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カメラ
2019/5/1 18:00

高級コンデジの代名詞、最強のスナップシューター……「GR III」、それは数々の異名をもつカメラ

新しい仕上がり調整機能「イメージコントロール」

写真の色鮮やかさやメリハリを調整する機能は、一般的には「仕上がり設定」と呼ばれている。文字通り、この絵作り機能の設定によって、写真の仕上がり具合や雰囲気は大きく変わるのである。

 

従来のGRシリーズでは、「画像設定」が仕上がり設定に相当する機能だった。また、それとは別に、特殊な作画効果が得られる「エフェクト」機能も搭載されていた。

 

今回のGR IIIでは、新たな画像調整機能として「イメージコントロール」が搭載された。これは「画像設定」と「エフェクト」を統合した機能である。スタンダード、ビビッド、モノトーン、ソフトモノトーン、ハードモノトーン、ハイコントラスト白黒、ポジフィルム調、ブリーチバイパス、レトロ、HDR調。この10種類のモードが基本になるが、各モードの彩度や色相やコントラストなどを細かく調整することも可能だ。

「ビビッド」で撮影。色鮮やかでメリハリのある仕上がりになるモード。公園内の植物や、青空などが鮮やかさに再現された/リコー GR III 絞り優先オート F8 1/320秒 WB:オート ISO200

 

「レトロ」で撮影。古い写真のような仕上がりになるモード。空の青色や門の朱色などの彩度が抑えられている。コントラストも低めで柔らかい印象を受ける/リコー GR III 絞り優先オート F8 1/200秒 -0.3補正 WB:オート ISO200

 

マクロモードの最短撮影距離が6cmに短縮

画角が広くて遠近感が強調される広角レンズでは、近くの被写体に肉薄することで、その被写体の存在感や印象が高められる。だから、どの距離までピントが合うかの“最短撮影距離”の数値が気になってくる。

 

GR IIIは、通常のモードで約10cm(被写体からレンズ先端までの距離。以降も同様)までピント合う。そして、マクロモードに切り換えると、約6cmまでピントが合うようになる(約12cm~6cmの範囲で)。ちなみに、前モデルのGR IIは、通常モードだと約30cmまで、マクロモードで約10cmまで(いずれも無限遠から)という数値だった。

<通常モードで撮影(約10cm)>

 

<マクロモードで撮影(約6cm)>

春の野原を彩るホトケノザの花。約6cmまで接近すると、広角レンズの画角でも“マクロ撮影らしい写真”になる。“約10cmまで”という値も、APS-Cサイズのカメラとしては立派だが、広角レンズでの4cmの差は、予想以上に大きな絵柄の差になる/共通データ:リコー GR III 絞り優先オート F2.8 WB:オート ISO100

 

夕暮れの都会の公園で見かけた菜の花の群生。そのなかの1本に注目して、マクロモードの最短近くで狙う。背後の点光源ボケが、夕暮れ時の雰囲気を伝えてくれる/リコー GR III 絞り優先オート F2.8 1/30秒 WB:オート ISO400

 

画角を変えられる2種類のクロップモード

レンズの開放F値が明るめで小型化もでき、画質面でも破綻が少なくて高画質。また、ズームレンズとは違って画角を変える手間がかからない。そういった点が、単焦点レンズの特徴である。リコーGRシリーズのカメラがスナップ派カメラマン向きである理由はそんな所にある。

 

とはいえ、被写体や撮影状況によっては、28mm相当ではなく「もう少し狭い画角で、被写体を大きく写したい」と思うこともあるだろう。そんな時には「クロップモード」機能が有効だ。2400万画素クラスのイメージセンサーの周辺部をカットして、内側部分の映像が記録される機能である。設定できるクロップの画角は、35mm相当と50mm相当の2種類。

 

当然、クロップ設定時には記録画素数が減少する。35mm相当では約1500万画素、50mm相当では約700万画素になる。この画素数をどう評価するかは、人によって違うだろう。個人的には、1000万画素を下回るのは少し抵抗を感じるが、1500万画素確保できる35mmクロップは「積極的に使ってみたい」と感じる。

<28mm相当で撮影>

 

<35mm相当で撮影>

 

<50mm相当で撮影>

共通データ:リコー GR III 絞り優先オート F8 1/640秒 +0.3補正 WB:オート ISO200

 

“GRイズム”を保ちながら着実に進化

プロユースにも堪え得る高画質。一瞬を切り取るスナップに最適な、直感的に操作できる小型軽量ボディ。それが歴代GRシリーズ(フィルムカメラ時代も含めて)の基本コンセプトである。モデルチェンジは最小限に抑え、ファームウェアのアップデートで機能や操作性の完成度を高める。また、モデルチェンジをしても、外観や操作性は極力変えない。そのあたりが、他のコンパクトカメラとは違う“GRイズム”である。

 

もちろん、モデルチェンジの際には、前述のようなコンセプトを守りつつ、新機能の搭載や操作性の変更などが行われている。今回の「GR III」では、タッチパネル機能、センサーシフト式手ブレ補正機構、ハイブリッド方式のAFシステムなどがそれにあたる。

 

また、レンズ一体型のカメラではあるが、撮像センサー前面の光学部材に超音波振動を加えてホコリなどを除去するDR II(Dust Removal II)が新たに搭載されている。こういった点も、安心感を高めてくれる重要な要素である(レンズ交換がなくても、長期間の使用でホコリが混入する恐れはあるので)。

 

GR IIIは長年培われたGRイズムを継承しつつ、着実に進化を遂げたモデルといえるだえろう。

↑内蔵フラッシュ非搭載で、よりコンパクトになったリコー GR III。だが、基本的な撮影機能や仕様はより充実し、高画質化に向けての取り組みも進歩している

 

リコー

GRⅢ

実売価格11万7090円

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