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2019/2/20 20:00

ソニーのNCワイヤレスイヤホン「WI-C600N」は1万8000円の価値があるのか? 上位モデルと比較検証してみた

ソニーが1月26日に発売したBluetoothイヤホン「WI-C600N」は、手軽に使えるワイヤレスタイプでありながら、本格的なアクティブノイズキャンセリング(NC)機能を搭載した注目のアイテム。周囲の騒音を消音してくれるので、飛行機や新幹線、電車などに乗ったときや、オフィスやカフェなどで集中したいときに最適です。

↑WI-C600N(ブラック)

 

今回は、この「WI-C600N」を、同じくソニーのNCワイヤレスイヤホン「WI-1000X」を愛用しているGetNavi web編集部・一條がじっくり試してレビューしたいと思います。

 

ソニー WI-C600N

実売価格1万8000円前後

 

WI-C600Nってどんなイヤホン?

まずはWI-C600Nの基本的な性能を紹介しましょう。WI-C600Nは、周囲の騒音を低減して、小さいボリュームでも音楽を聴きやすくする「デジタルノイズキャンセリング機能」を搭載していることが特徴。こちらは、ボタンひとつで周囲の音を分析し、3つのモードから最適なものに切り替わる「AIノイズキャンセリング」に対応しています。

↑イヤホンの外側にノイズキャンセリング用のセンサーを備えています

 

また、近ごろポータブルオーディオ業界でトレンドとなっている外音取り込み機能「アンビエントサウンドモード」も利用可能。これは、周囲の騒音を計測するためのマイクを利用して集音し、イヤホンで聴けるようにするもの。イヤホンを付けたままでも会話したり、車内アナウンスなどを聴きとったりすることができる便利な機能です。

 

イヤホンには6mm径のダイナミックドライバーを採用。ソニー独自の音声補正技術「DSEE」を搭載しており、圧縮音源などで失われた高音域を補完して、クリアな音質が楽しめます。また、高音質で音楽が楽しめるAAC、aptXなどのBluetoothコーデックにも対応しています。

 

本体は首にかけて使用するネックバンド型で、やわらかいシリコン製フレキシブルバンドを採用しています。イヤホンの背面部分にはマグネットを内蔵し、音楽を聴かないときはイヤホン同士をくっつけおけるので邪魔になりません。

 

カラーはブラック、ブルー、グレーの3色をラインナップしており、実売価格は1万8000円前後となっています。

↑カラーは3色をラインナップ

 

ノイズキャンセリングの効果を徹底比較

編集部・一條が愛用しているWI-1000Xは、2017年10月に発売された上位モデル。実売価格は3万5000円前後で、WI-C600Nのおよそ2倍となっています。果たしてWI-C600NとWI-1000Xは価格差だけの違いがあるのか、2機種の比較をしながら検証していきたいと思います。

↑左がWI-C600N、右がWI-1000X(筆者の私物)

 

まずは最も重要なノイズキャンセリング性能からチェックしていきましょう。上位機種であるWI-1000Xは、イヤホンの外側と内側に配置した2つのセンサーが、騒音を打ち消す効果のある逆位相の音を高精度に生成する「デュアルノイズセンサーテクノロジー」を採用しています。これはイヤホンの外側と耳元側の2か所で騒音を測定することで、より効果的にノイズを消音するもの。WI-C600Nは一般的なNCイヤホンと同じく、外側1か所だけで測定していると思われます。

↑WI-1000Xの「デュアルノイズセンサーテクノロジー」

 

また、WI-1000Xは、常に周囲の騒音を分析し、3つのノイズキャンセリングモードのなかからその場に適したモードを自動で選択してくれる「フルオートAIノイズキャンセリング機能」なのに対し、WI-C600Nの方は、ボタンを押すと周囲の騒音を分析して適切なモードに変える「AIノイズキャンセリング機能」となっています。利用できるモードの数は同じですが、切替がフルオートか手動かの違いがあるのです。

 

さらに、WI-1000Xには周囲の気圧を測定してノイズキャンセリング性能を最適化する機能も搭載しており、飛行機の中など気圧が変化する場所で、より最適化されたノイズキャンセリング機能を体感できます。

 

スペック上は結構な違いのある2機種のノイズキャンセリング性能ですが、実際にそれぞれのイヤホンを装着して地下鉄に乗ったり、騒がしいカフェでお茶を飲んだりしてみたところ、やはりWI-1000Xの方が優れているとは思うものの、その差はそれほど大きくないと感じました。どちらも、地下鉄が走行する際の「ゴー」という音や、PCのファンなどが回転する際の「ブ~ン」という音のような、連続する中低音はしっかり消音してくれます。特にWI-1000Xは、フルオートAIが周囲の騒音に合わせて自動でモードを切り替えてくれるので、イヤホンを付けたまま移動してもノイズキャンセリングの効果が自然で、まったく違和感を感じません。

 

一方でWI-C600Nの方は、比較的静かな環境に合わせてモードを切り替え、そのまま騒がしい環境に移動すると、ノイズキャンセリングの効果が不十分だと感じることがあります。その場合はボタンを押して再度騒音を計測し、モードを切り替えればいいのですが、そのひと手間の差が面倒に思えることも。きちんと適切なモードを選択すればノイズキャンセリングの効果自体はどちらも十分なので、モード切替がフルオートか否か、という点がポイントになるでしょう。

 

上記のような差異はあるものの、実感としてのWI-C600Nのノイズキャンセリング効果はWI-1000Xに肉薄しており、ノイズキャンセリング性能だけでみるとWI-C600Nはかなりお買い得であると言えそうです。

 

ノイズキャンセリングは万能じゃない

ここで注意しておきたいのが、この2機種のノイズキャンセリング機能は、どちらも“連続するノイズ”を消音してくれるものだということ。先ほどの地下鉄の走行音や電気製品のファンの音などには有効ですが、人の話し声や車内アナウンス、キーボードを叩く音や食器がカチャカチャ鳴るような“断続的な音”にはあまり効果がありません。イヤホンを装着してノイズキャンセリング機能をオンにしても、音楽を再生していない状態では電車の車内アナウンスや隣の人の話し声がかなり聞こえます。もちろん、音楽を再生してしまえばほとんど気にならなくなりますが、「ノイズキャンセリング=周囲の音を一切遮断して静寂に包まれる」というようなイメージを持っていると、「思ったよりも静かにならない……」と落胆してしまうかもしれません。

 

これは、普段WI-1000Xを使っているときから感じていたことですが、WI-1000XもWI-C600Nもイヤホン自体の遮音性、いわゆる「パッシブ・ノイズキャンセリング」(※)の性能がカナル型のイヤホンにしてはそれほど高くないことが関係していると思われます。

※:電気的に生成した逆位相の信号をぶつけて消音する「アクティブ・ノイズキャンセリング」に対して、イヤホンやヘッドホンなどで耳を塞いで物理的に遮音すること

 

例えば、昨年のポタ-1グランプリ2018で見事に大賞を受賞したソニーのワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン「WH-1000XM3」は強力なノイズキャンセリング機能で人気となっていますが、あちらは耳全体をすっぽり覆うヘッドホン自体の遮音性の高さが、ノイズキャンセリング性能に相乗効果をもたらしていると思われます。

↑WH-1000XM3

 

ですので、「周囲の音を一切遮断してシーンとした静寂に包まれる」ことを優先するのであれば、上記の「WH-1000XM3」や、パッシブ・ノイズキャンセリング性能の高さに定評のあるシュアのイヤホン「SE215」「SE535」などを選んだほうがよいでしょう。WI-1000XやWI-C600Nの魅力は、「手軽なワイヤレスイヤホンでありながら、ノイズキャンセリング効果によって雑音を抑え、より音楽に集中して楽しめる」という点にあると思います。

 

次回は気になる「音質」を比較したいと思います。お楽しみに!