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2018/4/18 19:00

プロユースだけではもったいない! Bose「S1 Pro Multi-Position PA system」は音楽ファンこそ使おう

Bose「S1 Pro Multi-Position PA system」は「PA system」とされている通り、本来の主な用途は音楽ライブでボーカルや楽器の音を会場のお客さんに向けて届けるためのスピーカーシステムです。ボーカル+アコースティックギターやDJユース、ストリートやカフェといった比較的小規模なライブを想定。コンパクトでスタンド等を使わずとも自立で設置角度調整可能、オプションでバッテリー駆動にも対応と、その本来の主な用途での使いやすさやクオリティは改めて言うまでもありません。

 

↑「S1 Pro Multi-Position PA system」。実売価格は8万4240円。Boseストアおよび全国の楽器店で販売中

 

↑背面コントロールパネルを見ると、音域を細かに調整できることがわかります

 

ちなみに一般の音楽ファンには「ノイズキャンセリングヘッドホンのBose」の印象が強いかもですが、BoseはPA分野でもトップクラスです。しかし、普通の音楽リスナーにはPA向けスピーカーなんて関係ありませんし、楽器を趣味としている人でも、PAスピーカーを買うのはハードルが高いものです。それなりのお値段と大きさですし。自分は歌わないしアコギも弾かないしDJもやらない……という方もいることでしょう。……僕ですが。

 

でもこちらのスピーカー、実は普通に音楽再生にも使えますし、アコースティックではなくエレキギターやベースと組み合わせての活用も、ちょっと工夫すればできそうです。今回はそんな、この製品本来の想定とは少し違うかもしれない使い方を試してみました。

 

↑大きさはギターと並べると、こんな感じ。サイズはW240×H332×D282mm

 

音楽リスニング用としては……普通に良い!

まずは自室での音楽再生用としての使いやすさやクオリティをチェックしてみましょう。Bluetooth対応ですのでスマートフォンなどとのワイヤレス接続もできますし、ステレオミニの入力端子も用意されているので単純にケーブルでつないでもOKです。

 

↑Bluetoothボタンを長押ししてペアリング

 

↑プレイヤー側とスピーカー側のボリュームの兼ね合いに気をつけながらボリューム調整

 

ライブでの設置の自由度を高めるためのマルチポジション形状は自室で使う場合にも活躍!大きいのでほかに置き場所がなくて床に直置きなんて場合も少なからずと思いますが、その際にも椅子に座った顔に向かって音を届けやすい、斜めの角度で設置できるのです。

 

さらに設置ポジションの変更は内蔵センサーで検知され、それに合わせてスピーカーの音響特性が「Auto EQ」機能で自動補正されます。至れり尽くせり。

 

↑縦置きでスラント。床置きでの設置面積を小さくできます

 

↑横置きでスラント。横置きはラックの高さに合わせて入れたいときなどに便利そうです

 

Bluetoothスピーカーとして見ればかなり大型ですが、その大きさのおかげで低音再生に余裕があります。ベースやドラムスをドカンと目立たせるのではなく、でもしっかりとした存在感や弾むようなドライブ感を表現してくれるのです。小型スピーカーから無理矢理ひねり出す低音とは一味違います。

 

ボーカルなどの中高域は手触り感重視な印象です。ハイエンドオーディオのような透明感や繊細さではなく、それこそライブハウスで聴くような、適度なざらつきも備えた生々しさを感じられます。なのでリズムマシンのような低音中心のサウンドにもハマります。実際に試聴した中では、軽くて小気味良いドラムサウンドが特徴的なMONDO GROSSO「惑星タントラ」との相性が抜群でした。強いて言えば左右別ではなく一体型のスピーカーなのでステレオ表現は苦手。それを望む方にはフィットしないかと思います。

 

そんなこんなで見慣れてくると、この「でっかいスピーカーを無造作に床に置いちゃってます感」が逆に洒落ているようにも感じられてくるから不思議です……。

 

ギター用のモニターとしても……良い

では、エレクトリックギターとの組み合わせではどうでしょう? このスピーカーはギターアンプではないので、これにギターを直接にケーブル接続してもギターらしいサウンドは得られません。スピーカーとギターの間に「ギターアンプシミュレーター」を挟む必要があります。ギターアンプを使えない環境でも、そのアンプ回路やスピーカーの響きをシミュレーションしてギターアンプらしいサウンドを再現してくれるアイテムです。この機能単体の製品も豊富ですし、マルチエフェクターにその機能のひとつとして搭載されていることも多いですね。

 

↑今回は筆者手持ちのこちらVOX「amPlug」を使用。本来はヘッドホン用なのでスピーカーにつなぐのには向かないのですが……

 

アンシミュ単体製品を使う場合のケーブル接続の流れは、

エレクトリックギター

必要であれば各種エフェクター

アンプシミュレーター

BOSE S1のINPUT 1または2

となります。

 

音楽プレイヤーのINPUT 3につなぐことも可能ですが、そちらは後ほど別のアイテムをつなぎます。

 

↑amPlugのヘッドホン出力から出力して……

 

↑変換アダプタを使ってS1のINPUT 1に入力。「TONEMATCH」スイッチは、今回はギターに合わせました

 

アンプシミュレーターのヘッドホン端子からのヘッドホン再生でのサウンドとこのスピーカーから出てくるサウンドに違和感があるときは、スピーカー側に用意されている「BASS」「TREBLE」のイコライザーで調整。アンシミュ側でベストのセッティングを作り上げている場合、そちらの設定を動かすのは避けたいですよね。アンシミュとスピーカーのマッチング調整をスピーカー側できるのは便利です。「REVERB」を使えば響きを足してライブ気分を高めることもできます。

 

この使い方でのサウンドは……組み合わせるシミュレーター次第です!

 

好きな曲に合わせてギタープレイ!

さて、このスピーカーには音声入力がINPUT 1、2、3(ミニプラグ&Bluetooth)と3系統用意されており、そのすべての入力の音量バランスをミキシングして同時にスピーカー再生できます。

 

その機能を使えば、ギターと音楽プレイヤーなど手持ちの機材との組み合わせで、「好きな音楽を再生しながらギターを弾いて練習する」という環境も簡単に整えられます。リズムボックスなどと組み合わせても面白いかもですね。

 

音楽リスニング用としての使い方は先ほど紹介しました。それにギターのつなぎ方も紹介しました。あとはそれぞれのINPUTに用意されている「VOLUME」を調整して音楽とギターの音量バランスをいい感じにするだけです。

 

↑INPUT 1のギターとINPUT 3の音楽の音量バランスをそれぞれの「VOLUME」で調整

 

実際試してみると、うんやっぱり良い感じです。自分の腕がアレなのはさておき、ギターカラオケシステムとしては納得のサウンドクオリティ。

 

ギターアンプ製品の中にもオーディオ入力を装備していて同じことができるアンプはあります。でもあちらはギターアンプとして音作りされているので、音楽再生のクオリティは上質とまでは言えません。

 

対して、こちらは音楽再生メインのスピーカー。ギターサウンドのためにアンシミュを加えるという一手間は必要になりますが、音楽再生とギター、両方とも良好なサウンドを得ることができます。ギタープレイヤー視点から見ても「あえてギターアンプではない、もっとオールラウンダーな選択肢」として面白いアイテムなのではないでしょうか。