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2017/11/6 20:00

「ミラーレス一眼」10年史――初号機~最新モデルに見る、ミラーレス一眼の「これまで」と「これから」

ミラーボックスを省くことで小型軽量化を図ったミラーレス一眼の第1号機の発売からまもなく10年目を迎える。現在は国内外合わせて10社以上がミラーレス一眼を発売。CIPAの統計によると、レンズ交換式カメラ市場のなかでの一眼レフとミラーレスの割合は、年々ミラーレスが高くなっており、2016年には総出荷金額ベースで約29%に達している。まずは、そんなミラーレス一眼の歴史を誕生から振り返ったうえで、これからミラーレス一眼が向かう方向を占ってみよう。

↑CIPAが発表したレンズ交換式デジタルカメラの年間出荷金額をグラフ化したもの。全体の金額は年々縮小しているが、ミラーレスの比率は徐々に高まっている
↑CIPAが発表したレンズ交換式デジタルカメラの年間出荷金額をグラフ化したもの。全体の金額は年々縮小しているが、ミラーレスの比率は徐々に高まっている

 

↑ソニー α7 RII。2015年8月の登場以来人気を集める有効約4240万画素機。最近はこうした高画素モデルだけでなく、高速連写や高感度など、一眼レフをも凌駕するミラーレス一眼の人気が高まっている
↑ソニー α7 RII。2015年8月の登場以来人気を集める有効約4240万画素機。最近はこうした高画素モデルだけでなく、高速連写や高感度など、一眼レフをも凌駕するミラーレス一眼の人気が高まっている

 

【~2008年/ミラーレス前夜】一眼レフでのライブビュー撮影が可能に

1990年代~2000年代前半のデジタル一眼レフは、フィルムカメラと同じように光学ファンダーを覗いて撮ることしかできなかった。そんななか、2004年にフルタイムライブビューを可能にした初の一眼レフ、オリンパスE-330が発売。以後、一眼レフでのライブビューが一般化した。

↑オリンパス E-330の透視図。撮像センサーのほか、光学ファインダーの光路にライブビュー専用のセンサーを組み込むことで撮影タイムラグの少ない撮影を可能にしていた。また、レンズからの光を横に反射させることでボディの高さを抑えたユニークなカメラでもあった
↑オリンパス E-330の透視図。撮像センサーのほか、光学ファインダーの光路にライブビュー専用のセンサーを組み込むことで撮影タイムラグの少ない撮影を可能にしていた。また、レンズからの光を横に反射させることでボディの高さを抑えたユニークなカメラでもあった

 

【2008年】マイクロフォーサーズがミラーレス第1号

ミラーレス一眼は、イメージセンサーが常に動作する、ライブビュー状態で使うことが前提であり、そのためには発熱や消費電力を小さく抑える必要があった。それを可能にする低消費電力センサーが開発されたことで、2008年にパナソニックから世界初のミラーレス一眼、ルミックスG1が登場。翌年にはオリンパスからもミラーレス一眼のE-P1が発売された。

↑パナソニック ルミックスG1。世界初のミラーレスカメラ。一眼レフを思わせるデザインながら、既存の一眼レフよりも一回り以上のコンパクト化を実現
↑パナソニック ルミックスG1。世界初のミラーレスカメラ。一眼レフを思わせるデザインながら、既存の一眼レフよりも一回り以上のコンパクト化を実現

 

↑一眼レフでは、レンズから入った光をミラーで反射させ、光学ファインダーやAFセンサーへと光を導く必要がある。一方ミラーレスでは、光が直接センサーにあたり、そこからライブ映像が出力され、EVFやモニターに表示される仕組み。ミラーがない分、、フランジバックが短くでき小型軽量化に有利だ
↑一眼レフでは、レンズから入った光をミラーで反射させ、光学ファインダーやAFセンサーへと光を導く必要がある。一方ミラーレスでは、光が直接センサーにあたり、そこからライブ映像が出力され、EVFやモニターに表示される仕組み。ミラーがないぶんフランジバックが短くでき、小型軽量化に有利だ

 

【2009~2012年】各社からミラーレス一眼が続々と登場

第1号機の発売以降、さまざまなカメラメーカーや家電メーカーがミラーレス一眼の分野に参入し、数多くの製品が登場。そのほとんどのメーカーは、ミラーレス用に独自のレンズマウント規格を新たに開発・採用しての参入だった。

↑オリンパスはパナソニックと同じマイクロフォーサーズ規格のE-P1を発売。レトロなデザインやアートフィルターで人気を集めた
↑オリンパスはパナソニックと同じマイクロフォーサーズ規格のE-P1を発売。レトロなデザインやアートフィルターで人気を集めた

 

↑ソニーは2010年にNEX-3とNEX-5を発売。従来のAマウントとは別に、新たにEマウントを採用。初期はAPS-Cサイズに特化していた
↑ソニーは2010年にNEX-3とNEX-5を発売。従来のAマウントとは別に、新たにEマウントを採用。初期はAPS-Cサイズに特化していた

 

→キヤノンは2012年にEOS Mを発売。新開発EF-Mマウントを採用し、アダプターを介して一眼レフ用レンズも使用可能だ
↑キヤノンは2012年にEOS Mを発売。新開発EF-Mマウントを採用し、アダプターを介して一眼レフ用レンズも使用可能だ

 

【2012~2016年】ミラーレスカメラの実用性が向上

2012年以降もミラーレスの普及は進んだ。主なユーザー層は、コンパクトカメラからステップアップする人や、一眼レフのサブ機として使用する人たちだ。そのため2010年代前半はエントリークラスやミドルクラスの製品が中心だった。その後、さらに高性能化が進み、2013年には初のフルサイズミラーレスα7/α7Rが登場。中級者以上がサブではなくメイン機として選ぶケースも増えてきた。その間、ミラーレス一眼の弱点であったAF速度や連写速度などの課題も徐々にクリアされてきた。

 

■AFの高速化/像面位相差AFを採用

ミラーレスで一般的な「コントラストAF」は、ピントが合った位置が最も像のコントラストが高くなるという現象を利用。レンズを動かしてコントラストの高い位置を検出する。そのためピントは正確に合うが、AFを速くするのは難しい。一方、一眼レフで使われている「位相差AF」は、いわば三角測量に近い方法で被写体を2点から見たときの位相のズレを検出する方式で高速なAFが可能だ。そこで、イメージセンサー上に位相差検出用のセンサーを複数置いてAFを行う「像面位相差AF」を採用する製品が増加。快適なAF速度と動体追従性を実現している。

 

■連写速度の向上/電子シャッターで超高速連写を実現

ミラーレスでは、電子シャッターを使うことで高速連写ができるモデルが増えている。一眼レフのメカシャッターのようにミラーやシャッター幕を物理的に動かす必要がないので、10コマ/秒クラスの超高速連写ができる製品も少なくない。

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→メカシャッター(上)では10コマ前後の連写が現在の上限。センサー(下)使用の電子シャッターは、読み出しや画像処理回路の高速化で、さらなる連写が可能に
↑メカシャッター(上)では10コマ前後の連写が現在の上限。センサー(下)使用の電子シャッターは、読み出しや画像処理回路の高速化で、さらなる連写が可能に

 

【2016~2017年】中判などの高画質機もミラーレス化が進む

2016年以降は、独自センサー採用のシグマsd Quattroや富士フイルムとハッセルブラッドが手がけた中判ミラーレスなど、一段上の画質を備えた機種も登場。特に大型のセンサーを採用した中判カメラは、ブレが目立ちやすくカメラの内部振動によって画像がぶれてしまうケースもあるため、ミラーボックスがないミラーレスは最適といえる。加えて、一眼レフより設計の自由度が高く、小型化できる点も中判カメラを設計するうえでの魅力だ。

 

このほか、ソニー α9などのように電子シャッターや高速読み出しが可能なセンサーを用い、超高速シャッターや高速連写を実現したカメラも登場。今後、画質と速度の両面で一眼レフを超えるカメラが登場することを予感させる。

↑富士フイルムのGFX 50Sは、32.9×43.8㎜という大きなセンサーを備え、画素数は5000万超。既存の中判デジタルカメラに比べ、大幅なコンパクト化を実現。レンズやファインダーなどのアクセサリーが豊富に用意されているのも魅力だ
↑富士フイルムのGFX 50Sは、32.9×43.8㎜という大きなセンサーを備え、画素数は5000万超。そのうえで、既存の中判デジタルカメラに比べ、大幅なコンパクト化を実現。レンズやファインダーなどのアクセサリーが豊富に用意されているのも魅力だ

 

↑ハッセルブラッドX1D-50cも、GFX同様に32.9×43.8mmの5000万画素超のセンサーを使用。世界初の中判ミラーレス一眼だ。スッキリしたデザインでファインダーも内蔵
↑ハッセルブラッドX1D-50cも、GFX同様に32.9×43.8mmの5000万画素超のセンサーを使用。世界初の中判ミラーレス一眼だ。スッキリしたデザインでファインダーも内蔵

 

↑シグマsd Quattro Hは、独自に開発したAPS-HサイズのFoveonセンサー「Quattro H」を採用。クリアな発色と5100万画素相当の圧倒的な精細感を誇る
↑シグマsd Quattro Hは、独自に開発したAPS-HサイズのFoveonセンサー「Quattro H」を採用。クリアな発色と5100万画素相当の圧倒的な精細感を誇る

 

【ミラーレス一眼のこれから】デジタルならではの付加価値に期待

ミラーレスカメラは9年間で急速に進化し、もはやどの製品を選んでも大きく外すことはなく、クラスに応じた満足感が得られる。画質もスピードも操作面も、一眼レフに追いつきつつあるといっていい。当面の課題はバッテリー持久力くらいだろう。今後も、画質やスピードといったカメラとしての基本部分の高性能化はさらに進むだろうが、このまま単に画素数や連写速度などのスペックを高めるだけでは十分ではない。これからはユーザーに欲しいと思わせる魅力や価値をいかに加えるかがカギになる。幸いにして、センサー以外の主要部分がメカで構成された一眼レフとは異なり、ミラーレスはデジタル化された部分が多いので、まだまだ技術革新の余地はある。あっと驚くような新機能や新製品に期待したい。

 

プロ用一眼を凌駕するミラーレス一眼

↑ソニー α9。初期のミラーレスカメラは動体撮影が苦手だったが、最近では一眼レフに匹敵する動体追従性や、一眼レフを超える連写速度を持つミラーレスカメラが登場。その代表格がソニーα9だ。スポーツやポートレート、ネイチャーなどプロの現場でもα9ユーザーが増加中だ
↑ソニー α9。初期のミラーレスカメラは動体撮影が苦手だったが、最近では一眼レフに匹敵する動体追従性や、一眼レフを超える連写速度を持つミラーレスカメラが登場。その代表格がソニーα9だ。スポーツやポートレート、ネイチャーなどプロの現場でもα9ユーザーが増加中だ

 

↑オリンパス OM-D E-M1 MarkII。マイクロフォーサーズのミラーレスカメラは、小型軽量に加えて、4Kなど動画機能の充実、連写の速さ、強力な手ブレ補正などが独自の魅力になっている。なかでも昨年末登場のオリンパスE-M1 Mark IIは、手持ちでの長時間露光という新しい撮影方法を生み出した
↑オリンパス OM-D E-M1 MarkII。マイクロフォーサーズのミラーレスカメラは、小型軽量に加えて、4Kなど動画機能の充実、連写の速さ、強力な手ブレ補正などが独自の魅力になっている。なかでも昨年末登場のオリンパスE-M1 Mark IIは、手持ちでの長時間露光という新しい撮影方法を生み出した