AV
カメラ
2019/9/23 18:00

キヤノン「PowerShot G7 X Mark III」を「VLOGでの使用」を想定してレビューしてみた

キヤノンのコンパクトデジタルカメラ「PowerShot」シリーズから「PowerShot G5 X Mark II」「PowerShot G7 X Mark III」が発売された。ポップアップ式ファインダー搭載のG5 X Mark IIは純粋に写真を楽しむことに重点を置かれているような印象だが、G7 X Mark IIIは動画撮影に関連する機能向上が目立つ。今回はG7 X Mark IIIをVLOGなどで使用する場合を想定しながらレビューしてみた。

↑2019年8月発売のPowerShot G7 X Mark III。実売価格は税別9万2500円

 

【基本スペックをおさらい】180度チルト液晶や外部マイク端子を搭載

まずは基本的な部分。新しい1型の積層型CMOSセンサーと映像エンジンDIGIC8を搭載し、従来よりも高画質・高性能としている。焦点距離は35mm判換算で24〜100mm(光学4.2倍ズーム)、開放F値は広角端でF1.8、望遠端でF2.8と明るいレンズを搭載。さらにプログレッシブファインズームで200mm相当(約8.4倍)までのズーム撮影が可能となる。

 

まず注目したいのがグリップ。特に親指位置の形状が引っかかりやすく、小さなボディではあるがわりとしっかりホールドできる。

↑大きさは約105.0×60.9×41.4mm、重さは約304gと小型軽量

 

↑本機にはWi-Fi機能が搭載されており、無線接続でスマートフォンなどに接続が可能。撮影データの閲覧やデータ移動、リモコン操作などの各種操作が行える

 

背面液晶はチルト式。下方向は45度傾き、ちょっとしたハイアングル撮影には十分だ。上方向には180度くるっと回り、自撮りの際にもそのまま画面で確認しながら撮影できる。

↑3.0型、約104万ドットの背面液晶を搭載。自撮りもラクラク

 

動画の撮影で重要なのは映像だけではない。本体上部のマイクだけでも十分に音声は拾えるが、左側面にはステレオミニジャックのマイク端子が搭載されている。屋外の撮影で風切音が気になる場面や、賑やかな場所で自分の声をクリアに収録したいような場面では外部マイクを使用したい。コンパクトデジタルカメラで外部マイク端子が搭載されている機種は少ないので、音質にもこだわりたい方には嬉しいだろう。

↑ステレオミニジャックのマイク端子を搭載

 

ただし本体にアクセサリーシューがないので、別途L型ブラケットなどを用意する必要がある。折角コンパクトなのに大袈裟な装備になってしまうのは残念だが、バリアングル液晶ではないので上部にホットシューがあったところで自撮りでは使用できない。自分の声をハッキリ収録するためにラベリアマイクを使用するには有効だろう。

 

トレンドの「縦位置動画」にも対応

それでは実際に動画の作例を見ながら機能を見ていこう。

本機ではPowerShot Gシリーズ初となる4K動画撮影にも対応。しかも4K動画でもクロップなしで撮影できるので、広角端の広い視野を活かすことができる。

 

とはいえ、24mm相当なので自撮りで使用するには若干圧迫感を感じる。腕を思いっきり伸ばせばそれなりにワイド感が出るが、楽な姿勢で持ってみると思ったよりも顔が大写しになってしまった。ミニ三脚やグリップなどを使用してちょっとだけ距離を稼いだほうが、より安定して適度な距離感で撮影できるだろう。

 

また、5軸の手ブレ補正に対応しており、3軸方向の回転と上下左右の移動を検知し補正してくれる。ただカメラ自体が軽いので、移動しながら撮影する際などは適度に意識して歩かないと完璧ではない。自動水平補正である程度は水平をキープしてくれるので、カメラをホールドしにくいローアングルやハイアングル撮影時などにもサポートしてくれそうだ。

 

4Kで撮影した動画から任意のフレームを静止画として切り出す「4Kフレーム切り出し」もカメラ操作のみで行える。サムネイル作りなどで使えるかもしれない。

 

従来動画撮影は16:9の横長が基本である、スマートフォンで再生する際には横に向けて90度回転して表示する。しかし特に若い世代では写真も動画もスマートフォンを縦に持ったまま撮影するほうが一般的になってきている。スマートフォンでそのまま縦位置で撮影し、動画投稿サービスもスマートフォンで見るので縦長動画のほうが都合がいい。そうしたトレンドを受けてか、本機ではカメラを縦に持って撮影した動画内には縦位置情報が付加される。そのままスマートフォンやタブレットなどで再生しても自動的に縦画面で再生してくれるのだ(上の動画の35秒~)。

 

明暗差の激しいシーンでの白飛びを抑える「HDR動画モード」も試してみたが、比較してみると全体的に暗くなる印象で、今回の検証したシーンでは明部だけが抑えられる感じはあまりしなかった(上の動画の55秒~)。

 

また短い動画を手軽に編集できる「ビデオスナップ」機能も搭載。その際には撮影秒数を4秒/6秒/8秒から選択することになるのだが、解像度はフルHD(30p)に固定され変更できないので注意が必要だ。

 

インターバル撮影された静止画を1本の動画としてつなぎ合わせる「タイムラプス動画」も、従来機種のフルHD画質から新たに4K画質に対応。難しい設定を必要とせず、シーンを選ぶだけの簡単操作で独特な表現が可能だ。もちろん撮影間隔や回数をマニュアルで設定することも可能。今回は雲の動きを撮影したが、露出は自動にしてしまうとパカパカと明るさの変わるチラついた映像になってしまうので、最初の1枚に固定するように設定した(上の動画の1分19秒~)。

 

フルHDでは120pのハイフレームレートで撮影することもできる。30pで使用すると1/4倍速のスローモーションということだ。ハナムグリの飛び立つカットはマニュアルフォーカスで最近接にフォーカスを固定しておき、録画をスタートさせてからカメラをグッと近づけて撮影した。オートフォーカスを待っているとこういった瞬間を記録するのは難しい(上の動画の1分29秒~)。

 

照明などは使用ぜずに、夜の散歩でも試してみた。街灯の明かり程度であれば十分使えそうだ(上の動画の1分41秒~)。

 

YouTubeでライブ配信することができる

無線LANルーターやアクセスポイントにダイレクトに接続し、撮影している映像をYouTubeでライブ配信することができるのも、本機の特徴。まず最初の設定に少し手間がかかるので、パソコンやYouTubeのサービスに詳しくない方にはちょっと難しいかもしれない。

↑YouTubeのライブ配信を行うには、最初の設定に少し手間がかかる

 

実際に試してみたのだが、手間の割にできることは至って普通のライブ配信。確かに映像は綺麗なのかもしれないが、これならスマートフォンで直接配信してしまったほうがよっぽど手軽だ。カメラを見ながらだとコメントなども確認できないので、メインの配信カメラとして使うのにはちょっと疑問を感じる。

 

別売のUSB電源アダプター「PDーE1」を使用すれば給電しながらの長時間使用ができる。定点カメラのような使い方をするのならばアリかもしれない(上の動画の1分1秒~)。

 

また、自撮りの動画撮影時に嬉しいのが、モニター画面内にも動画記録ボタンがあり、自撮りの際に背面の操作スイッチを手探りで操作する必要がなく、画面のタッチで録画の開始/停止が行えること。録画中も画面表示で確認でき、何らかの理由で記録が停止してしまった場合でも画面に通知が表示されるので安心だ。「あー撮れてなかった!」なんて失敗も少なくなるだろう(YouTuberあるあるネタ)(上の動画の1分40秒~)。

 

次に操作性について。タッチパネルの操作はEOS風のユーザーインターフェイスとなり、他のEOSユーザーにとっては違和感なく操作ができる(上の動画の1分56秒~)。

 

マニュアル操作も良好で、右手親指で操作するコントローラーリングと、レンズの付け根にあって左手で操作するコントローラーホイール、それとカメラ上部にある露出補正ダイヤルで操作する。シャッタースピードと絞りをそれぞれのダイヤルで操作でき、素早い露出調節が可能だ(上の動画の2分8秒~)。

 

SNSへの動画投稿をワンランク上のものに

PowerShot G7 X Mark IIIについて総括すると、普段からEOSを使用しているので、まず操作系は違和感なくなかなか使いやすかった。

 

ただオートフォーカスの効きがあまり良くないように感じた。顔を認識していながらもなかなか顔にフォーカスが合ってくれないこともあったので、タッチ操作でフォーカスを合わせてあげたほうが確実だ。しかしこのサイズであれば日常的に使用するには必要十分。普段レンズ交換式カメラを使用している方でもサブカメラとしても活躍できるだろう。

 

いつでも持ち歩き、撮りたい時にサッと撮れる。

 

外部マイクで声もしっかり収録できる。

 

スマートフォンからのステップアップとして、SNSへの動画投稿をワンランク上のものにしてくれそうだ。