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2020/8/17 6:15

マクドナルドの一人勝ちを阻止! 「フィリピンNo.1ファストフード店」はいかにグローバル競争で勝ち続けているのか?

ファストフードといえば、120を超える国や地域で展開するマクドナルドが名実ともにトップと思われていますが、実はフィリピンにその一人勝ちを阻止しているファストフード店があります。それが地元発として知られる「ジョリビー」。フィリピンでは同社がマクドナルドの2倍の売上高を誇り、No.1ファストフード店に輝いています。ジョリビーがなぜマクドナルドに勝てるのか、その秘密に迫ります。

↑フィリピン国内で1000店舗以上を展開するジョリビー(画像出典: ジョリビー公式サイト)

 

かわいいミツバチのキャラクターをロゴマークに掲げるジョリビーは、もともと町の小さなアイスクリーム店として1979年に創業。現在ではフィリピン国内に1150店舗を展開するまでに成長しました。公式サイトによると、同社はフィリピンのファストフード業界で50%以上のシェアを獲得し、アジアを中心に海外進出も積極的に展開する一方、アメリカにも31の店舗を構えています。人気メニューはハンバーガーやチキン、スパゲッティなどで、お昼の時間ともなれば店の外まで大行列ができる人気ぶり。フィリピン人はジョリビーが大好きなのです。

 

フィリピン人に愛されるジョリビーですが、いまから約40年前にその存在を脅かす存在が現れました。世界のファストフード王者マクドナルドがフィリピンに進出することになったのです。フィリピンNo.1ファストフード店として負けられないと考えたジョリビーはアメリカまで調査に行き、どうすれば勝てるかを徹底調査しました。

 

ジョリビーの社員は、マクドナルドの料理を食べたとき、あることに気づいたといいます。マクドナルドの味はアメリカ人には適しているけれども、フィリピン人には合わないかもしれないと。フィリピン人はアメリカ人と比べると、より甘く、より辛く、より塩味の効いた料理を好みます。そこで、ジョリビーはフィリピン人の味覚に徹底的にこだわったフードを提供するという戦略を採ったのでした。

↑ソースが甘めのジョリビーのスパゲッティ

 

甘めのバナナケチャップがかかったスパゲッティやスパイシーなチキン、塩味の効いたフライドポテトなど、ジョリビーはフィリピン人に愛される料理を作り続けました。その結果、マクドナルドも当初は自社特有の味で勝負しましたが、それではジョリビーに勝てないことを認識。最終的にはマクドナルドがジョリビーの味をまねたり、ライスメニューを導入したりという展開に至りました。

 

現在でもジョリビーとマクドナルドの勝負は続いていますが、ジョリビーの圧勝という図式は崩れていません。地元メディアなどの報道によると、2017年のフィリピン国内における収益額は、マクドナルドが8.4億ドルだった一方、ジョリビーはその約2倍の16億ドル。また、2019年におけるフィリピン国内店舗数についても、マクドナルドが640店舗に対して、ジョリビーは上述したように1150店舗と、ここでも約2倍の差がついています。しかしながら、2019年のフィリピン国内のマクドナルドの売り上げは2018年より15%アップと好調で、ジョリビーもうかうかしていられません。

↑チキンやライスなどが一緒になったジョリビーの人気セット

 

No.1であり続けるために

もちろん、ジョリビーがフィリピンNo.1ファストフード店であり続けている理由は味付けだけではありません。ほかにも2つの特徴があります:

 

1. マクドナルドよりも少し安い価格設定

ジョリビーのフードは、マクドナルドの価格よりもわずかに安く設定されています。例えば、フィリピンで人気のスパゲティ+ドリンクのセットであれば、ジョリビーが59ペソ(約127円)なのに対し、マクドナルドは80ペソ。チキン+ライス+ドリンクのセットの場合、ジョリビーが90ペソなのに対し、マクドナルドでは110ペソです。お客さんにとってジョリビーはおいしいだけでなく、経済的でもあるのです。

 

2. 子どもを楽しませる工夫

↑子どもたちにも大人気のジョリビー(画像出典: ジョリビー公式サイト)

 

ジョリビーは子どもに焦点を当てたマーケティング戦略を展開しているのも特徴。たくさんの子どもたちはジョリビーが大好きで、喜んでお店に行っています。

↑ジョリビーにも会えるかも(画像出典: ジョリビー公式サイト)

 

マクドナルドでも子ども向けのサービスが多くなされていますが、ジョリビーのそれはマクドナルドのレベルを超えているかもしれません。店内にはポップな装飾が施され、ジョリビーの絵が至るところに描かれています。にぎやかな音楽が流れていておもちゃ付きメニューも豊富で、運がよければ着ぐるみのジョリビーにも会えます 。

 

本質は、自国のユーザーを徹底的に分析すること

本稿では、フィリピンのNo.1ファストフード店であるジョリビーのさまざまな取り組みを紹介しました。マクドナルドに負けないためにジョリビーが最終的に行き着いたのは、メインターゲットであるフィリピン人好みの料理を提供し続けることでした。一見、素朴に思えるこの戦略ですが、それを続けることはそう簡単ではありません。フィリピン人がジョリビーを愛するのは、ジョリビーがフィリピン人を愛しているからにほかならないと思います。

 

ジョリビーは2020年、海外に300~350の店舗を設ける計画を立てています。もしかしたら近い将来、あなたの町にも、赤いミツバチ「ジョリビー」が現れるかもしれませんね。