家電
炊飯器
2017/3/30 18:04

最新炊飯器の「かまどリスペクト」はここまで来た! 新「Wおどり炊き」が「ひとにぎりのわら」再現のために行ったこと

既報のとおり、パナソニックは23日に炊飯器/オーブンレンジのメディア向け新製品セミナーを開催。前回記事では新製品の概要と注目ポイントをお届けしましたが、本記事ではより詳細な機能や開発秘話を中心にレポートします。特に注目は炊飯器に追加された「加圧追い焚き」機能。とどまることを知らない「美味しさ」へのこだわりに迫ります。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑今回発表された「3つ星ビストロ NE-BS1400」(左)と「Wおどり炊き SR-SPX107」

 

 

加圧のために構造と材質をイチから見直し

米は踊らせたほうが美味しい。パナソニックは2013年にIHジャー炊飯器「Wおどり炊き」シリーズを発売して以来、この方針で美味しさを追求してきました。Wおどり炊きとは、2つのIHコイルを高速で切り変えることで外対流と内対流を生み出すことと、1.2気圧の圧力を一気に抜くという2つのアプローチで突沸現象を起こし、大きく米を踊らせるというもの。これにより、米一粒一粒にまんべんなく熱を伝え、米の甘みや旨味を引き出します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑パナソニックが誇る、米を躍らせる“Wおどり炊き”の仕組み

 

さらに、今回発表された「SR-SPX7シリーズ」では新たに「加圧追い焚き」機能が追加。これは、かまどを使った炊飯工程での“ひとにぎりのわら燃やし”による追い炊きを、加圧によって再現する機能で、メーカー発表によれば甘みが約1.7倍、粘りが約9%アップしたとのこと。

 

この新機能を搭載するに当たり、なんとスチーム発生ユニットの構造と材質をイチから見直したそうです。というのも、追い焚き時は220℃IHスチームを釜内に投入しつつ、減圧弁を閉じることで圧力をかける仕組みとなっているのですが、その際、スチームを発生させる水のカートリッジ部分にも高い圧力と熱がかかり、従来モデルの構図のままでは樹脂部品が圧力と熱に耐えられなかったのだとか。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑指で示しているところが今回、構造と材質をイチから見直したという水カートリッジユニット

 

内釜は「あめ色グラデーション塗装」によって上質感のある見た目になったことに加え、高断熱中空セラミック層をプラスすることで断熱性能が約10%向上。熱を米に効率的に伝えることができるようになったため、米の甘みをより引き出せるとのことです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑内釜の断熱性能が上がったことで高温状態をより長く維持することができ、熱効率が向上

 

そのほか、お手入れモードで従来の煮沸に加えて、3回の加圧減圧を繰り返す機能を追加。これにより内釜、内蓋のにおいを大幅に低減できるようになりました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑においの低減は、特に炊き込みご飯や煮込み料理といったごはん以外の調理に使用した際に便利そうです

 

また、「銘柄炊き分けコンシェルジュ」に新たに4銘柄が加わり、対応銘柄が50に拡大したのも本機のポイント。この研究を行っているのが炊飯のスペシャリスト「ライスレディ」です。女性6人からなるチームですが、炊飯器1台を開発するまで消費する米の量は、なんと3トンに及ぶそう。

 

ライスレディはどんな形で開発に関わっているのか、リーダーの加古さおりさんに聞いてみると、次のように語ってくれました。

「ごはんの美味しさを最終的に決めるのは消費者なので、コンピューター技術が発達しても、われわれは最後は人間の舌で判断しています。新しい品種が登場したときは、まず先入観なしで標準コースで炊き、6人で食べてみて特徴を話し合う。そのなかで、甘み、粘り、すっきり感とか、どの特徴を伸ばせばさらに美味しく食べられるか考えながら炊飯プログラムを開発しています」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑会場で「ゆめぴりか」と、いくら醤油漬け、三平汁を試食。ゆめぴりかの強い甘みはいくらの醤油漬けにも負けず、噛みごたえもあって箸が止まりません

 

この後、ほかの銘柄も食べてみましたが、今年のWおどり炊きは総じてごはんのモチモチ感が増しており、銘柄それぞれの香り、食感をよく引き出していると感じました。購入する米を毎回変えて、味の違いを楽しめる、そんな炊飯器となっています。

 

 

カレー粉約40種の分量を変えながら吹きこぼれを検証

続いて、スチームオーブンレンジ「三つ星ビストロ」の新製品、NE-BS1400について見ていきましょう。

 

開発の背景としては、日本人の生活の変化と食に対する意識に着目。女性の就業率は年々増加し、女性25-44歳は就業率70%を超えています。その一方で、「仕事で疲れた日は料理を作りたくない」が85%、「料理に時間をかけられないけど毎日美味しい手料理が食べたい」が92%という調査結果も。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑この調査結果から、作る時間はない、でも手料理は食べたい、と相反する悩みを抱えた消費者が多いことが読み取れます

 

そこでビストロ新モデルでは、最速0.5秒検知が可能になった高精細64眼スピードセンサーを存分に生かした時短料理を提案。それが、「ワンボールパスタ」「ワンボールシチュー」といったワンボールメニューです。これは、材料を耐熱ボウルにどんどん入れて、あとはレンジにおまかせ、というお手軽調理法。一般的にパスタを作る時は、パスタの茹で鍋、ザル、具を炒めるフランパンが必要でしたが「ワンボールパスタ」では耐熱ボウル1つですむので、洗い物が少なくなるという利点もあります。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑従来のセンサーによる1秒検知では吹きこぼれが起きていましたが、新開発のセンサーによる0.5秒検知なら吹きこぼれる手前で火力を調整するので吹きこぼれが起きません

 

ワンボールメニューの開発には意外な苦労があったそう。「ワンボールシチュー」ではカレーも作れるのですが、カレールーはメーカーによって成分が異なるため吹きこぼれしやすさに差があり、シチューに至っては乳製品入っているのでより吹きこぼれやすいという課題がありました。そこで開発チームでは市販のルー約40種類を買ってきてすべて試し、さらに1人前から4人前までルーと具材の量を変えて複数のパターンを何度も実験したそうです。まさに気の遠くなるような作業ですね。

 

製品に関する説明が一通り終わったあと、モデルや女優にも愛好者が多い話題の弁当店「chioben」で有名な料理研究家の山本千織さんが登場し、新ビストロによる調理実演が行われました。

 

まずは、豚ヒレ肉の味噌焼き。パナソニック冷蔵の微凍結パーシャル冷凍機能で漬け込んだ豚ヒレ肉を野菜と一緒にグリル皿に乗せるだけ。時間設定だけで火加減等はビストロ任せ。「肉に厚さがあるだけでなく、今回は味噌もついているので焦がさずに中まで火を通すのが難しいですが、完璧な仕上がり。途中で裏返していないのに裏側も綺麗に焼けていて、美味しそうにできました」と山本さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑下ごしらえした食材を切って並べるだけ。味噌が焦げることなく豚ヒレ肉の味噌焼きが簡単にできます

 

次に「ワンボルールシチュー」でバターチキンカレーを実演。といっても本当に材料を投入するだけ。山本さんも、「入れる順番を考える必要がない。バターは塊のまま、ナッツ類、スパイス、どんどん放り込んでルーも固形のまま。メニューでワンボールシチューを選ぶだけで本当に簡単です。センサーが分量を見てくれるので分量の設定もいらないですし、子どもでも作れます」と高い評価。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑ボウルに楽しそうにバターチキンカレーの材料をどんどん放り込む山本さん

 

なお、ビストロ新モデルは、レンジ・スチーム・ヒーターを最適に組み合わせた「パンあたためコース」を新たに搭載。ここ最近、各社が単機能コンベクションオーブンでパンのあたためが美味しいことをアピールしており、パナソニックとしてもオーブンレンジのフラグシップモデルで同じことができることを訴えたいという狙いがあるのかもしれません。ただ、実食などはなかったので、今後検証したいところです。

 

ここ最近、多少値が張ってもいいから美味しいものを、という世の中の需要が顕著になりつつあるように感じます。それに応えるカタチで調理家電も進化し続けていますが、その開発の裏側には想像以上の努力と苦労があるようです。ただし、本当に価値のある技術こそ簡単に開発できないことも確かです。そんな技術が詰まった「Wおどり炊き」「ビストロ」は、ぜひ実生活で試してみたいものです。