家電
2017/3/28 18:00

「まったく新しいモノを売る」には何が必要だったのか? ふとんクリーナー市場の先駆者リ・ソンジンが振り返る“成功の分岐点”

レイコップといえばふとんクリーナーの先駆者であり、いまやふとん専用クリーナーの代名詞ともいえる製品です。発売当時は「ふとん専用」といわれてもピンとこなかった人も多かったですが、この数年は国内メーカーもふとん専用クリーナーを開発・発売しているほどの人気ジャンルに発展しました。

 

レイコップ創業者がヒット作の開発から日本進出を振り返る!

そんなレイコップを開発したのが、レイコップ・ジャパン代表取締役社長である李誠晋(リ・ソンジン)氏。李氏はもともと大学病院に勤める内科医で、家電の製品開発はこのレイコップが初めてだったとのこと。なぜ医師から家電開発へ転身したのか、そして成功の秘訣とはなんなのか。新シリーズRXの発売を機に、GetNavi web取材班は韓国へと飛び、直接本人に取材を敢行。その成功のメソッドを聞きました。

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なぜ「ふとん専用」クリーナーだったのか

--2月下旬に新モデルのRXシリーズを発売されましたが、まずはRXシリーズを新たに開発した意図を教えてください。

 

李誠晋氏(以下敬称略):RXは消費者の声を反映し、改良したモデルです。具体的に言えば、加齢臭の脱臭機能「まくらモード」の搭載、寝具に応じて最適な吸引力を保つ「自動モード」、「コードレス化」、この3つですね。ふとんクリーナーは類似品が多く出ていますが、消費者の声を吸い取ることで、常にリードすることができる。この点が当社の強みですね。

↑今年の2月に発売された新製品のRXシリーズ
↑今年の2月に発売された新製品のRXシリーズ

 

--次に、李さん個人の経歴についてうかがっていきます。李さんは内科医というエリート職から家電開発者に転身しましたが、これはかなり思い切った行動だと思います。転身の理由は何だったのですか?

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:私が働いていた大学病院では、子どものアレルギー患者が多く、苦しそうにしているのを救いたいと思ったのがきっかけです。当時は薬で症状を抑える治療法を行っていましたが、子どもにステロイドを使いたくない親も多くいて、私も同様に問題を感じていました。そこで「アレルギーの原因であるアレルゲンそのものを除去するべきでは?」という発想に至ったのです。

 

医者としての私では、助けられる患者の数に限りがあります。ですが、アレルゲンを除去する製品があれば、より多くの人を助けられます。なかでも、アレルゲンの除去が必要だと感じたのがふとん。ふとんは人が人生の1/3を過ごす場所ですが、アレルギーの原因の7割を占める、ダニが好む環境でもあるからです。

 

--その発想に至ってから、すぐにふとんクリーナーの開発を思い立ったのですか?

 

李:いいえ、最初は「ふとんのダニを除去する製品がないか?」と、既存の製品を探しました。良い製品があれば、アレルギーで悩んでいる患者さんに教えてあげられるのではないかと……。そこで、「あらゆる家電が集まる場所はどこか?」と考えたら、「日本の秋葉原だ!」と、秋葉原に調査に行ったこともあります(笑)。ところが意外なことに、ほしい製品はまったく市場にありませんでした。それならば、「自分で作るしかない」と思ったんです。

 

最初は製品を店に並べることさえできなかった

--今まで存在しないジャンルの家電を開発するのには勇気が必要だったと思います。

 

李:アレルギーに苦しむ患者さんと長く接していたので「自分が考えている機能があれば、良さを実感してもらえる」という自信はありました。とはいえ、周囲の人間は皆、口をそろえて「そんな危ない転向はやめておけ」と言いましたね。特に、母親に強く反対されたのは辛かったです。いまではもちろん、認めてくれています。でも、どれだけ周りに反対されても、僕には医者としての使命感があったので、モチベーションは高く持ち続けられました。

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開発には資金が必要でしたが、融資してくれた銀行も、ふとんクリーナーの成功については、そこまで信用していなかったと思いますね。ただ、僕が医者だったので「失敗しても医者に戻れば返済は可能だろう」という理由で融資をしてくれたまでです(笑)。

 

--開発ではどのようなアプローチをしたのですか?

 

李:ダニをいかに効率よく除去するか。これに尽きます。開発では、患者をアレルギーから救おうと、医者をしていたころにダニの生態を研究していたことが生きました。ダニはふとんにしがみつくので、普通に吸引しても3~4割しか取れません。そこで導入したのが「たたき」です。ふとんを叩く機構を採用することで、除去率がアップしました。UVも同様、ダニのDNAを破壊し、効率よく除去する目的で導入したんです。

 

--実際に製品化してからはどうでしたか?

 

李:「レイコップ? ふとんクリーナー? 何だそりゃ。聞いたこともねえな」と、業者にはまったく相手にされませんでした。無名のブランド、しかも、今までにないジャンルの製品ということで、流通に乗せることさえ難しかったんです。

 

そこで、私は何とかして製品を使ってもらおうと考えました。使ってもらえれば、気に入ってもらえるという確信があったんです。目を付けたのは、マンションのロビー。当時、高層マンションのロビーは5000円程度で借りることができたので、そこで販促イベントをやりました。最初はなかなか売れませんでしたが、やがて1台、2台と売れて行き、徐々に口コミで購入してくれる人が増えていきました。最終的には、ソウルと仁川で1000台ほど売り切ることができたんですよ。その後は、テレビショッピングに出すようになり、1時間で2000台売れるほどの大ヒットになりました。

↑開発チームとディスカッションを行う李氏
↑開発チームとディスカッションを行う李氏

 

日本ではまったく新しい製品でも売れる可能性がある

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--その後は日本市場に参入していますね。なぜ日本市場に進出しようと考えたのですか。

 

李:先ほど、秋葉原に製品を探しに行ったとお話ししたことからもわかるように、私が日本が大好きだったという理由もあります(笑)。また、日本はものづくりのレベルが高く、市場は常に革新的な製品であふれています。そのため、厳しい市場である反面、上質で魅力的だと思えば、日本人は新しい製品でも躊躇なく購入してくれる。ですから、消費者のニーズを吸い上げて新製品に反映する……という我が社が得意とするサイクルが作りやすいメリットもありました。また、日本で受け入れられれば、世界で勝負できるという証拠にもなります。ですから、やりがいも大きかったですね。

 

--とはいえ、文化が違うとニーズそのものがない場合も考えられます。その点はいかがですか?

 

李:日本には需要があるとわかっていましたから。それに気づいたのは、羽田空港からモノレールに乗ったとき。窓から見えるマンション群でふとんを干している光景を見て、日本にはふとんをケアする文化があると気づいたんです。さらに、今後は建物の高層化や住民の高齢化により、ふとんが干せなくなる可能性もある。その際も、干すよりキレイになるレイコップは役立つのではないか、という確信を得たんです。

 

--なるほど。モノレールからの景色ひとつで、そこまで見抜かれていたんですね。ちなみに、日本では最初から製品が売れたんですか?

 

李:いいえ。日本でも最初は苦戦しました。ですが、テレビショッピングで積極的にふとんのハウスダストが取れる様子を見せ、ファクトとエビデンスをきちんと伝えるようにしてから風向きが変わりました。「目に見えなくてもベッドは汚い」「ダニの死骸やフンもアレルゲンになる」「ふとんは干すだけではダメ」としっかり伝えることで、販売台数が一気に伸びたんです。

 

ビジネスで成功する秘訣とは?

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--韓国と日本どちらでも大ヒットとなったのは凄いですね。そんな李氏が考える成功の秘訣とは何でしょうか?

 

李:私は自分が成功しているとは思ったことがありませんが……。精神面で大切にしているのは、「仕事に信念を持つこと」ですね。私の場合、情熱のもととなっているのが、「医者として人々の健康と生活の質を上げる」という信念です。これがあったから、周囲の人々に反対されても開発を続けることができました。

 

--精神面以外ではいかがでしょうか?

 

李:問題意識を持ち、観察し、実践し、検証すること。この一連の流れを強く意識することで新しいアイデアを出し、同じ失敗を繰り返さないことが大事ですね。ただ、わが社では、失敗すること自体はとがめていません。ですから、我が社の社員は失敗を恐れず、皆が自分で問題意識をもって仕事に取り組んでいます。

 

--最後に、何かアドバイスがあれば。

 

李:ぜひ、上質な睡眠をとってください。快眠は体内の毒素を排出して良いホルモンを増やしますし、よく寝るだけで体重コントロールもしやすくなるとされています。生活の質を考えた際に、眠りは外せない要素なのです。当社の製品で、みなさんの快適な睡眠をサポートできれば、こんなにうれしいことはありませんね。現在、当社はふとんクリーナー以外の眠りをケアする新製品も開発中。革新的な製品になるはずなので、ぜひ注目してみてください。

 

最後に「ふとんクリーナー以外の新製品を開発している」という爆弾発言で終わった今回のインタビュー、いかがだったでしょうか。インタビューを通し、特に強く感じたのが李氏の発想の豊かさ。マンションでの実演販売に思い至った経緯、モノレールからの景色で日本の需要を感じ取った点などは、常に高い問題意識を持ち、周囲を鋭く観察する姿勢のたまものといえるでしょう。そんな李氏の手によって生み出される製品が、私たちの生活をどう変えてくれるのか、今後も楽しみですね。

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