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2018/8/31 21:26

ついに「フルサイズミラーレスカメラ」市場に打って出たニコン、その特徴や狙いとは?

2018年8月23日、ニコンから、新型フルサイズミラーレスカメラ「NIKON Zシリーズ」2機種が発表されました。このカメラは35㎜判フルサイズのセンサーを備えつつ、レンズマウントは約60年の歴史を持つ伝統の「Fマウント」ではなく、新設計の「Zマウント」を採用。2017年に100周年を迎えた同社が“次の100年”に向けて開発したという、いま最も注目されているカメラとなっています。

 

本稿では、このNIKON Zシリーズの特徴や魅力に加え、いまニコンがフルサイズミラーレスカメラ市場に参入する狙いや、今後も含めた注目ポイントについて解説していきます。

↑8月23日に行われた、NIKON Zシリーズの発表会「New Products Global LAUNCH EVENT」より。NIKON Z7を手に新製品発表を行う、ニコン代表取締役 兼 社長執行役員の牛田一雄氏。「究極・最高を意味しアルファベットの最後の1文字として未来への懸け橋を想起させるもの」として新シリーズ名を「Z」としたという

 

↑同発表会より、新製品のコンセプト「MIRRORLESS REINVENTED」について解説する、ニコン 常務執行役員 光学事業部長の御給伸好氏。①大口径マウント採用による新次元の光学性能を持ち、②エルゴノミクス、信頼性、画像品質、互換性といった「NIKON QUALITY」を継承し、③未来の映像表現の進化への対応する、という3つの価値を新たに提起するものとして、Zマウントシステムでミラーレス市場に参入するという

 

最大の特徴は新規格のレンズマウントにあり! そのメリットは?

今回登場したニコンのミラーレスカメラの最大の特徴は、いままでにない新規格のレンズマウントを採用した点にあります。従来、ニコンのレンズ交換式カメラは、約60年の歴史を持つ「Fマウント」を基本としてきました。それは、デジタルカメラになっても変わらず、途中、1型センサー用の「NIKON 1マウント」なども登場しましたが、プロ・アマ問わずメインストリームは現在においてもFマウントのカメラです。

 

とはいえ、このFマウントはセンサーの前にミラーボックスを備えた「一眼レフ」用の規格であり、ミラーレス用としては不向き。フランジバック(センサー面からレンズマウント面までの距離)が46.5㎜、マウントの内径が44㎜で、そのままミラーレス機を設計すると、ミラーレスカメラのメリットの1つである小型軽量化が難しいなどの制約が出てしまいます。

 

そこでニコンが新型ミラーレスカメラのために用意したのが、全く新しいミラーレス用マウントである「NIKON Zマウント」です。このマウントでは、フランジバックを16㎜と短くし、マウントの内径を55㎜と大きくとったことで、レンズ設計の自由度を高めています。これにより、ボディの小型軽量化(Zシリーズ2機種は、ともに約675g)だけでなく、特に広角レンズにおいて、収差の少ない高画質なレンズの登場が期待できるなどのメリットがあります。

↑マウント径の大きさは、他社製品と比べても圧倒的な大きさ。ボディとレンズ間の通信は、現状で11点の電子接点で行われ、機械的な結合は廃されている。これにより、今後の情報伝達の多様化や大容量化に対応する

 

Z7/Z6の基本スペックをおさらい。両者の違いは?

それでは新型マウントの話はいったんここまでとして、今回発表されたZシリーズ2機種の基本スペックをチェックしてみましょう。

 

まず1機種目は、“ニコン史上最高画質”を謳う「NIKON Z7」(以下、Z7)。有効4575万画素と高画素でありながら、裏面照射型CMOSセンサーの採用や新型画像処理エンジン「EXPEED 6」の採用などにより、常用感度で最高ISO25600を達成しています。

↑NIKON Z7。ボディが薄型化されてはいるが、大型グリップの採用で十分なホールド性が確保されている。操作性は、ボタン類を右手側に集中配置したタイプで、印象としては同社のD5600などに近い。発売は2018年9月下旬予定、参考価格は43万7400円(ボディ)

 

高速なAFが可能な像面位相差AFと高精度なコントラストAFを併用したハイブリッドAF採用で、493点のAF測距点により、画面の約90%の範囲でAFが行えます。ミラーレスカメラを使ううえでキモとなるEVFは、約369万ドットの有機ELパネルで視野率は約100%を確保。加えて、液晶モニターに3.2型約210万ドットの上下可動式タッチパネル液晶が採用されているので、背面モニターを使っての撮影も快適です。

↑Z7での試し撮り。解像感が極めて高く、花の質感などが立体的に描写されている。レンズ(24-70㎜ F4使用)も優秀で、収差が少なくニコンらしいキリっとした写り。ボケ描写も、ズームレンズであることを考えると極めて優秀といえる

 

2機種目は、“オールラウンドフルサイズミラーレス”「NIKON Z6」(以下、Z6)です。本機は画素数こそ2450万画素ですが、常用感度が最高ISO51200と高く、高速連続撮影も約12コマ/秒(Z7は約9コマ/秒)での撮影が可能。AF測距点は273点とZ7に比べると少なめですが、画面の約90%をカバーする点はZ7同様です。

↑NIKON Z6。基本的なデザインはZ7と同様。高感度撮影に強く、静止画だけでなく動画撮影においてもその実力を発揮すると思われる。ちなみにZ6、Z7ともに4K/30pやフルHD/120pの動画撮影に対応し、独自のN-Log記録によるグレーティング(撮影後の色などの調整)も可能だ。発売は2018年11月下旬予定、参考価格/27万2700円(ボディ)

 

EVFや背面モニターなどもZ7同等で、Z7に比べると動きモノ撮影や舞台などでの高感度撮影などにも向くカメラといえそうです。ちなみに今回の2機種では、ボディ内(センサーシフト式)手ブレ補正が搭載され、使用レンズを問わず、約5段分の手ブレ補正が有効な点も魅力の1つとなっています。

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