乗り物
2016/11/12 19:00

日本最長&最古といわれる高知の「とさでん交通」ーー外国電車や十字クロスなど見所の多さも日本随一!

全国を走る路面電車の旅 第15回 とさでん交通

 

南国らしい陽光が降り注ぐ高知市の街を中心に走るのが、とさでん交通。この電車には、3つの日本一の誇りがある。

 

1つは1904(明治37)年に開業し、現在も走る路面電車の中で日本一の歴史を持つこと(※)。2つ目は25.3キロと軌道路線の全長が日本一であること。そして3つ目は、清和学園前~一条橋間が63メートルと電停間の距離として最も短いことだ。そんな誇り高き、高知市の「とさでん交通」路面電車の旅を楽しんでみたい。

※)伊予鉄道市内電車の路線が1895年の開業と古いが、現在と経営母体や路線が異なり、軽便鉄道だったため日本一古い路面電車とはしにくい。また、広島電鉄が全区間の距離を合わせると一番だが、軌道線のみに限ると、とさでん交通の方が長い。

 

↑はりまや橋電停に停車する600形。はりまや橋は、とさでん交通の路線が走る重要な電停だ
↑はりまや橋電停に停車する600形。はりまや橋は、とさでん交通の路線が走る重要な電停だ

 

【歴史】生まれて110余年! 最長寿の路面電車の路線

とさでん交通の路線は次のとおり。高知市内の「はりまや橋」を中心に、西のいの町「伊野」を結ぶ伊野線、東の南国(なんこく)市「後免町(ごめんまち)」を結ぶ後免線、北の高知駅前までの駅前線、南の桟橋通五丁目を結ぶ桟橋線の4路線がある。つまり、すべての路線が、はりまや橋が路線の起終点になっているのだ。

 

はりまや橋といえば、「♪土佐の高知の はりまや橋で 坊さんかんざし~」と民謡『よさこい節』にも唄われるぐらいに、高知市内を代表する観光名所となっている。名所であるとともに高知市の中心、さらに、とさでん交通にとっては最も重要な電停でもある。

↑現在は1車両のみの超低床電車の100形。とさでん交通の電車では希少な存在となっている
↑現在は1車両のみの超低床電車の100形。とさでん交通の電車では希少な存在となっている

 

高知を走る路面電車の歴史は古い。1904(明治37)年に堀詰~乗出(現在のグランド通)間、海ノ辻~桟橋(現在の桟橋車庫前)間の路線が開業したことに始まる。当初の会社は土佐電氣鐵道(初代の会社名)。その後、会社は土佐電氣となり、後免線を開業させる。

 

戦前、鉄道線を持つ高知鉄道と土佐電氣の軌道部門が合併、土佐交通となる。さらに戦後に、土佐電氣鐵道と名前を変更。この土佐電氣鐵道をはじめとした県内3事業者が経営統合し、2014年に社名をとさでん交通とした。

↑高知市内の併用軌道区間を走る800形。山口県下関市を走った元山陽電気軌道の車両だ
↑高知市内の併用軌道区間を走る800形。山口県下関市を走った、元山陽電気軌道の車両だ

 

【車両】週末に走る外国電車が沿線を華やかに彩る

ふだん走る電車は8つの形式。超低床電車100形、そして車両数が多いのが200形と600形だ。ほかに元山陽電気軌道、名鉄美濃町線などからやってきた電車が街中を走る。さらに楽しみなのが海外からやってきた路面電車だ。

↑198号車は元ノルウェーのオスロ市電。クラシックなスタイルが魅力だ
↑198号車は元ノルウェーのオスロ市電。クラシックなスタイルが魅力だ

 

海外からやってきた外国電車は、2012年11月から土日を中心に走り、一躍人気に。外国電車はノルウェー・オスロ市電、オーストリア・グラーツ市電、ポルトガル市電の3車両だ(現在は貸切やイベントなどでの運行のみとなっている)。

 

オーストリアのグラーツといえば、中世の面影を残す街のメインストリートを路面電車が堂々と走る街。現地では新型車に置き換えられ、昔の車両はほとんど見かけない。そんなクラシックな電車が高知でよみがえって走る。なんとも不思議な光景だ。

↑細身の車体がお洒落な320号車は、元オーストリア・グラーツ市電
↑細身の車体がお洒落な320号車は、元オーストリア・グラーツ市電

 

【沿線風景】はりまや橋のダイヤモンド・クロッシングに注目したい

高知駅前から桟橋行の電車に乗り込む。早速、はりまや橋で見どころがある。はりまや橋の交差点はどの方向にでも自由に行き来ができ、かつ、互いの線路を十字にクロスする「ダイヤモンド・クロッシング」があるのだ。当然ながら鉄道ファンの注目度も高い。

↑はりまや橋交差点にあるダイヤモンド・クロッシング。上空から見るとこのような光景になる
↑はりまや橋交差点にあるダイヤモンド・クロッシング。上空から見るとこのような光景になる

 

はりまや橋を通ってまっすぐ進むと終点・桟橋通五丁目に着く。降りた途端、岸壁越しに高知港が広がり、南国のまぶしい陽ざしを浴びた。折り返して桟橋車庫前へ寄ると、そこにはとさでん交通の本社と車庫がある。一堂に会した電車たちが次々と発車する様子は壮観そのものだ。

 

はりまや橋へいったん戻り、ここから伊野線を西へ向かえば伊野へ。後免線を東へ行けば後免町へ行くことができる。路線で注目したいのは伊野線のタブレット交換だ。現在、タブレット交換を行う路線はかなり希少だが、朝倉電停と八代行違い停留場では、タブレットがまだまだ活躍している。電車と電車がすれ違うときにいったん停車し“駅員を介さずに運転士同士が渡す”という、めずらしい方式だ。

 

最後は、路面電車で高知駅前へ。電停はJR高知駅すぐ目の前で乗り換えにも便利だ。2線行き止まり方式の電停は、引っ切りなしに電車が入ってきて見ているだけでも楽しい。

↑高知駅前電停の朝の風景。市内の学校へ通学する学生たちで賑わう
↑高知駅前電停の朝の風景。市内の学校へ通学する学生たちで賑わう

 

ほか、高知駅前で目にしておきたいのが明治維新の志士たちの像(大きいのでかなり目立つ)。坂本龍馬と武市半平太、中岡慎太郎の像が立つ。なかなか威風堂々、街を見下ろすように立つ。

 

南国・高知生まれの人たちらしい、明るさと大らかさで世の中を変えていったこの3人。もし、彼らが生きていて、街を走る路面電車を見たら、どのように感じただろうか。

↑高知で生まれた維新の英雄の像がJR高知駅前に立つ。右から中岡慎太郎、坂本龍馬、武市半平太
↑高知で生まれた維新の英雄の像がJR高知駅前に立つ。右から中岡慎太郎、坂本龍馬、武市半平太

 

【DATA】

路線名:伊野線(はりまや橋~伊野)、後免線(はりまや橋~後免町)、駅前線(はりまや橋~高知駅前)、桟橋線(はりまや橋~桟橋通五丁目)

運行事業体:とさでん交通

営業距離:25.3km

軌間:1067mm

料金:120~460円(高知市内は均一で200円)

開業年:1904(明治37)年

※堀詰~乗出(現・グランド通)、梅ノ辻~桟橋(現・桟橋車庫前)間が開業)
※外国電車に関しての問合わせは「とさでん交通電車輸送課」へ

 

写真協力/とさでん交通