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カメラ
2018/8/15 18:30

“遠くを撮りたい”なら買って損ナシ!! キヤノンの超望遠レンズ「100-400mm」をプロが賞賛する理由

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第6回「キヤノン 超望遠ズームレンズ(100-400mm)」

 

ここ数年の間に、多くのカメラ・レンズメーカーから、焦点距離400mmまでカバーする、いわゆる「超望遠レンズ」が発売されるようになった。だが、キヤノンはかなり前から、このカテゴリに該当する一眼カメラ用交換レンズ「100-400mm」を発売している。しかも、現在ラインナップされているのは“二代目の100-400mm”であり、画質面でも操作面でも大きく進化させた製品なのだ。

↑高画質設計で操作性にも優れる、高い機動力が自慢の超望遠ズームレンズ「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」

 

現在、各社から発売されている400mmまでの超望遠ズームレンズには、コストパフォーマンスを重視した製品と、光学性能やAF性能を追求した製品がある(厳密に分類するのは難しいが)。

 

今回紹介する、キヤノン「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」は後者に該当する製品であり、プロやハイアマチュアのシビアな要求に応える「L(Luxury)レンズ」の1本。その進化した超望遠ズームレンズの特徴や魅力を、実際に撮影した作例写真とともに探ってみたい。

 

【今回紹介するレンズはコレ!】

光学性能も手ブレ補正も大幅に向上した二代目モデル


キヤノン
EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM
実売価格23万9620円

先代のロングセラー製品「EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM」の後継モデルで、最新の光学設計により画質が大幅に向上。蛍石レンズ1枚とスーパーUDレンズ1枚を含む新しい光学設計により、ズーム全域において、画面周辺部まで高画質を実現。さらに、独自の新開発コーティング技術「ASC(Air Sphere Coating)」の採用で、フレアやゴーストも大幅に抑制。IS(手ブレ補正機構)の効果も、従来モデルのシャッター速度1.5~2段分から「4段分」に大幅に向上している。不規則な動きの動体撮影に最適な「ISモード3」も新搭載。2014年12月発売。

●焦点距離:100-400mm ●レンズ構成:16群21枚 ●最短撮影距離:0.98m ●最大撮影倍率:0.31倍 ●絞り羽根:9枚 ●最小絞り:F32-40 ●フィルター径:77mm ●最大径×全長:94mm×193mm ●質量:約1570g ●その他:手ブレ補正効果4.0段分(CIPAガイドライン準拠)

 

約20年前に発売された初代「100-400mm」を振り返る

二代目モデルを語るうえで、まずはデジタル一眼レフが普及する前の“2000年以前”に発売された、超望遠400mmまでカバーする初代モデルについても触れておきたい。

↑最大径92mm×全長189mmと、二代目モデルよりもわずかに小さい。そして、質量は200g近く軽い1380g。ズーム方式は、速写性に優れる直進式を採用(二代目は回転式)

 

1998年12月に発売された本レンズは、報道写真の分野や動きの激しいスポーツ、近づけない動物など、プロフェッショナルや特殊な撮影現場で高いパフォーマンスを実現。L(Luxury)レンズに相応しい描写性能や、手ブレ補正機構「IS」の搭載により、望遠や超望遠撮影を重視するカメラマンに支持されてきた。

今回紹介する二代目「100-400mm」レンズは、そんな初代レンズから画質面でも操作面でも大きく進化しているのだ。

 

超望遠ズームのメリットを具体的なシーンで語る

望遠ズームレンズの最大の特徴は、近づけない被写体でもズーム操作によって“大きく写せる”という点である。そして、望遠側の焦点距離が長くなるほど、より離れた被写体も大きく写せるし、同じ距離なら画面上により大きく写すことができる。

 

それでは、筆者が実際に撮影していて感じたメリットを、この超望遠画角を生かした具体的な撮影シーンを挙げながら紹介しよう。

 

【その1】近づけない被写体を、超望遠画角で大きく写す

駅前に設置された木製の案内板に、削り出しのネコのキャラクターを見つけた。その可愛らしい表情を400mmの画角で切り取る。目線よりも高い位置になり、しかも周囲に柵が設置されている――。超望遠の画角を利用すれば、そんな“近づけない被写体”も大きく写すことができる。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/400秒 -0.3補正 WB:オート ISO100

 

【その2】引き寄せ効果+前ボケ効果で幻想的な雰囲気に

離れた被写体が、あたかも近くにあるように写せる。これは「引き寄せ効果」と呼ばれるもので、望遠になるほど高まる効果である。この花もけっこう離れた位置に咲いているが、400mmの画角によって、手が届く位置にある花のような感覚で捉えられた。そして、手前にある草を「前ボケ」として画面内に取り入れることで、幻想的な雰囲気に仕上げることができた。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/80秒 +0.7補正 WB:太陽光 ISO100

 

【その3】一輪の花も大きく写せる、短めの最短撮影距離

花壇に咲く花のなかから、比較的近い位置にある一輪を主役に抜擢。そして、望遠端400mmの画角で、最短撮影距離近くの間合いで撮影。当然、マクロレンズには敵わないが、超望遠ズームレンズとしてはけっこう“寄れるレンズ”と言えるだろう。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/320秒 WB:オート ISO500

 

↑近年、望遠ズームレンズがモデルチェンジする際には、よく“最短撮影距離の短縮”が実施されている。本製品の場合も、従来モデルの1.8mから「0.98m」へと大幅に短縮された

 

【その4】離れたフラミンゴも大きくシャープに!

多くのフラミンゴが活発に活動する、動物園内の浅い池。その池の対岸近くに、これから羽ばたこうとする一羽を見つけた。そして、素早くズームリングを望遠端に設定し、羽ばたく瞬間を大きく捉えた。“望遠端で絞り開放”という条件になったが、レンズの光学性能とAF精度のおかげで、シャープな描写を得ることができた。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/1000秒 WB:オート ISO1000

 

【その6】進化した手ブレ補正機構ISでファインダー像も安定

超望遠の手持ち撮影では、わずかなカメラの動きで、ファインダー(または液晶モニター)の像が大きく揺らいでしまう。高速シャッターで撮影画像のブレは抑えられるが、それでは安定した構図を得るのが難しくなる。だが本レンズでは、手ブレ補正効果がシャッター速度「4段分」に進化した手ブレ補正機構ISにより、そのあたりの不安もかなり解消される。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) シャッター優先オート F6.3 1/500秒 WB:オート ISO1250

 

【その7】贅沢な光学設計で画面周辺部まで画質が安定

中央付近はシャープだが、画面周辺部をチェックすると、像のアマさや乱れが見られる……。そのあたりが、コスパや大きさ・重さを重視して設計される“安価な望遠や超望遠ズーム”の泣き所。だが、本レンズは、色収差を抑える蛍石レンズ1枚やスーパーUDレンズ1枚などを含む贅沢な光学設計によって、ズーム全域で画面周辺部まで高画質を実現する。だから、画質が最重要視される風景撮影にも安心して使用できる。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(182mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/125秒 -0.3補正 WB:オート ISO800

 

【その8】超望遠で離れた列車をじっくり撮る

こちらに向かってくる列車は、距離が近くなるほど体感速度が増してくる。そして、わずかなシャッターのタイミングのズレによって、写り具合(列車の位置など)も大きく変化する。もちろん、そういう状況の醍醐味もあるが、思い通りに写せない確率も高くなる。だが、超望遠域で距離を置いた撮影なら、列車位置の変化も激しくないので、シャッタータイミングによる失敗も少なくできる。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) シャッター優先オート F6.3 1/1000秒 WB:オート ISO500

 

快適さを左右する「操作性」も要チェック!

「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」は、従来モデルよりも手ブレ補正機構「IS」の補正能力を高めたことで、手持ちでの超望遠撮影の活用範囲が広がっている。また、ズームリングの調節機能の搭載によって、撮影スタイルや好みに応じて“ズームリングの重さ”が変えられるのも、本製品の魅力的な部分と言える。

 

こうした「操作性」は画質や大きさ・重さに比べるとパッと見ただけでは気づきにくい地味なポイントではあるが、長く使うことを考えると快適さを左右する重要なポイントだ。本製品に関してもいくつか取り上げておこう。

 

【その1】操作しやすい幅広のズームリング

三脚座を使用して三脚に固定し、望遠端の400mmまで伸ばした状態(フードも装着)。前方に配置される幅広のズームリングは、三脚使用時でも手持ちでも操作しやすい。

 

【その2】“ズームリングの重さ”を調整できる

ズームリングとフォーカスリングの間に「調整リング」が設置されている。このリングを「SMOOTH」方向に回転させるとズームリングの動きは軽くなり、反対の「TIGHT」方向に回転させると重くなる。

 

【その3】ワンタッチで切り替え可能な手ブレ補正機能ほか

マウント部近くの左手(カメラを構えた状態)側に、フォーカスと手ブレ補正機構「IS」関連の設定スイッチが並ぶ。上から、撮影距離範囲切り換えスイッチ、フォーカスモードスイッチ、手ブレ補正スイッチ、手ブレ補正モード選択スイッチ。

 

【その4】フードにはPLフィルターの操作窓を装備

レンズ前面を雨や雪などから守り、写りに影響を与える有害な光線をカットする、付属のフード「ET-83D」。そのレンズ取り付け部の近くには、C-PL(円偏光)フィルターを操作するための、スライド方式の操作窓が設けられている。風景派カメラマンにはありがたい機能である。

 

 

一般的な望遠ズーム「70-200mm」「70-300mm」と比較すると?

望遠側の焦点距離が長くなると、レンズ本体の大きさ(主に長さ)が大きくなり、また、画質劣化や開放F値の暗さなどの不安要素も増えてくる。そのあたりが、少し望遠側を抑えた70-200mmや70-300mmなどの望遠ズームと比較検討する際のポイントになってくるだろう。

 

特に、高画質設計で開放F値も明るい「70-200mm F2.8」や「70-200mm F4」は魅力的だ。あるいは、もう少し望遠域までカバーしたいという思いで、「70-300mm F4-5.6」などの望遠ズームレンズを選ぶ人も多いだろう(価格や大きさ重さの問題もあるが)。

 

そこで、300mmの画角と、本製品がカバーする400mmの画角を比較してみた。

<300mmと400mmの画角を比較>

300mm(上写真)と400mm(下写真)の比較。400mm/共通データ:キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM 絞り優先オート F5.6 1/320秒 WB:オート

 

100-400mmを使う場合、あまり焦点距離を意識せず、普通に400mmで撮影することが多い。だが、こうやって同条件(同じ被写体を同じ位置から撮影)で300mmと比べてみると、思った以上に400mmの“アップ度の高さ”を実感する。70-300mmクラスでも十分な望遠効果は得られるが、より被写体を大きく撮ることを重要視するのであれば、100-400mmクラスを選びたい。

 

しかも、本製品「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」は、L(Luxury)レンズに相応しい優れた光学設計を採用しつつ、大きさや重さは70-200mm F2.8クラスに近い値に収めている。その点でも、超望遠ズームのデメリットを1つ解消していると言えるだろう。

 

 

【まとめ】多くの人に推奨できる、バランスの良い超望遠ズームレンズ

超望遠撮影で描写性能やAF性能にこだわると、必然的にキヤノンのL(Luxury)シリーズのような製品を推奨することになる。もちろん、報道やスポーツイベントの現場などで使われているような超弩級の超望遠レンズ(極端な大きさ重さで、価格も100万円前後になる)もあるにはあるが、購入して使いこなせる人は限られるだろう。

 

だが、今回取り上げた「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」なら、70-200mm F2.8望遠ズーム並みの大きさ・重さで価格帯も近い。だから、高画質な超望遠撮影を堪能したい多くの人にオススメできる製品なのである。

 

協力:楽天市場