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2019/8/5 21:30

ソニーならではの“ノイズキャンセリング”が進化! 完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」徹底レビュー

ソニーが発売した、アクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載する話題の完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」を飛行機や地下鉄の中など騒音に囲まれる場所で使いながら実力を確認してみました。ノイズキャンセリング機能の効果や音質、気になる多彩な機能もまとめてレポートします。

↑ソニーの完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」/実売価格2万7950円

 

本機はソニーが2017年に発売したアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000X」の後継モデルです。1000Xはソニーのポータブルヘッドホン・イヤホンのプレミアムクラスに位置付けられるシリーズですが、いま流行の完全ワイヤレスイヤホンの新製品が約2年ぶりに誕生しました。進化したポイントは枚挙に暇がないほどありますが、そのなかから重要なものをピックアップしてみます。

 

本機専用の高性能ノイキャンICチップを内蔵

WF-1000XM3には、ソニーが独自に開発した高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN1e」が搭載されたことで、消音性能と音質が一段とパワーアップしています。これは、2018年に発売されたヘッドホン「WH-1000XM3」に搭載されている「QN1」プロセッサーを、本機に載せるために最適化したもの。イヤホンに搭載する2種類のマイクで環境音を集めて、ノイズ成分だけを高精度に消去するノイズキャンセリング機能と、BluetoothオーディオレシーバーのICチップが受けたデジタル音楽信号を、アナログ音声信号に変換してアンプで増幅する段階を、このQN1eが受け持っています。24bitの高精度なデジタル処理を行うため、音の歪みが少なくとてもクリアな音質を実現した点が特徴です。

↑本体は少し大きめに見えますが、装着してしまえば重さを感じることはありません

 

↑イヤホンを外したノズル部分。耳穴に挿入しやすいようにデザインされています

 

WF-1000XM3には、ソニーの完全ワイヤレスイヤホンとして初めて圧縮された音源を最大96kHz/24bitの“ハイレゾ相当”のいい音にアップスケーリングする「DSEE HX」が搭載されました。このアップスケーリング処理とQN1eによる高性能なノイズキャンセリング機能により、とても静かな環境でハイレゾ相当のワイヤレス音楽リスニングを楽しめるようになったことが最大の魅力ではないでしょうか。

 

接続性能はかなり安定している

WF-1000Xから、Bluetoothオーディオ信号の伝送性能も大幅に改善されました。音楽再生中の音切れやノイズの発生を防ぐために、ソニーはBluetoothオーディオ用のICチップを開発する半導体メーカーと組んで、WF-1000XM3に新開発のICチップを載せています。音楽信号を左右のイヤホンへ同時に送り届ける仕組みを備えた新チップが、アンテナ構造を見直したことと相俟って、信号伝送の品質をいっそう高めています。筆者が試した限り、音切れについてはWF-1000Xよりも明らかなレベルアップと安定性の向上が感じられました。

 

連続して音楽が聴ける内蔵バッテリーのスタミナは、WF-1000Xの約3時間に対してWF-1000XM3では2倍の約6時間に伸びています。充電ケースでチャージすれば合計24時間に。仮にバッテリーが空の状態になっていても、10分の充電で約90分の音楽再生が楽しめるようになる急速充電機能が付いています。あとはアップルの新しい「AirPods」などに対応が広がるワイヤレス充電もぜひサポートしてほしかったと思います。

 

イヤホンの左右側面がタッチセンサー方式のリモコンになりました。代わりにイヤホン本体にはボタンが一切ありません。左側がノイズキャンセリングや外音取り込みのモードを切り替えるためのセンサーボタンになっていますが、長押ししている間は「クイックアテンション(外音一時取り込み)」が起動するので、イヤホンを身につけたまま外の音が聞けて便利です。

↑側面の円形のパネルがタッチセンサーリモコンになっています

 

ほかにもハンズフリー通話は片耳単独、または両耳で音を聞くスタイルが選べるようになっています。

 

ハイレゾ相当の音質を楽しめるがLDACには非対応

WF-1000Xから変わらなかったところもあります。ひとつはBluetooth接続環境でハイレゾ相当の高品位なワイヤレスオーディオ再生が楽しめるようになるソニー独自のコーデック、LDACには対応せず、AAC/SBCまでに止めたことです。残念にも思いますが、ユーザー体験を高めるためにはワイヤレス接続の安定性を高めることの方を優先したうえでの開発者の決断であれば致し方ないと思います。今回はDSEE HXも搭載されているので、筆者は特にLDACに対応していないことがこのイヤホンのマイナスポイントだとは思いません。

 

WF-1000Xが発売された当時は充電ケースの大きさに驚いたものですが、新しいWF-1000XM3の充電ケースは形状こそ持ちやすくなったものの、相変わらずサイズは少し大きめです。男性の手荷物の中には気にならない程度に紛れる大きさかもしれませんが、女性の小さなバッグに入るとかなりのスペースがイヤホンに占有される感じがしてしまいそうです。

↑ケースはWF-1000Xから形状が変わって持ちやすくなりました。サイズは少し大きめ

 

↑イヤホンもケースの中にマグネットで吸着され、簡単に着脱ができます

 

↑充電ケーブルはUSB Type-Cを採用

 

WF-1000XM3は防滴・防汗対応モデルではありません。濡れてもすぐに水分を拭き取れば壊れる心配はなさそうですが、汗をかくスポーツシーンや、雨の日に傘をささずに使うことはできるだけ避けた方がよいでしょう。

 

音質に一段と磨きがかかった。DSEE HXの効果は?

iPhone X、Google Pixel 3 XLに接続して音質をチェックしました。ペアリングした後にイコライザーを含む各機能の設定を行うモバイルアプリ「Sony Headphones Connect」を開くと、ホーム画面に現在スマホとイヤホンが接続されているコーデックやDSEE HXの状態がアイコンで表示されます。

↑iPhone Xと組み合わせて音楽を聴いてみました

 

プレミアムモデルであるWF-1000XのDNAを継承する、ディティールの表現力に富んだバランスの良いサウンドに仕上がっています。

 

特に中低域の厚みがスケールアップしました。ボーカルがとても立体的に張り出して聞こえます。上品で繊細な印象だったWF-1000Xに対して、新製品であるWF-1000XM3のサウンドはより大胆に生の音楽に迫るリアリティを、明るくエネルギッシュな音に込めて伝えてきます。そのうえ音のバランスに不自然な強調感がないので、飛行機に乗って長時間リスニングした後にも疲れを感じることはありませんでした。筆者はあまり使いませんが、ハイトーンの抜け味をもっと良くしたり、低音再生を盛りたい時などにはアプリに搭載されているイコライザー機能も役にたちそうです。

 

DSEE HXはオンに切り替えると音楽の情報量に明らかな厚みが加わります。特にボーカルの声の質感がリッチになり、低音も軽やかに弾むようになります。デフォルトはオンの状態ですが、敢えてオフにする理由もないように感じました。

↑外音コントロールやイコライザーなど多くの機能を「Sony Headphones Connect」アプリから選択・設定できます

 

イヤーピースはシリコンタイプの「ハイブリッドイヤーピース(SS/S/M/L)」と、フォームタイプの「トリプルコンフォートイヤーピース(S/M/L)」が贅沢に同梱されています。イヤーピースの素材に起因する音質への影響についてはさほど感じませんが、耳に挿入した時のフィット感には少なからぬ違いがあります。WF-1000XM3は正しいポジションで身につけることによって、音の聞こえ方やノイズキャンセリング機能の体感が繊細に変化するイヤホンです。

↑2種類のイヤーピースが付属します

 

↑左側がトリプルコンフォートイヤーピース、右側がロングタイプのハイブリッドイヤーピース

 

筆者はふだんイヤホンに同梱されている「Mサイズ」のイヤーチップをメインに選ぶことが多くあります。でもWF-1000XM3については「L」サイズのハイブイリッドイヤーピースが最も遮音性と装着感の心地よさが好バランスでした。イヤホンを耳に軽く挿入してから、少しずつ回転させて耳の奥へ押し込むと、低音の漏れがなく引き締まった音を楽しむことができます。ソニーがYouTubeで公開しているWF-1000XM3の装着解説動画(https://www.youtube.com/watch?v=7Y3IcseI8t4)がとても参考になるので、WF-1000XM3の音質やノイズキャンセリング性能が万一、期待と異なって感じる場合はぜひ試してみてください。

 

自然なノイズキャンセリング効果

続いてWF-1000XM3を飛行機の中で使ってみた時のノイズキャンセリング機能の手応えも紹介します。

↑飛行機の機内でノイズキャンセリング性能も確認しました

 

専用アプリから、WF-1000XM3が搭載する「外音取り込み機能」のノイズキャンセリング機能のオン・オフを選択できます。外音取り込みは1~20まで1ステップずつ細かく調整できます。騒々しい場所ではノイズキャンセリング機能は「オン」の状態が通常になろうかと思います。

 

ソニーは音楽再生のパフォーマンスを最大化するために、ノイズキャンセリングの自然なかかり具合にこだわって1000Xシリーズをチューニングしてきました。飛行機の低いエンジン音と甲高い風切りノイズ、周囲でざわつく人の声など「ノイズ」だけをバランスよく綺麗に消してくれます。iPadに保存して機内に持ち込んだ映画・ドラマのダイアローグも無難に聴き取れます。

 

イヤホンなので、ノイズキャンセリング機能をオンにしてしまうとヘッドホンよりも耳穴を締め付けるような圧迫感が強くないのか気になっていましたが、実機で試してみると思いのほか違和感が少なくて好印象でした。

 

反対に、ソニーのノイズキャンセリングヘッドホンのWH-1000XM3に比べると消音効果はやや穏やかだと思います。地下鉄の中など、場合によっては飛行機よりも騒音が多い場所で本機を頻繁に使うのであれば、ノイズキャンセリング機能はもっと強めでも良いかもしれません。理想を言えば1000XM3シリーズのヘッドホンとイヤホンを両方手に入れて、音楽を聴くシチュエーションに合わせて上手に使いわけたいと思いました。

 

イヤホンを身に着けたまま機内アナウンス、キャビンアテンダントと会話するために外の音を聞きたい場合にはクイックアテンション機能が役に立ちました。また一時的に片側のイヤホンを外すと、音楽再生が自動で一時停止・再生する機能をアプリからオンにしておくと、動画再生の際にとっさの対応ができてよかったです。

 

今回は片道約11時間の日本からヨーロッパへの旅でしたが、長時間使い続けても充電ケースのバッテリーまで切れる心配はまずありません。最近はエコノミー席でも機内でUSB電源によるデジタル機器の充電ができるのでなおさらです。

 

納得の高性能。小型モデルもほしい

WF-1000XM3は新しい1000Xシリーズの顔になりそうな完成度の高い完全ワイヤレスイヤホンです。ソニーらしい高音質と最先端技術を、よくぞこの手のひらサイズのイヤホンに詰め込んだものだと関心することばかりでした。

 

一方では、モバイルアプリとの連携機能などには一部、あまり使う機会がなさそうなものも載っていたりします。これらを削って、ノイズキャンセリングと音質にキャラクターを特化させながらイヤホン本体やケースをもっと小さくした兄弟機が出てきても、ほしいと感じるユーザーが沢山いるように思います。そして防水・防滴対応はぜひ次回以降のモデルで積極的に実現してもらいたいです。

 

WF-1000XM3はオーディオ機器として、あるいはコミュニケーション機器としての完全ワイヤレスイヤホンの将来に今後ますます豊かな可能性があることを期待させてくれます。購入を検討中の方、あるいはその予定は今のところないという方も、ぜひ一度試聴してみてほしい製品です。

 

 

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