AV
2019/3/12 18:00

約40万円の超高級ヘッドホン&イヤホン! ULTRASONE「Edition 15 Veritas」と「SAPHIRE」を聴いた

ULTRASONE(ウルトラゾーン)は、1991年にドイツ・ミュンヘン郊外で創業されたヘッドホンメーカーで、ハイエンドオーディオ用とDJやスタジオ向けのプロ用ヘッドホンを作っています。同社を有名にしたのは限定生産のハイエンドモデルEditionシリーズの存在です。初めて登場したのは2004年の「edition7」。ロールス・ロイスなどの高級車を生産するメーカーから部品を仕入れ、イヤーパッドの革の材質にまでこだわった製品でした。生産もドイツ国内で1つ1つハンドメイドされています。

↑ULTRASONEのラインナップはハイエンドのEdition、ミドルクラスのSignature、業務用のProとその他に分かれている

 

また、同社独自の技術としてドライバーユニットを耳の中心からオフセットさせて、自然な広がり感を再現する「S-Logic」があります。現在では、さらに進化して「S-Logic plus」、「S-Logic EX」になっています。それからヘッドホンから出る電磁波を98%まで低減できる「ULE」(Ultra Low Emission)という技術も採用されました。ドイツの潜水艦にも使われている特殊金属ミューメタルを使ってドライバーをシールドしています。

↑ULTRASONEのCEO Michael Willberg氏が来日して新製品について語った

 

約40万円の高級モデル「Edition 15 Veritas」

「Edition 15 Veritas」は、2017年に999台が限定発売された開放型ヘッドホン「Edition 15」の密閉型が欲しいというニーズに応えて開発されたもので、Veritas(ベリタス)はラテン語で“真実”を意味しています。40mm径のGTC(Gold Titanium Compaund)ドライバーを採用していることが特徴。マイラー系の振動板の中央ドーム部をチタンで、周辺部をゴールドでコーティングしたハイブリッド振動板で、従来よりも柔らかい音色が出せるそうです。ちなみにGTCドライバーは高い精度が要求されるため日本製とのこと。

↑ 「Edition 15 Veritas」はプレートにアルミ合金を使い密閉式のため穴がなくなっている

 

↑GTCドライバーはセンターがチタン、その周辺は金色に輝く豪華な外見をしている

 

↑ヘッドホンケーブルの接続には医療グレードのLEMOコネクターが採用されている

 

ハウジングには密度の高いアメリカンチェリーウッドを採用。着色ではなくワックス仕上げにすることでエージングによる風合いの変化が楽しめます。イヤパッドはマグネット着脱式を採用、素材には柔らかい風合いのメリノシープスキンレザーです。同社独自のS-Logic EXとULEも採用されています。4月発売予定で実売価格は39万9980円前後と予想されます。

↑左が開放型の 「Edition 15」で右が密閉型の 「Edition 15 Veritas」。双子のようなデザインだ

 

【SPEC】●形式:密閉式ダイナミック型ヘッドホン ●インピーダンス:40Ω ●再生周波数帯域:5Hz〜48kHz ●マグネット:NdFeB ●出力音圧レベル:96dB ●重量:約314g(ケーブルを含まず) ●付属品:1.2m着脱式ケーブル、3.5mm/3極プラグ(LEMO)、3.0m着脱式ケーブル3.5mm/3極プラグ(LEMO)、6.3 mm変換プラグ、レザーハードケース、クリーニングクロス ●保証期間:2年 ●生産国:ドイツ

 

密閉型とは思えない広がり感となめらかな音色

「Edition 15 Veritas」の音は左右に広がり、密閉型とは思えない開放感にあふれています。通常、開放型のメリットは広い音場と明確な音像定位ですが、それと引き換えに低域の量感を出すのが難しくなります。また、音漏れの問題もあります。密閉型は音漏れの心配がなく遮音性が高いので、ヘッドホンが使えるシーンが増えるという利点も見逃せません。

 

「Edition 15 Veritas」はシャープな音像定位と広い空間表現ができて、S/N感に優れています。開放型と密閉型のいいとこ取りをできる限り実現したモデルなのです。女性ボーカルはなめらかで中域に厚みがあり、低域は量感を欲張らず、全帯域でのスピード感が揃っていました。奇をてらった音ではなく、正統派で飽きの来ない音作りのためEditionシリーズは長いあいだ、愛用するユーザーが多いのだろうと思いました。

↑ハイエンドらしく豪華なケースに収められている。バランス接続用ケーブルも付属して欲しいところ

 

静電型ツイーター採用の「SAPHIRE」

ULTRASONEはヘッドホンだけでなく2012年からイヤホンも製品化しています。SAPHIRE(サファイヤ)はハイエンドモデルで、静電型ツイーターとBA型のハイブリッドで4Way6ドライバー構成になっています。昨今の平面駆動型ブームで脚光を浴びたのが静電型です。平面駆動型の振動板はドーム型の振動板と比較して、振幅に歪みが少なく、情報量が多く音場感に優れるというメリットがあります。その反面、全体を均一に振幅させることが難しく、これを解決するために生まれた1つの方式が静電型です。

↑ハウジングは鮮やかなブルーのサンドブラスト、フェイスプレートはステンレススチールのミラーフィニッシュ、レーザー彫刻でULTRASONEの文字が入っている

 

静電気を帯びた非常に薄い振動板を左右から電極でサンドイッチしてプッシュプルで振幅させるという仕組みです。通常のダイナミック型と違い、常時、振動板にバイアス電圧を掛ける必要があり、専用アンプとの組み合わせが必須となります。しかし、イヤホンのツイーターの場合は振動板の面積が狭いため、自己バイアスと呼ばれる方式が使え専用アンプが不要になります。SAPHIREも自己バイアスを採用、超高域用の静電ドライバー2基、高域用BAドライバー1基、中域用1基、低域用2基を内蔵しています。専用アンプ不要なので、スマホやDAPに直接接続して音楽が楽しめます。

↑音の出るノズルは高域、中域、低域で独立していることが分かる

 

ハウジングには航空機グレードのアルミ合金を使い、アルマイト仕上げで「Edition7」のオマージュとしてカラーはブルーになっています。フェイスプレートはミラーフィニッシュのステンレススチールです。ケーブルは着脱式で2pin方式を採用。ケーブルの素材は6N OFCで2.5mmのバランス接続用と3.5mmのアンバランス用が付属しています。長さはどちらも1.2m。4月発売予定で実勢価格は39万9980円前後と予想されます。

↑2.5mmバランス接続用ケーブルはストレートタイプ。3.5mmは撚り線タイプとなる

 

【SPEC】●形式:密閉型 ●ドライバー:低域BA×2、中域BA×1、高域BA×1、超高域静電型×2 ●インピーダンス:25Ω ●音圧レベル:106dB ●質量:約15g ●付属品:着脱式ケーブル3.5mmプラグ、着脱式ケーブル2.5mmプラグ、スピンフィットイヤーチップCP145(S/M/L)、コンプラいフォームイヤーチップTx-400(S/M/L)、ハードレザーキャリーケース、クリーニングクロス、クリーニングツール ●保証期間:2年 ●生産国:ドイツ

 

バランス接続で緻密で繊細な世界を描き出す

マルチドライバーもモデル、しかも形式の異なるドライバーを採用したハイブリッド型で気になるのが音のつながりです。高域は粒立ちがよく繊細だが、低域はなめらかで厚みがあるでは違和感があります。「SAPHIRE」はそんな心配は微塵もなく、シングルドライバーのイヤホンを聞いているかのような鮮明で明確な音像定位が保たれ、高域から低域までスピード感の揃った音が再生されます。特にバランス接続にした場合は低域の解像度が上がり、楽器の音程がよく分かるようになりました。全体的に音の輪郭もクッキリします。こう書くと音の粒立ちを強調した硬い音を連想されるかもしれませんが、音色はやわらかで、女性ボーカルやアコーステックな楽器の音が心地良く聞こえます。静電型ツイーターはあくまでも味付けに使われているだけで、その存在を耳でハッキリとは認識できませんが、これはこれで贅沢な使い方と言えるでしょう。

↑付属品が収まるハードレザーのキャリングケースが付属する