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2018/3/29 13:30

14歳で書いた「人生の目標」を達成しないと遺産がもらえない!――「幸福を見つける20のレッスン」

誰もが幸福になりたいと願っているものでしょう。『幸福を見つける20のレッスン』(ローリ・ネルソン=スピールマン・著、高里 ひろ・訳/KADOKAWA・刊)の主人公ブレット・ボーリンジャーも、幸福になりたい、いや、幸福でなければいけないと思っている34才の女性です。

 

 

容姿にも恵まれ、素敵な恋人と一緒に住み、家族とも仲がいいのですから、幸福な暮らしだといえましょう。それだけではありません。化粧品会社の次期経営者となることが決まっているのです。すべての幸福を手にした女性と言っていいかもしれません。

 

 

最愛の母の死

けれども、物語はブレットが悲しみに沈む場面から始まります。最愛の母、エリザベス・ボーリンジャーが、癌のために亡くなったのです。彼女は素晴らしい母親でした。

 

女手ひとつで、化粧品会社ボーリンジャー・コスメを起こし、成長させました。結婚は離婚という不幸な結果に終わりましたが、男の子を2人、娘を1人授かり、慈しみ、育てました。製鋼工の娘として生まれたエリザベスでしたが、自身の才覚と努力によって、伝説の人と言ってもいいくらいの出世を遂げたのです。

 

 

忘れていたライフリスト

母は最愛の娘に今や大会社となったボリンジャー・コスメを譲ると、誰もが思っていました。ブレット自身もその覚悟を持ち、既に会社で重要な地位につき、義理の姉から社長となった暁には何をすべきかトレーニングを受けていました。ところが…。

 

母が娘に遺したもの、それは大きな会社ではなく、黄ばんだ一枚の紙だったのです。書かれていたのは「ライフリスト」。ブレット自身が14才のときに、「わたしの人生の目標」として書き付けたものです。

 

 

私も書いたライフリスト

若い女の子というものは、将来の自分の姿を夢見て秘密のノートを作りそこに人生の目標を書いてみたりするものです。

 

振り返ると、「ギャオ」と叫び出したくなるほど恥ずかしい思い出ですが、私にもそんな時がありました。20才までに叶えたい夢として、実現可能かどうかよく考えもせずに、思うがままにいくつかのことを書いたのです。ノートの表紙に?マークなど描いたような気がします。けれども、結局私は大事なノートを今はもう持っていません。引っ越しの時に捨ててしまったのです。

 

読み返してみるとたまらなく恥ずかしく、迷うことなくゴミ箱に投げ入れました。ブレットも同様で、せっかく書いたライフリストをひきちぎりゴミ箱に捨てました。書いたことさえ憶えていないのです。

母の真意はどこに?

捨ててしまった、そこまではブレットと私は同じことをしました。が、しかし…。ブレットのライフリストは失われることなく生き続けていました。母のエリザベスがゴミ箱から拾い上げ、大切に保管したからです。それだけではありません。

 

ブレットが目標を達成するたびに、母はリストに線を引き感想を付け加えていました。それだけでも十分に驚く秘密の行動ですが、母はさらにブレットを驚かせる遺言を遺して逝きました。

 

ブレットが書いた20の夢のうち、まだ達成できていない10のリストを完全に終わらせるようにと命じたのです。それも、母が亡くなって1年後の9月13日までにリストを完了しなければなりません。そうでないと遺産を受け取れない決まりです。こんなでたらめな話があるでしょうか? いったい母の真意はどこにあるのでしょう。

 

 

果たすべきリスト

ブレットは迷いながらも、遺言を預かった弁護士のマイダーとライフリストを完成させようとします。残ったリストは以下のようなものです。

 

1.子供をもつ。できればふたり
2.犬を飼う
3.キャリー・ニーサムとずっと友だちでいる
4.貧しい人を助ける
5.すごくすてきな家に住む
6.馬を買う
7.恋に落ちる
8.大舞台に生出演する
9.お父さんと仲よくする
10.すばらしい教師になる

 

わかったような、わからないような…。ちょっと不思議なリストです。

 

難しい課題は「恋に落ちる」

それでも、何かに導かれるようにブレットは遺されたリストを達成するために行動を起こします。彼女にとってどれも簡単なことではなく、実行できるのかと絶望する日もありました。

 

けれども、母の死に打ちのめされ葬儀の日に悲しみのあまりぐでんぐでんに酔っ払っていたブレットの姿は、もうそこにはありませんでした。自分で作っておきながら実現するのが困難なリストを前にしてブレットは奮い立ちます。泣き続けているわけにはいかなかったのです。

 

母の願いを果たしたい、その思いがブレットを支えていました。周囲の助けもあり途中までは割合、順調にリストは達成されていきました。けれども、「恋に落ちる」で、ブレットは足踏みをしてしまいます。これが恋に落ちると言うことだという実感を得ることができないからです。

 

 

夢を忘れないために必要なレッスン

私は『幸福を見つける20のレッスン』を一気に読みました。途中、イライラしたり、ハラハラしたり、ドキドキしたりしながらも、本を閉じることができませんでした。30章もある長いストーリーだというのに、先が気になって他のことができないのです。

 

母の遺言を果たすために娘が何をしたか? という物語に夢中になるのは、奇妙と言えば奇妙です。それでも、先へ先へと読み進みたくなるのは、魅力的な登場人物が入れ替わり立ち替わりブレットに関わってくるからだと思います。そして、最後にはブレットだけではなく私たちまでもが、母エリザベスが遺した術中にはまってしまったことに気づくのです。

 

人生は思い通りにはいきません。けれども、少女の頃の夢を失わずにいれば悲しみを乗り越える大きなエネルギーとなって生きていけることを『幸福を見つける20のレッスン』に教わったような気がします。

 

 

【著書紹介】

 

幸福を見つける20のレッスン

著者:ローリ・ネルソン=スピールマン(著)、高里 ひろ(訳)
発行:KADOKAWA
私が14歳の時に書いた願い事リスト。34歳になった私は、母の遺言に従ってリストを達成していくことに。本当の自分に向き合う大切さを教えてくれる、心温まる物語。世界30カ国ベストセラー、遂に日本上陸。

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