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2018/5/20 20:00

万能レンズの代名詞!! タムロン「高倍率ズーム」の系譜と魅力【レビューあり】

現行モデルを使い倒し! 基本性能や操作性は?

フルサイズ対応の高倍率ズームの現行モデルは、冒頭でも紹介した2014年6月発売の「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」だ。光学系に採用される特殊硝材は、LD(Low Dispersion:異常低分散)レンズ4枚、ガラスモールド非球面レンズ3枚、複合非球面レンズ1枚、XR(Extra Refractive Index:高屈折率)ガラス1枚。さらに、XRガラスよりも屈折率が高いUXR(Ultra-Extra Refractive Index:超高屈折率)ガラスを1枚。これらの特殊硝材を贅沢に使用することで、従来製品(Model A20)以上の小型化を実現しながら、画質劣化につながる諸収差を徹底的に補正して、高い描写性能を実現している。

↑望遠端300mmの設定で、鏡筒を伸ばし切った状態。かつての高倍率ズームはズームリングの動きにムラがあった(途中に重くなるポイントがあった)。だが、本製品も含め、最近の高倍率ズームのズームリングの動きは結構スムーズだ

 

↑ズームリングには、広角端で固定させる「ズームロックスイッチ」が装備されている。これにより、移動時の自重落下(重力や振動でレンズ鏡筒が伸びる)を防ぐことができる

 

対応マウントは、キヤノン用、ニコン用、ソニー用(Aマウント用)の3タイプ。ちなみに執筆時点で、ニコンには28-300mmの製品があるが、ソニーにはない。キヤノンの28-300mmは、画質重視の設計のためサイズが大きく高価である。それゆえに、このタムロン28-300mmの存在価値は大きいと言えるだろう。

↑シックで上品な外観デザインに一新された「タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」。その外観やサイズは、各メーカー(対応マウント)の、いろいろなフルサイズ一眼レフボディにマッチする

 

↑鏡筒側面に設置された、AF/MF切替スイッチ(上)と、VCスイッチ(下)。SPシリーズのスイッチほど大きくはないが、視認性や操作性に問題はない

 

スナップ~本格望遠まで幅広い撮影がコレ1本で楽しめる!

ここからは、本レンズを使って撮った作例をもとに、その描写について語っていこう。

 

目の前にそびえる、新緑に覆われた山。その山の端にあった1本の針葉樹が目を引いたので、300mmの画角で切り取った。こういった“近づけない被写体”では、高倍率ズームの本格望遠画角が威力を発揮する。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F11 1/250秒 -0.7補正 WB:太陽光 ISO200

 

蕎麦屋の店先に置かれた、味わいのある大黒様。その石像に接近して、28mmの広角域でスナップ感覚で撮影した。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F11 1/80秒 WB:オート ISO100

 

寺院の門の脇にあった小さめの銅像。高い台座の上に設置されているので、近づいての撮影はできない。そこで200mm弱の望遠画角で、銅像の上半身を切り取った。また、手前の植え込みと背後の樹木の“新緑”を大きくぼかし、画面全体を華やかに演出する。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F6.3 1/200秒 +1補正 WB:太陽光 ISO320

 

山頂に向かうケーブルカーの駅。そのホーム端の棒に、駅員の帽子が掛けてあった。その様子を、駅の入口近くから300mmの望遠端で切り取った。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F8 1/60秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO1600

 

山頂に向って遠ざかるケーブルカー。300mmの望遠端近くで撮影すれば、標準ズームの望遠端(70mmや100mm前後)では得られない、遠くの被写体を大きく拡大する“引き寄せ効果”が堪能できる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) シャッター優先オート F6.3 1/500秒 WB:オート ISO1250

 

22.2倍のAPS-Cサイズ用ズームレンズも登場。それでも褪せない「28-300mm」の魅力

革新的な高倍率ズーム「AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical Model 71D」が発売されてから20余年。タムロンの高倍率ズームは、2017年発売のAPS-Cサイズデジタル一眼レフ専用「18-400mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC HLD Model B028」において「22.2倍」という驚異的なズーム倍率を実現した。

↑昨年登場し、「22.2倍」という驚異的なズーム倍率で大きな話題となったAPS-Cサイズ用の「18-400mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC HLD(Model B028)」。実売価格7万3880円

 

そんな超高倍率な製品と比べると、フルサイズ対応の「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」は、地味な存在に思えるかもしれない。だが、以前よりもフルサイズデジタル一眼レフが普及してきた現在では、このポピュラーな28-300mmは、これまで以上に存在感を増しているように思う。高感度性能やボケ効果に優れるフルサイズデジタル一眼レフの特徴を生かしながら、レンズ交換なしで広角から本格望遠の撮影が楽しめるのだから。

 

前述の、特殊硝材を贅沢に使用した光学設計。高速で静かなAFを実現する超音波モーター「PZD」や、定評のある手ブレ補正機構「VC」の搭載。絞り開放から2段絞り込んだ状態まで、ほぼ円形の絞り形状が保たれる「円形絞り」の採用。マウント部分やレンズ各所に施された「簡易防滴構造」。これらの機能や仕様も魅力的だ。

 

“高倍率ズームのパイオニア”が、これまで蓄積してきた技術やノウハウを結集させて作り上げた、この「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」。カメラボディに装着して操作、あるいは実際に撮影してみると、その完成度の高さに感心させられる。

 

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