抑えたうえで画質を上げやすいからだ。

 

逆にいえば、ディスプレイ側が変わったのであれば、それに合わせて用途も変わっていく可能性が高い。スマホがさらに縦長になると、情報量は縦に増え、スクロールの必要性は減る。また、情報を複数同時に見るために「上下分割」で使うアプリも増えるかもしれない。Androidには、2015年公開の「Android M」以降、画面を分割して複数のアプリを同時に使う機能が搭載されている。それ以前から、機器メーカー側が独自に拡張している例も多い。だが、それを有効に使っている人は意外に少ない。いままでのスマホの画面は狭かったので、「そこまでして使いたい」と思う人が少なかったのだ。だが、画面サイズ・縦横比の変化に合わせてソフト側で工夫をすることで、ある意味埋もれていた機能が再び注目されて広まる可能性も高い。

 

PCは「16:9もしくは10」「3:2もしくは4:3」「21:9」が使い分けられていくだろう。16:9は価格がこなれており、当面マス向けだ。ボディの奥行きを抑えられるので、小型モデルでは残る可能性も高い。一方、ノートPCで差別化を求めるもの、特にビジネス向けは紙の書類の縦横比に近い3:2が増えていく。

 

残るテレビやAV向けについてだが……。おそらくこれは、16:9からシフトすることはあるまい。熱心な映画ファンであれば「シネスコにあったディスプレイの可能性があるのでは」と思いたくなるところだが、映像が表示されていないところは「黒くなる」わけで、大きいものに枠をつければいい。16:9は、どの使い方にも向くし、量産効果も圧倒的だ。

 

これから増えてくるVRでは、ディスプレイそのものは「正方形に近い」と想定されている。それを両目分使い、さらにレンズでゆがませて表示するので、狭い範囲にできるだけ画素を詰め込めて、機器への組み込みも容易な正方形がいい……ということになるわけだ。今年は片目で1440×1440ドットくらいまでだが、18年・19年には「片目で2K×2K」が標準……という話が聞こえてくる。

 

そしてもちろん、VRで見える先の映像は「全天球」。どんな縦横比の映像でも自由に使える。ある意味究極の環境である。

 

●Vol.59-1は「ゲットナビ」11月号(9月23日発売)に掲載予定です。

 

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