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2020/5/26 18:00

ハンダ付け不要! 手軽に作れる真空管式ヘッドホンアンプKORG「Nu:tekt HA-S」

ステイホームでも室内で過ごす時間が増えたいまこそ、自宅で簡単に工作できるヘッドホンアンプ制作に挑戦してみませんか。「ハンダ付けは敷居が高い」という方へ、ドライバーとレンチがあれば30分で組み立て可能な「Nu:tekt HA-S」キットをご紹介します。電池で動作する真空管を使ったユニークなアンプで、キットでしか手に入りません。

↑真空管の音がモバイル環境でも楽しめる電池駆動のヘッドホンアンプキットです

 

次世代真空管Nutubeを搭載

音だけでなくほのかに光るガラス管が魅力の真空管アンプは、動作させるには数百ボルトの電圧が必要で、プリント基板を使わないディスクリート回路のキットが多いとビギナーには手の出しにくい面がありました。さらに電池駆動のモバイル用のヘッドホンアンプに真空管を搭載することは困難とされていたのです。

 

これらの問題を解決したのがNutubeという次世代真空管です。これは、オーディオメーカーのKORGとノリタケ伊勢電子のコラボによって開発されたもの。もともとは蛍光表示管だったものをオーディオ用に改良して倍音成分が豊かな直熱型双三極管として働くように製品化されました。

 

従来の真空管の2%以下の電力しか消費せず、5Vから80Vで動作するため電池駆動に対応、連続使用時間は3万時間以上と長寿命。見た目はLEDのようですが中身は立派な真空管。Nutubeは通常パーツとして販売されています。これを使った製品にポータブルプレーヤー「Cayin N8」があり、38万8800円と非常に高価なハインエンドモデルとなっています。「Nu:tekt HA-S」はキットということで税込2万7500円で入手可能。

↑白いパッケージにミント缶サイズのケースとパーツが収まっています

 

↑必要な工具はプラスドライバーNo.0とNo.1に、マイナスドライバー2.4mm、10mmのレンチを揃えましょう

 

撮影しながら組み立てても45分で完成

「Nu:tekt HA-S」は基板にすべての部品が実装済みなので、基本はネジ止めだけで完成します。撮影しながら作って45分だったので、ビギナーの方が慎重に作っても30分、慣れた方なら15分ぐらいで完成できると思います。

 

箱を開けたら最初にすべてのパーツを取り出して、説明書にあるパーツリストと見比べて欠品がないかをチェックしましょう。ネジ類は小さいので無くさないように小皿に乗せるか、口が閉まるジップロックなどのプラスチックバッグに収納します。

↑説明書にある2つのパーツリストで部品が揃っているかを調べます

 

Nutubeの真空管は衝撃に弱く物理的には壊れませんが、振動がノイズの原因になるためスポンジで周囲をカバーしてメイン基板にスポンジ付き両面テープで固定します。メイン基板に固定用のネジを締め込んで、缶ケースに収め裏側から2本のネジで固定します。

↑ Nutubeのユニットの周りをスポンジで保護します

 

↑メイン基板との接続端子の部分は開けておきます

 

↑専用ケーブルハーネスを使って接続します、両面テープでNutubeを固定します

 

↑六角スペーサーに内歯ワッシャーを挟んで基板に固定します

 

↑ソケットドライバーで締めたくなりますがトルクをかけ過ぎないように固定します

 

メイン基板をケースに収めたらほぼ完成!

メイン基板を滑らせるようにして、ボリューム用の穴のある方に向けて収めたら、絶縁用のシートを両面テープで缶ケースの底に固定します。端子の位置を確かめたら、裏側からナベ頭ネジでメイン基板をネジで止めましょう。ボリュームはワッシャ−を挟んで10mmのレンチでナットを締め込みます。レンチがなければラジオペンチか手で締めることも可能。

↑絶縁シートを貼ったら、メイン基板を斜めに滑らせて穴に合わせて缶ケースに入れます

 

↑イヤホンジャックの位置を缶ケースの穴と合わせて、裏側からメイン基板をネジ止めします

 

次にボリュームノブを固定しましょう。この時、イモネジを締めるためにマイナスの精密ドライバーが必要です。これは代用品がないため必ず用意しましょう。フタの裏に電池抑え用のスポンジを貼って、ローレットネジを手で締め込んだら完成です。フタはアクリル製でネジをドライバーで締め込むと割れる可能性があるので、手で回すだけで充分です。

↑まずワッシャーを挟んでからナットを回してボリュームを固定します

 

↑ボリュームノブは側面にあるイモネジを緩めてから差し込んでネジを締めます

 

↑アクリルのフタの裏側にスポンジの両面テープを剥がして貼り付けます

 

↑完成しました。電池は別売でアルカリ乾電池が指定されています

 

↑裏側に定格ラベルとゴム足を貼るのを忘れずに

 

NFBのON、OFFで音の違いを確かめよう

「Nu:tekt HA-S」のいい所は、完成してからもカスタマイズや調整ができることです。簡単に試せるのは NFB(Negative Feedback)のONとOFFの違い。真空管アンプは裸特性がいいので素肌美人といわれますが、これはトランジスタアンプに比較して歪みが少ないという意味。しかし、NFBというお化粧をすると立場は逆転します。トランジスターアンプの方が歪みが少なくなり大出力が取り出せるアンプに変身するのです。

 

真空管アンプは、その音色を最大限に発揮させるためNFBを一切掛けないNON-NFBをウリにするモデルがあります。また、少しだけNFBを掛けている薄化粧モデルも存在します。実際にどう音が違うのかを「Nu:tekt HA-S」で聞き比べてみましょう。

 

缶ケース内部の右奥にあるスイッチで切り替えられ、最初の状態はAの位置でOFFになっています。NON-NFBで高域のヌケがよく、中低域は立ち上がりが良く荒々しくワイルドな感じになります。NFBを掛けるとボーカルは滑らかで、荒々しさは後退して刺々しさのない上品な音が楽しめます。Nutubeの個性を楽しむならNON-NFBがオススメですね。

 

これ以外にもバイアス電圧とアノード負荷抵抗も半固定ボリュームを回して調整できます。基本的に調整済みなのでいじる必要はありません。やってみたい方は元の位置をスマホのカメラなどで記録しておき、元に戻せるようにしてから回してみましょう。

↑左がバイアス調整ボリューム、右がアノード負荷抵抗調整ボリュームで、どちらも左右ペアになっています

 

オペアンプを交換して好みの音を追求!

最後のお楽しみはオペアンプの交換です。オペアンプとはトランジスタアンプの左右チャンネルが一体化されたモジュールのこと。「Nu:tekt HA-S」は増幅に真空管を使っていますが、それだけではパワーが足りないので最後にトランジスタアンプの力を借りています。つまりハイブリッド型アンプともいえますね。同じ型番の真空管でもメーカーによって音が異なるように、オペアンプもメーカーや型番によって音質が異なります。これを交換して好みの音を追求してみましょう。

↑缶ケースを開けてボリュームの手前にある黒い四角いパーツがオペアンプです

 

「Nu:tekt HA-S」には2種類のオペアンプが付属しています。最初から付いているNJM4580とMUSES01です。MUSES01Dは1個3500円もする超高級オペアンプなので、これは大サービスですね。NJM4580Dもオーディオ用のオペアンプですが1個25円ぐらいです。だからと言ってMUSES01の方が圧倒的に高音質とは言い切れません。私が聞いた感じではNJM4580の方がNutubeのワイルドな音を引き出してくれるように思えました。皆さんも聞き比べてみてください。

 

付属のオペアンプ以外にも2回路入りで8ピンのオペアンプと互換性があるので、手持ちのオペアンプを差し替えて、音質を聞き比べてみました。オペアンプは、Amazon.co.jpや秋月電子通商などの通販で数十円から販売されていて、気軽にカスタマイズが楽しめます。差し込む向きさえ間違えなければ壊れる心配もありません。定番モデルとしてBurr-BrownのOPA2134、OPA2604、アナログデバイセズのOP275、AD8397Aなどがあります。今回の試聴では、ややクールで硬質な音を再生するOPA2134PAが好印象でした。

↑オペアンプを交換するだけで、かなり音質が変化します

 

オペアンプは足が折れやすいので、交換にはICソケットを使うことをオススメします。平ピンが足を痛めにくいのですが、なければ丸ピンでも構いません。これにオペアンプを差し込んで、比較試聴するときはソケットごと抜き差しします。またIC引き抜き工具があれば、強く差し込み過ぎて抜けなくなったオペアンプの足を曲げずに引き抜けます。半固定用ボリューム調整用の非磁性体のドライバーもあると便利です。これで、キット完成後も「Nu:tekt HA-S」を長く楽しめます。この他にも電池のメーカー、接続ケーブルの種類によっても音質は変化します。いろいろ試して自分好みの音質を追求してみましょう。

↑オペアンプを抜くためのIC引き抜き工具と調整ドライバー、手前がICソケットです

 

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