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2018/2/16 6:30

【西田宗千佳連載】日本での「スマートスピーカー」市場の勝者はどこか

「週刊GetNavi」Vol.63-4

スマートスピーカー市場も、アメリカでは「第二フェーズ」に入った感がある。それに対して日本は、製品の市場投入が英語圏に比べて1年以上遅くなり、ようやく去年秋に商品が出たばかりである。

 

日本でも、現状の2トップがAmazonとGoogleであるのは間違いない。LINEは、音声アシスタントの完成度の点でまだキャッチアップしきれていない。一方、アメリカと日本で大きく異なるのは、AmazonとGoogleのシェアの差である。アメリカでは圧倒的な強さを誇るAmazonだが、日本では1月末現在でもEchoが「限定的な販売」に留まっていることもあって、シェアを伸ばせていない。一方でGoogleは家電量販店などで積極的な販売を行っており、販売の中心はGoogle Homeになっている。

↑Google Home(左)とAmazon Echo(右)
↑Google Home(左)とAmazon Echo(右)

 

こうした結果、日本でのシェアではGoogleがAmazonを凌駕しており、世界的にも珍しい状況になっている。今後、Amazonが販売を全面解禁した時、シェアがどう推移するかは興味深いところだ。とはいえ、いずれにせよ、日本では海外ほどAmazonとGoogleの間にシェアの差が生まれず、激しい競争を繰り広げることになりそうだ。

 

筆者は、日本における競争のポイントが2つある、と思っている。

 

ひとつはやはり家電連携、特にテレビだ。

 

日本のテレビは特に複雑な商品で、音声アシスタントによって操作が簡便化されるなら、消費者にとってもプラスになる。4Kテレビへの買い換えは進んでおり、その時に音声アシスタント内蔵であることは、魅力のひとつになるはずだ。現状、テレビへの食い込みではGoogleが先行しており、有利な要素のひとつと考えられる。

 

AmazonのAlexaについては、海外から「Alexa対応家電」がもっとたくさん上陸すると、状況が変わってくるのではないか、と感じる。日本での家電連携ではGoogleアシスタントの方が充実している印象だが、世界に目を向けると、非常に多くの種類の家電があり、Googleアシスタントよりも分厚い市場を構成している。そうした「海外からの影響」がどのくらい日本にもやってくるか、という点の評価が、Amazon陣営の日本での評価を大きく分けるのではないだろうか。

 

LINEは現状、こうした争いに入っていくには実力が不足している。しかし、市場はまだ成長期にも入っていない。市場が本格的な成長期に入る前にソフトを進化させることができれば、マスへの訴求力・知名度の点ではかなり優位であり、巻き返しも不可能ではない。といっても、猶予は数か月もないと思われるので、改善は待ったなしだ。

 

そういう風に考えると、海外と日本では市場環境がかなり異なっているのが見えてくる。海外と日本でシェアトップが異なる可能性もあるし、市場を分け合う可能性もある。「日本語」という特殊事情に加え、市場のスタートが1年遅かった、という点が、大きく影響しているわけだ。
消費者としては、ここで「勝ち馬」を見抜かなければいけない状況を強いられるのではなく、「どれを買っても損をしない」のが理想なのだが、なかなかそうはいかない。現状、AmazonとGoogleのどちらを買っても大きく損はしないと思うが、海外ほどシェアトップの行方がはっきりしていない、ということは理解しておいた方がいいだろう。

 

●次回Vol.64-1は「ゲットナビ」4月号(2月24日発売)に掲載予定です。

 

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