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2017/1/31 16:28

新海誠監督が「君の名は。」の裏側を語る! 「なぜ瀧と奥寺先輩のデート場所は六本木ヒルズだったのか?」

1月24日、大ヒット上映中の映画「君の名は。」の新海 誠監督と、スマホで夜空を操るイルミネーション「星にタッチパネル劇場」を手掛けたAR三兄弟 川田十夢氏を招いたトークショーが六本木ヒルズで開催された。これは、昨年11月より六本木ヒルズ展望台 東京シティビューで開催されていたイベント「HUAWEI presents 星空のイルミネーション」の来場者15万人突破を記念して行われたもの。新海監督から「君の名は。」の製作秘話も飛び出したこのトークショーの模様をリポートします!

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はじめに、イベント開催地が六本木ヒルズということもあり、川田氏から「なぜ、映画『君の名は。』の中で瀧と奥寺先輩がデートする場所として、六本木ヒルズが選ばれたのか?」という質問が投げられた。これに対して新海監督は、「“高校生にとって一番ハードルが高いデート場所は?”というところから考えました」と説明。「瀧くんにとって奥寺先輩は憧れの人なんですね。ただ、映画の時間軸のなかで、このデートシーンは瀧の心が少しずつ三葉に傾きつつある場面でもある。そのため、年上の先輩とのデートがうまくいかず、失敗することで、“ひょっとして、自分は三葉のことが……”という彼自身の“気づき”につながっていく展開にしたかったんです。そう考えたとき、高校生にとって少し敷居の高い場所として六本木ヒルズや東京ミッドタウンがいいなと思ったんです」(新海監督)

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↑「映画をご覧になったファンの方たちと直接、この距離感でお話できるのは久々です」と嬉しそうに語っていた新海誠監督

 

続いて川田氏は、今作が新海作品の中でも珍しくハッピーエンドで終わることに関しても言及。すると新海監督は、「(これまでの作品も)変わりたい、変えたいと思って作ってきたんです」との心のうちを吐露した。「最初に『ほしのこえ』(02年)を作り、その後も『秒速5センチメートル』(07年)、『言の葉の庭』(13年)と何作か作ってきましたが、見てくださるお客さんが少しずつ広がってきていると感じつつも、“見える風景は一緒だな”という感覚がありました。つまり、ずっと見続けてくださっている方への感謝の気持ちはありますが、“別のところにも届けたい”という思いもあったんですね。それで、僕のことを知らない多くの方に見てもらえる作品を作ろうという思いから、この『君の名は。』は生み出していきました」(新海監督)

とはいえ、公開前は「それができるかどうか不安だった」とのこと。それでも、確信はないものの、「この作品だったら、僕にこれまでとは何か違う風景を見せてくれるんじゃないかという手ごたえはありました」と当時の心境を語った。

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↑「『君の名は。』を試写で観たとき、日本を代表する映画になると確信した」と話す川田十夢氏

 

また、川田氏は新海監督作品の魅力について、「どの作品にも言えることですが、場面場面を切り取ってみても、それぞれにすごく短い物語があるのがわかる。『君の名は。』はその密度が特にすごくて、続きが知りたくなる」と解説。実はここにも新海監督の緻密な計算があったそうで、「『千と千尋の神隠し』も『アナと雪の女王』も同じで、5分ぐらいの面白いエピソードがたくさんあって、“ここからどうなっていくんだろう?”と常に思わせながら展開していくんですね」と映画作品の構成について説明。特に『君の名は。』に関しては“序・破・急”の完全な三部構成を意識して作っていったそうだ。

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↑新海監督と川田氏は同じ大学の先輩後輩にあたるため、イベント中も息のあったトークを展開していた

 

「映画の中には“ミッドポイント”と呼ばれる話が大きく変化する場面があり、『君の名は。』では瀧が彗星の落ちた後の糸守の荒涼とした光景を見たシーンがそれにあたります。そこを含め、作品全体で観客の感情をどういうふうに変化させていていくかという“物語の流れ”の計算は、グラフにしたりしてものすごく細かく考えていきました。また、細かなエピソードを積み重ねていくうえで、もうひとつ意識したのが視覚的な演出。例えば糸守なら、すごく鮮やかに大自然を表現している場面もあれば、荒涼としたシーンではグッと色のトーンを落としたりして、ライティングや色合いで場面ごとに変化をつけていきました。そうすることで、観客の網膜も刺激する仕掛けを作っていったんです」(新海監督)

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↑イベント『星空のイルミネーション』では六本木ヒルズ展望台にある16面の窓に『君の名は。』の映像を写しだしていた。トークイベントでもその模様を少しだけ再現

 

そして、トークショーの終盤には一般参加者からの質問コーナーも。「どんなときに物語が思いつくのか?」という参加者からの問いに対しては、「実はいま、まさに次回作の企画を出さなければいけないんですが、ずっと迷っていてまだ白紙なんです」と苦笑い。しかしながら、「いまはいろんな小説や映画、それに民俗学の本などをたくさん読んでいて、自分の気持ちとリンクするものやヒントになるものを探してるところですね。あるいは、そういうのをヒントにしなくても、目を瞑ったときに自然と頭に思い浮かんでくるものを探そうとしています。作品をつくるときは、そうやって模索する“とき”というのが必ずあって、『君の名は。』でもありました。その意味では、僕のなかでは物語を考えるうえでの決まったノウハウというのはないんです」と回答していた。

 

さらに気になるその次回作についても、最近読んだというマンガの「千年万年りんごの子」を例に出し、「世の中の摂理からするとどうしても止められないというものがある。そうした物事にたいして、“やっぱり止められない”というのが大人の話だと思うんですが、それを止められる話を書きたいなと考えています。もしかしたら、みんなが観たい物語もそういうものなんじゃないなって思うんです」と少しだけ現段階の構想を紹介。また、最後には「(次回作も)皆さんがご覧になった後に、“こういうのを見たかった”と思ってもらえる作品ができそうだという自信だけはあります。そうした自信を持てるようになったのは、たくさんの方が『君の名は。』を見て、応援してくだっているおかげですので、あらためお礼を申し上げます」と感謝の言葉を述べ、トークショーは終了した。