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2018/4/21 20:30

画素数がほぼ同じのミラーレスカメラ、何が違う? キヤノン3モデルの意外な「差」と「選び方」

キヤノンのミラーレスカメラであるEOS Mシリーズは、小型・軽量で低価格な「EOS M100」を中心に人気を博している。そこに、この3月から“EOS Kissシリーズ初”のミラーレスカメラ「EOS Kiss M」が加わったことで、これまで以上に注目を集めている。

 

しかも、このEOS Kiss MはEOS M100同様にエントリーモデルという位置づけながら、スペック上は上位モデルの「EOS M5」に勝るとも劣らない性能を持っており、初級~中級のユーザーにとっては、Kiss M、M100、M5のどれを選ぶのがベストなのか悩んでしまう点も多いだろう。そこで本稿では、新登場のEOS Kiss Mを軸に上位モデルのEOS M5やEOS M100と比較。それぞれの機種の特徴などを探ってみた。

EOS Kiss M(中央)とEOS M5(右)はEVFを搭載し、一眼レフに似たデザイン。EOS M100(左)はEVFを非搭載としたことで小型・軽量化されただけでなく、スッキリとしたスクエアボディとなっている。センサーサイズや画素数はほぼ横並びだが、後発のKiss Mは映像エンジンが新型の「DIGIC8」となっており、そのパフォーマンスや画像の仕上がりの違いが気になるところ。

 

【基本スペック比較】

数値上では最新の映像エンジンを搭載するEOS Kiss Mに注目

3機種の基本スペックを比較してみると、センサーサイズや画素数はほぼ同じで、AFに像面位相差AFの「デュアルピクセルCMOS AF」を採用している点も同様。目立つところではEOS M100のみEVFが非搭載という違いはあるものの、いずれも可動式(可動方向に違いはある)のタッチパネル液晶モニターが採用されているなど、あまり差を感じさせない部分が多い。

EOS Kiss Mには最新の映像エンジンが採用されていることもあり、連写速度が最高約10コマ/秒(サーボAF時は約7.4コマ/秒)と高速でAF測距点が最大143点、最高ISO感度が51200(感度拡張時)と、ほかのモデルに比べて数値上ではEOS Kiss Mが優れている点が多い。

 

では、上位モデルのEOS M5の利点はというと、連続撮影可能枚数がRAW+JPEGで約16枚(Kiss Mは約10枚)と多い点が目を引く。またEOS M100に関しては、やはり約302gと軽量で小型な点がポイントだろう。

 

このほか、動画撮影機能にも違いがあり、EOS M100とEOS M5がフルHD(1080/60p)対応なのに対し、EOS Kiss Mは4K/24p撮影にも対応している。しかも、ボディ内の電子式手ブレ補正とレンズ側の光学式手ブレ補正の協調制御が可能な「コンビネーションIS」採用(対応レンズとの組み合わせで機能)で高精細な4K動画の手持ち撮影なども行いやすくなっているほか、4K動画からの静止画切り出しも可能だ。ちなみに、コンビネーションISについては、EOS M5やEOS M100にも採用されている。

 

【操作性比較】

操作性には明確なクラス分けが! 撮影スタイルに合わせて選ぶべし

数字上でのスペックでは最新モデルであるEOS Kiss Mがやや優位という程度で、3機種間に格別大きな差はなかったが、その操作性を見てみるとクラス分けが明確に行われているのがわかる。

 

まず、最初級モデルといえるEOS M100は、撮影モードダイヤルに絞り優先やシャッター速度優先などのモードがなく、モニター上で設定する方式。そのため、撮影モードを撮影条件に合わせて頻繁に変える撮り方よりも、フルオートでの撮影をメインにして、背景をぼかしたり、動体を止めて写したりといった効果を狙うときのみ撮影モードを変えるといった使い方が向いている。その意味で、かなりコンデジに近い使い方ができるミラーレスカメラといった印象だ。

↑EOS M100の撮影モードダイヤルには、「シーンインテリジェントオート」「通常撮影」「動画撮影」の3つのモードが配されている。絞り優先オートなどは、通常撮影モード(カメラマーク)にして、設定画面で撮影モードを選択する。手に持った印象は、グリップが浅めなのが気になるものの、軽量なので標準ズームレンズ装着時なら片手でも十分ホールドできる

 

一方、最上位機であるEOS M5は、各撮影モードがダイヤルに配置されているのはもちろん、メイン電子ダイヤルやサブ電子ダイヤル、コントローラーホイールなどのダイヤル類を備え、各種の設定を撮影意図に合わせて変えながら撮るといった撮り方に向く。同社のミドルクラス以上の一眼レフカメラユーザーであれば、操作性が似ているためサブ機としても扱いやすいだろう。

↑上面にメインとサブの電子ダイヤルのほか、独立した露出補正ダイヤルを備える(親指部分)。また、背面にコントローラーホールも装備され、各種設定がダイレクトに操作可能だ。グリップが深めでホールディングしやすいが、ボディの重さはやや気になる

 

EOS Kiss Mは、どちらかというとEOS M5に近い操作性となっているが、サブ電子ダイヤルやコントローラーホイールが省略され、ボタン類とメイン電子ダイヤルや十字キーとの組み合わせで設定変更を行う方式で、M5とM100の中間的な操作性といえる。

↑上面に撮影モードダイヤルとメイン電子ダイヤルを備える。サブ電子ダイヤルやコントローラーホイールは省略されているので、ボタンとメイン電子ダイヤルを組み合わせて露出などの設定を行う。グリップが大きく、比較的軽量なのでホールディングしやすい

 

背面モニターに関しては、3機種共通の特徴としてタッチパネル液晶が採用され、各種の設定もタッチ操作で行える。これは、ダイヤル数の少ないEOS M100やEOS Kiss Mでは、特に有効な機能だと感じる。また、EOS M5やEOS Kiss MでのEVF使用時には、液晶モニターに触れることでAF測距点の変更が行える「タッチ&ドラッグAF」にも対応し、EVF使用時の操作性向上に一役かっている。

↑背面モニターは、3機種ともに可動式だが、最新のEOS Kiss Mが上下左右可動のバリアングル式なのに対し、EOS M5は上下チルト式、EOS M100は上方向への跳ね上げ式だ。この点では、縦位置撮影にも対応しやすい、EOS Kiss Mのバリアングル式が使いやすい

【画質比較】

画素数はほぼ同じながら、手持ちで夜景を撮るならEOS Kiss Mが有利

前述のように画素数などは3機種ともにほぼ同じ仕様となっているが、EOS Kiss Mでは、映像エンジンが新型になっており、画質の差も気になるところだ。そこで3機種での実写を行って比較してみた。

 

まずは通常撮影時の画質をチェックするため、3機種で同じシーンを撮影。いずれもISO100、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:スタンダードで撮影したが、3機種ともほぼ同じ結果となった(ここではEOS M5とEOS Kiss Mの作例を掲載)。この撮影結果を見る限りでは、EOS M5やEOS M100のほうが色鮮やかに感じられ、逆にEOS Kiss Mは階調が豊かに感じられるが、その差は極わずかだ。

↑EOS M5で撮影

 

↑EOS Kiss Mで撮影

 

続いて高感度時の画質をチェックするため、ISO25600でF8、1/200秒という条件で撮影。ホワイトバランスは太陽光に固定している。見比べてみると、差はわずかながら、EOS Kiss Mは暗部の色ムラが少ない印象。さらに拡張感度ながらISO51200も使えることを考えると、高感度での撮影はKiss Mがやや有利だ。

↑EOS M100で撮影

 

↑EOS M5で撮影

 

↑EOS Kiss Mで撮影

 

今回試した限りでは、同一条件での通常撮影においてはほとんど差はないと感じた。ただし高感度では、わずかながらEOS Kiss Mが色ムラなどが少なく、解像感も高い結果となった。作例ではISO25600で撮っているが、ISO6400以上を使って夜景の手持ち撮影などを行うなら、EOS Kiss Mが有利だろう。

 

【連写比較】

連写速度が最も速いEOS Kiss Mが良い……とは限らない!?

このほか、連写についても試してみた。こちらは、連写速度はEOS Kiss Mが速いものの、サーボAF(シャッターボタンを半押ししている間、被写体にピントを合わせ続けるAFモード)を使ってRAW+JPEGで高速連写できるのは約1秒であり、その点で2秒以上連写できるEOS M5のほうが有利に感じた。また、EOS M100は連写速度は遅いものの4秒以上の連写が可能で、速度は不足しがちだが、特に動きの速いものを撮るのでなければ実用上の不満は少ない。

 

実際の作例を見ていこう。下の写真はいずれもサーボAFを使い高速連写モードで撮影。露出はシャッター優先で1/500秒を使用、画像記録はRAW+JPEGとした。撮影は、先頭車両の前面が画面左に入った時点でシャッターボタンを押し、先頭車両が画面から見切れるまでを撮影。各カメラで先頭車両の前面が画面のいちばん右端に写った写真を掲載している。

↑EOS M100で撮影

 

↑EOS M5で撮影

 

↑EOS Kiss Mで撮影

 

結果、EOS M100(上)とM5(中央)は、連写速度はEOS Kiss M(下)に及ばないものの連続撮影枚数が多く、画面の右端に先頭車両を入れることができた。一方でEOS Kiss Mは連写できる時間が短かく、かなり手前の時点で撮影が止まってしまっている。

 

もっとも、JPEGのみでの連写ならEOS Kiss Mでも4秒以上の連写が可能なので、EOS Kiss Mで高速連写を行う場合は、JPEGで撮るようにするか、あるいは連写速度を低くして撮影すればその実力をフルに発揮できるだろう。

 

ちなみにこの写真が撮れるまでの連写枚数は、M100が11枚、M5が14枚、Kiss Mが8枚であった

 

【まとめ】

選択肢が広がり、撮影スタイルやレベルに価格差を加味して選べるように!

キヤノンのミラーレスカメラは、EOS Kiss Mの登場で入門機から中級機の層に厚みが出て、ユーザーのレベルや使い方に合わせたカメラ選びができるようになったと感じる。

 

コンデジやスマホからのステップアップには、小型・軽量なEOS M100が扱いやすさの点で魅力的。中・上級者にはEOS M5や、今回は取り上げなかったが、EOS M5に近い操作性でEVFを外付け式としたEOS M6もある。そして、注目のEOS Kiss Mは、カメラを本格的に始めたい初心者や中・上級者のサブカメラにもぴったりだ。

 

また、予算に合わせたカメラ選びもしやすくなった。EOS M100の4万7570円というボディの実売価格(執筆時点)の安さは圧倒的で、EVFが必要なく、フルオートで気軽に撮影を楽しみたいならEOS M100がベストだろう。ほかの2機種を見ると、EOS M5の実売価格は9万7120円でEOS Kiss Mは7万9380円(ともにボディ)。2万円弱の差があり、高感度や4K動画撮影機能の搭載、最大143点のAF測距点などを考えると、EOS Kiss Mが非常にお買い得といえる。

 

とはいえ、M5にも上位機種ならではの良さがあり、今回チェックした高速連写時の実力のほか、外装の高級感や操作性の高さは、同社の一眼レフの中級機に準じたものであり、中級以上の一眼レフと併用しても違和感なく使える点はさすが。現時点で同社のEOS 80Dなどの中級一眼レフを使用していて、サブに小型一眼をと考えているなら、使いやすさの点でEOS M5という選択肢もあるだろう。ただ、その場合も同社の中級一眼レフには4K動画撮影機能搭載モデルは存在しておらず、4K動画撮影も楽しみたいという場合には、EOS Kiss M一択となる。

↑EOS M100で撮影。小型・軽量モデルは片手での撮影も容易。撮影シーンも自動認識してくれるフルオートを使えば、花やテーブルフォトなどの日常のシーンを素早く撮れる。大きさもコンデジに近く、普段使いのカメラに最適

 

↑EOS M5で撮影。今回テストした結果でもわかるように連写速度と連写枚数が比較的多く、RAW+JPEGでの高速連写にも向く。こうした点は、さすが最上位モデルと感じられる

 

↑EOS Kiss Mで撮影。高感度での撮影に強く、手持ちでの夜景や室内撮影も高画質で失敗なく撮れる。JPEGでの高速連写や静止画切り出しが可能な4K動画、高精細なEVFなどを使いこなせば、上位機に勝るとも劣らない撮影が楽しめる。コスパのよさも魅力