家電
2016/3/18 6:59

シロモノを捨てイロモノに手を出した? シャープの「蚊取空清」は起死回生の一手となるか

まずは蚊の着ぐるみで度肝を抜かれた!

3月17日木曜日、うららかな天気に恵まれたこの日、

我々メディアはざわついていました。

シャープさんから、蚊取り機能を持つ空気清浄機、「蚊取空清」が出るというのです。

 

状況が状況だけに、ヘタなものを出せば、メディアに叩かれてしまうかもしれません。

「どうした? シャープ」

「神頼みならぬ蚊に頼み」

「シロモノを捨てイロモノに手を出した」……

おもしろおかしく書き立てる見出しが目に浮かんできます。

いつもお世話になっているので、シャープさんが心を痛めるような事態にはなって欲しくない……。ハラハラ&ワクワクしながら会場へ。

 

会場入りして、いつもより気合が入っている! と思ったのが、蚊の着ぐるみです。

おお、マスコットキャラがあるんだ! 名前は何だろう? と思ったら、東南アジアでの販促に使用したもので、特にマスコットキャラではないとのこと。

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↑広報さんによると、中には「企画部のエース」が入っているとのことです。こんな扱いをされる「エース」って一体……。気の毒なので、仮に「モスキー太」と呼ぶことにします。ちなみに着ぐるみは中国製

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↑テレビ取材も入っていました。注目度の高さがうかがえます。モスキー太(仮)は「ちょっとよけて」といわれたのか、所在なさげ……

 

 

最大のメリットは薬剤を使用せずに蚊を取ること

コレが世界初(※)の「蚊取空清」、プラズマクラスター空気清浄機蚊取空清 FU-GK50です。

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発売予定は2016年4月23日。実売予想価格は5万4000円前後(税込)です。

※空気清浄機として。UVライト・黒色蚊取りパネル・粘着式蚊取りシートを利用した構造による(2015年9月、同社アセアン地域向け機種FP-FM40に発搭載)

 

 

その仕組みは、簡単にいえば、蚊が好きな光が出る穴に蚊を誘い、気流で吸い込んで粘着シートで捕獲する仕組み。蚊は360nmという特定の波長の紫外線に近寄るほか、黒色など蚊自身が目立たない色を好み、暗く狭い場所に隠れる習性を持っているといわれています。この習性を利用し、UVライトを搭載&本体色にブラックを採用し、複数の小窓を施すなど工夫を凝らしているとのこと。

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↑筐体の左右背後に見えるのが小窓です。内部からの青い光で蚊を誘導します

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↑真横からの小窓

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↑背面です。毛針が小窓に吸い込まれていきます

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↑背面を開けた様子。フタを外した内側に見える四角いシートが蚊取りシートです

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↑吸引した蚊を吸着する蚊取りシートは、1512円前後(税込み)。交換の目安は2か月です。使用後のシートは2つに折り畳んで捨てることができます

 

[nextpage title=”空気清浄機としての性能はいかに?”]

本機の蚊取りシステム最大のメリットは、薬剤を使用しないこと。

いくら人体への影響が少ないとはいえ、殺虫スプレーや蚊取りリキッドはニオイも気になるし、安全面を考えると、食事中には絶対に使いたくないですよね。その点、本機は赤ちゃんやペットのいる部屋でも、食事中でも安心して使えるわけです。

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↑蚊に関するアンケート結果。薬剤は効果が薄い割に、ニオイが気になり、人体への悪影響も心配される、との声が

 

 

“本場”で結果を出し日本へ逆輸入される

 

実は本機の発売は、日本が初めてではありません。マレーシア、インドネシア、タイなどのASEAN(東南アジア諸国連合)諸国で先行発売されたものを、フィルターや粘着シートを日本仕様に調整して出したモデルです。開発のアイデア出し&実際の商品開発は日本が担当し、実証テストはマレーシア保健省医療研究所で行われました。

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↑テスト回数は実に67回。テストに使用した蚊の数は1万391匹に及んだといいます

 

構想6年、開発期間2年を経て製品は完成。構想がやけに長い(小説か!)のが気になりますが、先行発売された「蚊取空清」は、強気の販売台数で発売したにも関わらず、その倍は売れたとのこと(台数は非公開)。

 

以下、製品を使ったユーザーの声です。

「おばあちゃんの家で蚊取空気清浄機を使用後、蚊が激減。

お孫さんがよく遊びに来るようになりました」。

 

「おばあちゃんの家」は、30分で20~30か所も蚊に刺され、殺虫スプレーを2日で使いきるという凄まじいお宅で、お孫さんもこの家に行くのをイヤがっていたそうです。そこはもう引っ越そうよ……というレベルですが、事情がおありだったのでしょう。蚊取空気清浄機を使ったところ、明らかに蚊が激減し、お孫さんも頻繁に遊びに来てくれるようになったそうです。めでたし、めでたし。

 

実際、東南アジアご担当のオイさんにお話を聞くと、現地は日本と違って熱帯なので、常に蚊に悩まされているとのこと。特に雨季ともなると大量に発生し、病気の媒介にもなるので、とにかく厄介な存在らしいのです。

必然的に蚊の研究も進みます。本機も、現地の昆虫学者のアドバイスを取り入れ、製品に反映させているとのこと。蚊の誘導システムの完成度が高いのも、蚊の先進国で育ったという背景が影響しているのでしょう。

 

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↑主に東南アジアのニーズを調査しているというオイさん

 

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↑粘着シートにびっしりと貼り付いた蚊の画像。現地では、3週間で100匹以上取れたこともあるとか

 

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↑なんでも、マレーシアのお宅では、テレビ鑑賞の際にもラケットが必要とのことこのラケットは、蚊取り専用ラケットで、スイッチを押すと電流が流れる仕様。テレビを見ている最中でも常に蚊が攻めてくるため、かなりの頻度でコイツを振らなければならないんだそうです。

 

 

日本で製品化されるにあたっては、日本にいる蚊でもあらためて実験が行われました。実験が行われたのは一般財団法人の日本環境衛生センター。テストは1回あたり22時間の時間をかけて約200匹の蚊を使って行われ、合計9回にわたって実施されました。その際は、蚊が隠れる場所が本機のみ、という状況を避け、公平な結果が出るよう、似たようなダミーボックスを設置したといいます。また、蚊が弱ることなく、いつもと同じパフォーマンスを発揮できるよう、砂糖水を設置したそうです。結果として、捕獲率最大約98%という好結果を残しました。

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↑日本に多い蚊での捕獲試験の結果。捕獲率はアカイエカ約95%、チカイエカ約98%、ヒトスジシマカ約88%と素晴らしい結果に

 

気になるのは、ほかの虫が捕獲できるのかという点ですが、小バエなどにはある程度効果があったとのこと。ただ、実証試験は行っておらず、小バエが取れるとは言い切れないそうです。もしハエが捕れるならそれも大きなメリットなので、早急な実証実験が望まれます。

 

 

3つのフィルターを搭載し基本性能もバッチリ

さて、空気清浄機としての基本性能はどうでしょうか?「静電HEPAフィルター」に加え、「脱臭フィルター」「プレフィルター」の3つのフィルターで、しっかり集じん・脱臭します。また、「スピード循環気流」が静電気を除去して微小な粒子が壁などに付着するのを防ぎつつ、遠くのホコリも引き寄せます。

 

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↑3つのフィルターを搭載。プレフィルターで大きなホコリを取り、真ん中の脱臭フィルターでタバコ臭、ペット臭などを除去します。最後のフィルターでは0.3μmの微小な粒子を99.97%以上集じん

 

また、「花粉運転」と「おやすみ運転」も装備。花粉が気になる季節には、ホコリセンサーの感度を高めて強めの風量で自動運転します。睡眠時に便利な「おやすみ運転」は、前面のモニターを消灯して眩しさを抑え、蚊を取りながら静音運転を行います (運転音は18~24dB) 。夜、蚊の羽音で飛び起きることもないわけです。これはうれしいですね。

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↑風量調節のボタンで「おやすみ」が選択可能。右側には「花粉」ボタンがあります。パネル下の青い光は、プラズマクラスター動作中の証。右側の緑の光は「きれいモニター」です

 

もちろん、シャープお家芸のイオン放出機能「プラズマクラスター」も搭載しています。浮遊ウイルスやアレル物質の作用を抑制し、カビ菌を除菌するうえ、フィルターだけでは対応できないタバコの付着臭をバッチリ消臭してくれます。

 

ニオイや空気の汚れといった日常の悩みをはじめ、春の花粉、夏の蚊といった季節のお悩みも解決してくれる――。極めて有用なアイテムであり、ただのイロモノではないことはわかりました。あとは日本で実際に使用した人がどう感じるか。それ次第では、シャープ復活のフラッグシップとなる可能性も。今後が楽しみなモデルが登場しました。