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インテリア
2017/10/15 13:00

工芸品のような一生モノの椅子が一堂に! 注目の職人集団「KOMA」がこだわる上質な無垢の家具づくり

数々のアワードを受賞し、技術力、デザイン性ともに高い評価を受ける家具ブランド「KOMA」。その製品デザインすべてを担い、家具職人集団でもあるKOMAの代表でありKOMAのアイデンティティそのものといえる存在が、松岡茂樹さんです。「上質な無垢の家具にこだわる理由を取材したい」とリクエストすると招かれたのは、松岡さん自らが手がけたテーブルと椅子が並んだ「KOMA shop」でした。

荻窪にある直営店「KOMA shop」。ゆったりとした空間の中で、KOMAの職人たちが手がける無垢の椅子やテーブル、フルオーダーメイドの壁面シェルフなど、多くの製品が見られます
荻窪にある直営店「KOMA shop」。ゆったりとした空間の中で、KOMAの職人たちが手がける無垢の椅子やテーブル、フルオーダーメイドの壁面シェルフなど、多くの製品が見られます

 

家具職人の手業と誇りが詰まった場所

「お客さんは全国から、そしていまでは海外からも来てくれるようになりました。お客さんのことを考えると、もっと都心にあったほうがいいだろうなとも思いますが、一方でわざわざ来てもらえる店でありたいとも思っているんです。通りがかりじゃなくて『行ってみようか』って思ってもらえるようになったら、それは本物だなと思ったので、これはひとつのチャレンジでもありますね。ここまでわざわざ来てくれた人がガッカリしないような、いい家具を作り続けたいんです」と松岡さん。家具職人としての矜持を、この場所に松岡さんは込めていることがわかります。

 

KOMA shopに足を踏み入れた時に感じる独特な空気感の秘密も、元々“工房をベースとしている”というKOMAのアイデンティティを大切にしたかったからだそう。天井を高くし、ファクトリーのような雰囲気を表現しています。

このベンチシートのコンセプトは「夫婦が一緒に座れる椅子」。その2017年度バージョン。従来のモデルよりもサイズが大きくなり、よりゆったりと座ることができます。限定5脚。W1700×D700×H770×SH400mm「tie chair 2017」110万1600円(税込)
このベンチシートのコンセプトは「夫婦が一緒に座れる椅子」。その2017年度バージョン。従来のモデルよりもサイズが大きくなり、よりゆったりと座ることができます。限定5脚。W1700×D700×H770×SH400mm「tie chair 2017」110万1600円(税込)

 

腕利きの職人が削り出す複雑で美しい三次曲線が魅力

KOMAの製作の場は、東京郊外の武蔵村山市にあります。職人たちが仕事に励む1階の工房の上に事務所を設け、そこで松岡さんがデザインを手がけています。

 

必要な機能をすべて満たし、かつ美しさを追求する。そして1㎜でも1gでもそぎ落としていく。それがKOMAのデザインのありかた。そのために、スケッチ画の段階から線の1本1本にまで理想を追求し、納得のいくクリエイションが得られれば、1階の工房へと降り立ってすぐさま試作に取り掛かります。クリエイションは、頭の中だけで完結するのではなく、手を動かしながら完成させていくのだそう。

 

すぐに作れる環境があるから、どういう道具を使えばいいのか、どのような作業工程を経れば実現できるのかがわかるのだと、松岡さんはいいます。

 

「ウチの工房は、繰り返しでしか身に付けることのできない経験と新しい創造に挑戦できるので、ものづくりには理想的で幸せな環境だと思っています。物って、作ってみないとわからない。だから、発想から完成までの製造工程のすべてを手がけて、挑戦と経験をものすごく早く回転させることでしか、理解できないことがあるんです」と、デザインと製作の場を分けない理由を教えてくれました。

クラフトデザイナー松岡茂樹さんが実際に描いた「cocoda chair 2017」のスケッチ画。改良が加えられた背もたれ部分を中心に、緻密で繊細な線で描かれています
クラフトデザイナー松岡茂樹さんが実際に描いた「cocoda chair 2017」のスケッチ画。改良が加えられた背もたれ部分を中心に、緻密で繊細な線で描かれています

 

先ほどのスケッチから製品になった、KOMA最高ランクのパーソナルチェア。背もたれからアームにかけてのなめらかな曲線とエッジのきいたラインが非常に美しく仕上がっています。材はウォールナット、チェリー。W700×D515×H750×SH425mm「cocoda chair 2017」37万8000円(税込)
先ほどのスケッチから製品になった、KOMA最高ランクのパーソナルチェア。背もたれからアームにかけてのなめらかな曲線とエッジのきいたラインが非常に美しく仕上がっています。材はウォールナット、チェリー。W700×D515×H750×SH425mm「cocoda chair 2017」37万8000円(税込)

 

KOMAは、上質な無垢材や天然木を使用し、機能的で美しい家具作りにこだわっています。

 

「プラスチックなどの素材は時間とともに劣化していきますが、木材の家具は逆に“優化”していくんです。つやが出たり、傷も味わいに感じられたりと、経年“優化”していく。傷のリペアだってできるのは、無垢材だからです。普通の家具は仕上げの段階でウレタンコートをしますが、そうすると木ではなくウレタンを触っていることになります。サランラップをしているようなものです。

 

KOMAのテーブルは下地材を木に一度染み込ませてから研ぎ出して、その上からオイルとワックスをかけています。そうすることで一度木材の導管を埋めているので、水分が染み込みにくくなり、コップを置いても輪ジミなどがつきにくく、気持ちよく使い続けることができるのです」(松岡さん)

繊細なラインとなめらかな手触り、体のフィット感は熟練工による手作業ならでは。一点物のような雰囲気を持つ、KOMA初めての100脚ロットの量産モデル。使用する材はウォールナット、チェリー、ホワイトオーク、クリ。(左)「Sim Chair」7万4520円(税込)W455×D460×H735×SH420mm、(右)「Sim Arm Chair」8万5320円(税込)W580×D455×H740×SH420mm
繊細なラインとなめらかな手触り、体のフィット感は熟練工による手作業ならでは。一点物のような雰囲気を持つ、KOMA初めての100脚ロットの量産モデル。使用する材はウォールナット、チェリー、ホワイトオーク、クリ。(左)「Sim Chair」7万4520円(税込)W455×D460×H735×SH420mm、(右)「Sim Arm Chair」8万5320円(税込)W580×D455×H740×SH420mm

 

性能がいいから愛着がわく。そういう手間暇を、KOMAの職人は惜しみません。

 

「手間はかかるけれど、手触りと使い勝手がよくなるからです。例えば、椅子なら実際に座ってみて、座り心地や使い勝手がいいということが一番大事。触ったら感触が気持ちいいというのも“性能”です。職人が高い技術力を駆使して手をかければかけるほど、そうした性能は良くなります。人の身体って丸みを帯びているでしょ。それに椅子にどう座るかも、人それぞれ。しかも時間の経過にしたがって、椅子の上で動きます。そうすると、支える場所も違ってきますよね。

 

そういうことを満たしたいと思うから、KOMAの椅子はものすごく複雑な三次曲面になるんです。だから、腕利きの職人がカンナを駆使して無垢の木から削り出すしかないんですよ。KOMAが上質な無垢の家具にこだわる理由がそこにあります。機械加工ではできないことばかりですね」(松岡さん)

 

理想を追い求めて製作された工芸品のような1点物

KOMAの家具は、世代を超えて愛される機能と美しさをもっており、人生に寄り添うかのように使い続けてもらいたいという、作り手の願いが込められています。ただし、そういう気持ちだけのために“手をかけている”わけではないようです。

 

「人の手業でしか到達できない、美しさや心地よさがあると信じています。一方で、職人の削りの技術がものすごく高くないとできないということは、その育成がものすごく難しいということでもあります。だから、なかなか数は作れません。

 

KOMAの家具は、作品と呼べるほど、職人の手業が入っている。その限りなく工芸作品に近いものを、あえて製品としてラインアップしているんです。少ロットではあっても、職人の熱意、集中力、加工性など、1点もののクオリティを保てる限界の数を、製品として作る。それがコンセプト。

 

また、今自分たちができる最高の家具を作り続けたい、さらに作り手として成長を続けたいという思いから、一部の定番品を除いて、一度一定数を作ったものは2度と作りません。職人も一つ一つの製品に思いを込めて製作しています。だからKOMAでは、製作した職人のサインと製造年月日、ロットナンバーを家具の裏に貼って、お客さんにお渡ししているんです」

KOMAのロングセラーであるダイニングチェアの2017年度バージョン。繊細な曲線とやわらかな丸みが特徴。限定15脚。材はウォールナット、チェリー、ミズメザクラ。W570×D490×H750×SH430「sui arm chair 2017」16万2000円(税込)
KOMAのロングセラーであるダイニングチェアの2017年度バージョン。繊細な曲線とやわらかな丸みが特徴。限定15脚。材はウォールナット、チェリー、ミズメザクラ。W570×D490×H750×SH430「sui arm chair 2017」16万2000円(税込)

 

家具職人という仕事を誰よりも愛し、矜持を胸に日々仕事に勤しんでいる松岡さん。若い職人たちに自ら指導する際の言葉にも、独特の“深み”があります。

 

「ウチの若い職人たちには常に、自分の思うように時間を過ごせているか、考えるように言っています。時間を切り売りするような働き方はつまらない。好きなことを突き詰めて、もっと自由にやるようにと。

 

そのかわり、自由にやるためには責任が伴います。お客さんに対して、家族に対して、まわりにいてくれる人に対して。やらなければいけないことは日々変わります。それをまっとうすれば、自由でいられるんです」

2000g以下と超軽量でありながら、快適さと高い耐久性を実現した椅子。高機能でありながら1㎜でも1gでも無駄をなくす日本の美意識“削ぎ落としの美”を追求したという。座面は杉、 フレームはウォールナットかホワイトオーク、イタヤカエデは限定5脚。W400×D390×H730×SH420mm「2000gの椅子」16万2000円(税込)
2000g以下と超軽量でありながら、快適さと高い耐久性を実現した椅子。高機能でありながら1㎜でも1gでも無駄をなくす日本の美意識“削ぎ落としの美”を追求したという。座面は杉、 フレームはウォールナットかホワイトオーク、イタヤカエデは限定5脚。W400×D390×H730×SH420mm「2000gの椅子」16万2000円(税込)

 

削ぎ落した先のシンプル。機能の追求に美しさが宿る

クリエイターとしての国内外での評価はすでに高く、クラフトマンとしても独自の分野を確立しつつあるように見える松岡さん。ところが、さらに「少しずつでも理想に近づいていきたい」という熱が伝わってきます。

 

「でき上がって1週間くらいは満足なんだけど、その後は『これじゃないんだよなぁ』となる。もっとこうすればよかった、こういう行程を踏めばよかったと反省点が湧いてくるんです。ものづくりに100点はないし、もっと上に行きたいから、すぐに改善したくなるんです」

 

この熱こそが、線・削り・磨きを極めさせ、製品を形作らせるのでしょう。「なるべくして生まれるカタチを表現し続けたい」と、松岡さんはいいます。「椅子は規制の多い道具。だから改善のし甲斐があります。改善点があるなら、そのままにしておきたくないんです」

 

最後に「これ以上ない、理想の椅子とは?」と聞くと、

 

「シンプルな椅子です。椅子として求められるすべてがあって、その上でいらないものを削ぎ落としていったシンプルさ。発想の原点は自然界の造形にあります。自然界のものは生きていくために必要なものしかない。それが用の美。そういう美しさを、KOMAの家具ではいつも追求しています」と答えてくれました。

 

KOMAの家具は日々進化しています。常に作り手としても成長を続けていることこそが、KOMAの魅力なのではないでしょうか。

 

Profile

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KOMA 代表取締役 / 松岡茂樹

家具・クラフトデザイナー、家具職人。1977年、東京都生まれ。2000年に東洋美術学校卒業後、日田工芸株式会社(木製家具製造会社)へ入社し家具職人としての修業を始める。家具コンペティションでの入選などを経て社内新ブランドを立ち上げた。新宿伊勢丹、日本橋三越などで数々の作品を発表。2007年に株式会社KOMA設立。

 

Shop DATA

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KOMA shop

住所:東京都杉並区上荻1-24-10 1F

電話番号:03-6383-5585

営業時間:10:00~17:00

定休日:水・木曜

 

取材・文=n.プロジェクト 撮影=三木匡宏

 

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http://at-living.press