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イヤホン
2018/10/10 19:30

新進気鋭のオーディオブランド「AZLA」を徹底解説! 「音好き」にぜひ知って欲しい2つのイヤホンの違い

2017年7月に登場したイヤホン「AZLA」は、同軸ハイブリッドドライバーや2重構造のハウジングなど、これまでにない技術を詰め込んだ斬新さが話題となりました。そして、この秋にはマイナーチェンジを施した第2世代目の「AZLA MK2」が登場。今回は、新しくなったAZLAのサウンドを、この春に発売された同ブランドの兄弟機「HORIZON」と比べながら、それぞれの個性的なキャラクターを紹介していきます。

↑AZLA MK2(左/実売価格3万9960円)とHORIZON(右/同3万2980円)

 

AZLAは2017年夏に日本上陸を果たした韓国のブランド。デビューを飾ったイヤホンがブランドの名前を冠する「AZLA」でした。AZLAと同じ3~5万円台のイヤホンのなかには独自の技術によって高音質化に工夫を凝らしたものも多くありますが、AZLAはBA型とダイナミック型のドライバーを1基ずつ同軸上に配置するハイブリッドシステム「BED」を特徴とした、精度の高いサウンドが発売以来好評です。

↑BA型とダイナミック型を同軸上に配置するハイブリッドシステム「BED」を採用

 

本機のハウジングはユニークな二重構造になっています。内側のアルミブロックから削り出したハウジングには、ドライバーから生まれる背圧をコントロールするために大型のベンチレーションポート(空気穴)を設けています。そしてその外側をポリカーボネート樹脂のハウジングで密閉した構造が、「オープン型イヤホンのように開放的な音がする密閉型イヤホン」というオリジナリティを引き出しています。

↑アルミニウムのシェルをポリカーボネートのシェルで密閉した構造がAZLAの特徴

 

イヤホン「AZLA」の開発によって培われた技術をベースに、同社は8mm口径のダイナミック型ドライバー1基だけでワイドレンジ、かつ力強く伸びやかなサウンドを実現したイヤホン「HORIZON」を2018年春に発売しました。AZLAよりもハウジングが数段コンパクトになったので、女性にも日常の音楽リスニングに最適なイヤホンとして高く評価されています。

↑HORIZONはハウジングのサイズが小さいので男女問わず人気のイヤホン。カラバリはEbony BlackとCrimson Redの2色

 

そして初代のAZLAから数えて約1年の開発期間を経て「AZLA MK2」が誕生しました。本機にはHORIZONの成功によって得た資産が惜しみなく活用されています。初代のAZLAからリファインされたポイントは主に「フィルター」「ケーブル」「イヤーピース」の3点と言われていますが、それぞれを詳しくみていきましょう。

↑ALZA MK2。カラバリはMeteor GrayとLunatic Silverの2色(写真のモデルはLunatic Silver)

 

イヤホンの外観やサイズは初代のAZLAから大きく変わっていません。「BED」システムによる同軸ハイブリッドドライバーを、アルミとポリカーボネートの異素材二重シェルで覆った「Infinity Driver」などの高音質化技術も継承されています。

 

変更されたポイントのひとつめは、ノズル先端のメッシュフィルターのパターン。こちらが変更されたことにより、高域にいっそうの透明感と広がりが加わっています。音のインプレッションについては後ほどまた触れたいと思います。

↑AZLA MK2はノズル先端のフィルターが変更されています

 

そしてふたつめのポイントであるケーブルは、銀メッキをかけた銅線による3芯構造として伸びやかな音に磨きをかけました。ケーブルが少し柔らかくなっているので、取り回しが快適です。なおAZLAは新旧モデルともにリケーブルの仕様が2ピンコネクターになります。HORIZONはMMCXなので、それぞれに交換ケーブルなど対応するアクセサリーに違いがあることを覚えておくとよいでしょう。

↑AZLA MK2は2ピン端子

 

↑HORIZONはMMCX端子を採用

 

そして最後のポイントであるイヤーピースには、HORIZONから採用が始まったAZLA独自の「SednaEarfit(セドナイヤーフィット)」が付いてきます。設計に788人の耳型データをサンプルとして、誰の耳にも快適なフィットを追求。イヤーピースはイヤホンの底力を引き出してくれる重要なアイテムですが、HORIZONを発売以来愛用している筆者としては、このSednaEarfitイヤーピースが新バージョンのAZLAに採用されたことが何よりうれしい改善点かもしれません。

 

音質や遮音効果もさることながら、シリコン素材がとてもきめ細かいので、耳に入れた時の肌触りがとても滑らかなのです。飛行機での長旅に持ち出す時は、イヤホンを付けっぱなしにして音楽を聴いたり、機内エンターテインメントの視聴に大活躍してくれます。SednaEarfitのイヤーピースは単品販売もしているので、ぜひ試してみて下さい。

↑ALZA独自のSednaEarfitイヤーピース。きめ細かな肌触りが特徴です

 

↑AZLA MK2ではプレーヤー側のプラグ形状がL字型からストレートプラグに変更されています

 

繊細なHORIZON、エネルギッシュなAZLA MK2

では音質について触れていきましょう。今回はオーディオプレーヤーにAstell&Kernの「A&norma SR15」を用意して、AZLA MK2とHORIZONの音を聴き比べています。

↑Astell&KernのA&norma SR15につないで試聴してみました

 

筆者が慣れ親しんでいるHORIZONは、1枚のアルミニウム振動板を2枚の樹脂層で挟み込んだサンドイッチ構造の独自ダイナミック型ドライバー「ARD」を搭載しています。全帯域にわたって乱れのない、クリアなサウンドを引き出し、特に中高域のディティール表現が豊かなところが気に入っています。

 

例えば、女性ボーカルのビブラートやブレスの細かなニュアンスがルーペで拡大したかのように聴こえ、ダンスミュージックの新鮮なビート、ロックはエレキギターのぷりっとした粒立ちにぐいぐいと引き込まれます。情報量がとても多いサウンドなのに、分析的ではなくひとかたまりの音楽としてエネルギーをぶつけてくるような力強さだったり、耳の奥へ自然と溶け込んでくるようなやさしさがあるところがHORIZONの持ち味であると感じています。

 

対するAZLA MK2は、音楽のエネルギーをもっとストレートにぶつけてくるようなスケールの大きなイヤホンです。初代のAZLAと比べてみても、音像がさらに一歩前にぐんと踏み込んでくるような力強さを感じます。とてもふくよかな中低域がこのイヤホンのチャームポイントです。

 

単に量感に厚みがあるだけでなく、タイトで瞬発力にも富んでいます。シルキーなタッチとさわやかで抜けのよい余韻がAZLA MK2独特の世界観をつくり出しています。アップテンポなロックやポップスの演奏はカラッとしたリズムの躍動感が気分を高めてくれました。お気に入りのボーカリストによる歌ものの楽曲は、暖かい毛布に包まれるようなハーモニーの心地よさに魅了されて、思わず同じ曲を何度も聴き直してしまいました。

 

HORIZONを「緻密な線画」に例えるのであれば、AZLA MK2は「力強い油絵」のようなイメージが頭に浮かんでくるイヤホンでした。今月末には都内で「秋のヘッドホン祭2018」も開催されるので、皆さんもぜひ聴き慣れたプレーヤーと楽曲を持参して、AZLAのイヤホンを聴き比べてみてはいかがでしょうか。