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ヘッドホン
2019/11/12 17:30

ヘッドホン好き必見! マニア垂涎の「レア機」を集めた2019秋冬コレクション【ヘッドホン編】

今年も「秋のヘッドフォン祭2019」が11月2日、3日の2日間にわたって中野サンプラザで開催されました。200ブランド以上のヘッドホン、イヤホン、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)などが展示されるだけでなく、新製品発表会や世界初披露の製品なども登場して、国際的なイベントに成長しています。

 

今回は、これから発売される新製品を中心に、実際に音を聞いて気になった製品をピックアップ。今回はヘッドホン編をお届けします。

 

Spirit Torinoから限定モデル「Torino 1706 Special Edition」登場

イタリアンデザインに身を包み、Twin Pulseと呼ばれるパッシブラジエータを2発搭載したヘッドホン「The Radiante」を開発したメーカーが、Split Torinoです。今回の発表会ではCEO兼主任エンジニアのアンドレア・リッチ氏が登壇して自らの設計思想を語りました。

↑アンドレア・リッチ氏が来日、自ら説明をおこないました

 

なぜ密閉式とパッシブラジエータを組み合わせたのでしょうか。その答えは密閉式ヘッドホンを開放型のよう鳴らしたかったから。開放式と違って密閉式のヘッドホンは、大音量再生時にドライバーに背圧がかかり低音の能率が下がってしまいます。そこでリッチ氏は、パッシブラジエータを使ってドライバーの背圧を再生音量に左右されず安定化しています。さらに音楽のジャンルによって低域を+2dB増強できる仕組みも搭載。クラシックはフラットで、ロックは+2dBを推奨するそうです。

↑音量の影響を受けずにパッシブラジエータが常にドライバーを安定して駆動させます

 

限定モデルは1706年に勃発したトリノの戦いにおいて、トンネルを爆破して自らも犠牲になった街の英雄、ピエトロ・ミッカに捧げられました。イヤーカップには当時のトリノ市街の地図がデザインされています。通常ラインナップの「The Radiante」(32万円)に加えて限定モデルの「Torino 1706 Special Edition」(35万円)が登場。どちらも受注生産でヘッドバンド、イヤーカップの色(Radianteに限る)を選択できます。さらにケーブル端子も4.4mmのバランスから、3.5mmのアンバランスまで好みのタイプを選択できます。

↑「Torino 1706 Special Edition」はイヤーカップにトリノ市の地図をデザイン化

 

バイノーラル録音されたライブコンサートの楽曲を再生してみると、音が非常に近く、鮮明で細かい響きまで伝わってきます。低音は低い方まで沈み込みますが、濁ることなく中高域と同じように明確に聞こえます。かといって低音が痩せることはなく、Skullcandy「Crusher ANC」のウーハーの低音の解像度を高めた感じの量感がありました。アルカンターラと革を使ったイヤーパッドのフィット感も素晴らしくさすが高級モデルと思わせてくれました。

 

【ギャラリー(GetNavi webでご覧いただけます)】

 

クラウドファンディングで376%目標調達!

世界初のリボン型ヘッドホン「SR1a」(予想実勢価格約44万9000円)はクラウドファンディングMakuakeにおいて目標金額の376%を集めてプロジェクトを終了。その人気のため引き続き輸入元のエミライから販売されることが決まりました。

↑「SR1a」はドライカーボンとステンレス合金製のデザインも斬新

 

リボン型は、静電型のような極薄リボン振動板をダイナミック型のような方式で動かすユニークな平面型駆動型ヘッドホンです。歪みが少なく、情報量が多い、ハイスピードな音が楽しめます。ワイドレンジで音場感の再現にも優れています。その反面、インピーダンスが低くパワーが必要なため、専用のアダプターを使って、パワーアンプかプリメインアンプに接続する必要があります。

↑パワーアンプとスピーカーケーブルを使いアダプター経由でヘッドホンに接続

 

ヘッドバンドの上部で頭を挟んでハウジングは耳に密着しない装着方法は、重いのが常識だった平面型のイメージを打ち破るもので、どんなヘッドホンよりも開放感があります。ちなみに重量は425gです。ハウジングは左右に可動式で、開く角度によって音場感が変わります。その音はダイナミック型の深々と沈み込む重低音と静電型の繊細で透明感があって抜けるような高音をいいとこ取りしたもので、特に艶やかに歌う女性ボーカルや男性ボーカルの力強さにハッとさせられました。他のどのヘッドホンとも違う独自の音の世界、機会があればぜひ聞いてみて欲しいモデルです。

 

超高域90kHzまで伸びた静電型HiFiMAN「JADE II」

平面駆動型の老舗であるHiFiMANから、春のヘッドフォン祭で参考出品されていた静電型「JADE II」の正式販売が決まりました。実勢価格は24万3000円と専用アンプ込みと考えるとかなりのハイコスパです。再生周波数帯域は7Hz〜90kHzと超ワイドレンジで、怪しく輝く振動板が透けて見える本体は重さ365gと軽量に仕上がっています。

↑「JADE II」は専用アンプとのペアなので安心して鳴らせます

 

楕円形の大型のイヤーパッドが耳を包み込むようにホールドしてくれ、側圧は弱め快適です。静電型らしいフワッとした空気感、音色はウォームで低音は伸びています。繊細な音が再現され、さすが平面型と思わせてくれました。付属アンプは2系統の出力があり、USB入力に対応します。重さは11kgもあり高級感が漂います。

↑光によって色が変化する振動板が見えます

 

同じくHiFiMANからは、Bluetooth対応の平面駆動型ヘッドホン「ANANDA-BT」が登場。コーデックは高音質なaptX HD、HWA、LDACが使え、さらにUSB-C端子で有線接続もできます。重量は460g、連続再生時間は10時間でゲーミング用のマイクも接続可能。予想実勢価格約10万円とのことです。

↑Bluetooth対応の平面駆動型ヘッドホン「ANANDA-BT」。平面駆動型にもワイヤレスの波が訪れました

 

やや硬質ですがクッキリとした粒立ちのいい音で、クリアで透明感があります。第二世代のヘッドバンドが採用され装着感もよく快適でした。

 

B&WとDALIからもノイズキャンセリング機能付きBluetooth対応モデルが登場

ハイエンドスピーカーでお馴染みのBowers & Wilkinsから、オーバーヘッド型の「PX7」(予想実勢価格約6万円)とオンイヤー型の「RX5」(予想実勢価格約5万円)が11月末を目標に登場予定。どちらもAAC、aptX、aptX HD、aptX Adaptiveに対応して、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載します。

↑オーバーヘッド型の B&W「PX7」

 

↑オンイヤー型の B&W「RX5」

 

その音はB&Wはクリアでクッキリした音でやや硬質なのに対して、DALIは低域の量感たっぷりでウォームな音色とスピーカーの個性をそのまま引き継いだかのような音でした。

 

ハイコスパなスピーカーで世界中にファンがいるDALIからもノイズキャンセリング機能付きの「iO-6」(予想実勢価格約5万5000円)とナシの「iO-4」(予想実勢価格約4万3000円)が発売される予定。

↑DALI「iO-6」

 

↑DALI「iO-4」

 

自作、平面駆動ヘッドホン「水面」が新設計アルミ切削ハウジングに変身

ヘッドフォン祭で活動を続けるユーザーグループ「Music with 規格外」で、平面駆動型ヘッドホンの自作を続けるKeiさんの新作は、何とアルミ削り出しハウジングに収まった円形ボイスコイルの新作。振動板も和紙からポリプロピレンに変更してシングル駆動を採用しています。アルミ削り出しハウジングはコストが掛かりそうですが、中国に発注したのでしょうか? エッ、CNCフライス(コンピュータ制御装置を持つ切削加工機)を買った!? 大きくて、うるさくて、高価なのに、趣味の範囲を超えた気合いの入りようです。

↑デザインは同じだがハウジングが木製から金属製に変更されて印象も重さも激変!

 

指が切れそうなほどエッジの立った重量級のハウジングを装着してみると重いのですが、柔らかいイヤーパッドのおかげで違和感はありません。振動板の両側から棒状のマグネットで挟み込んでいた従来のプッシュプル方式よりも、円形のコイルを採用して片面だけにマグネットがあるシングル方式の能率面で不利だと思ったのですが、こちらの方が大音量再生ができて低域も伸びていました。音色はウォームでなめらか。空気感よりも音の厚みが感じられました。

↑半年間の試作から生まれたという新平面駆動ドライバーユニット

 

遂に静電型も自作が登場! 湊屋「震電」はヘッドホンコンテスト2位の実力派

「Music with 規格外」に展示されたもう1台の平面駆動式ヘッドホン「震電」は、なんと“静電型”でした。作った湊屋さんは大学4年生で、静電型ヘッドホンの基板のキットや作り方の同人誌などを発行するなど積極的な活動をおこなっています。今回、製作した「震電」をベースに自作した「震電改」はフォスター電機とフジヤエービックが開催した第1回「イヤホン・ヘッドホン自作コンテスト」のヘッドホン部門で2位になった完成度を誇ります。ちなみに1位は「Music with 規格外」の主催者が製作した「アベンジャーズ」でした。

↑ハウジングは6角形にリブが入った軽量な樹脂製、ネックバンドはアルミ合金

 

2日目に届いた専用の真空管アンプに接続して聞いてみると、1日目よりも高音質に変身していました。中域に厚みがある音で、静電型らしい左右の広がり感、音の粒立ちのよさもあります。振動板にはレスキューシートを使っているという話ですが、それでもこんなにいい音が出せるのかと驚きました。電極は基板を起こして、ハウジングは樹脂製のものを外注するなどの工夫で、完成度の高いヘッドホンになっていました。次回はヘッドバンド周りを改良して欲しいところ。あと真空管アンプ制作者のお話しも聞きたいですね。

 

【ギャラリー(GetNavi webでご覧いただけます)】

 

力作揃いのヘッドホン分野ですが、イヤホンの方にも見逃せない新作がたくさんありましたので、次回はイヤホン編としてお届けします。お楽しみに!