本・書籍
2018/4/10 13:30

「ライオンのおじいさん、イルカのおばあさん」――この春、赤ちゃんではなくご長寿の動物に会いに行く

ご長寿記録更新中のチンパンジー

この本を読んでいちばん驚いたのは私よりも年上のチンパンジーがいたこと。それが神戸市王子動物園にいるチンパンジーの“ジョニーさん”だ。ジョニーは1950年頃アフリカで生まれ、1955年に動物園にやって来たそうだ。この本が出た時点で66歳、そして今は67歳となり、元気に過ごしているようだ。ジョニーが動物園で過ごしてきた日々は大きな事件もなく、とてもなだらかだという。

 

王子動物園では毎年、敬老の日にお祝いをしているそうだ。飼育員さんはこう語る。

 

ジョニーさんがお祝いのケーキを食べてくれるのを見て、ほっとします。今年もこの日をむかえられた。一年を乗り越えられたんや、と。(中略)言葉にしにくいし、目にも見えにくいんやけども、ジョニーさんはやっぱりすごい。だって、この動物園にきて六十年以上ですよ。人間って、山あり谷あり、波瀾万丈、とかいう物語が好きですよね。だけど、ふつうに、ごくふつうに、何事もなくすぎていく人生もあるんとちがうかな。(中略)ジョニーさんも、たまたまそういうふうにして、比較的なだらかな六十何年がすぎてきたのかも。その結果、いま長寿で話題になったりしてる。

(『ライオンのおじいさん、イルカのおばあさん』から引用)

 

ジョニーは老いを感じさせない元気なおじいちゃんのようだ。来園客からも「どの子が一番としより?」とよく聞かれるほど、見た目は若いという。気高く威厳があり、そして雌のチンパンジーにももてるのだそうだ。

 

飼育員さんが、「八十、いや百歳まで生きてくれ。もっともっと生きてくれ、ジョニーさん!」と語っているように、ジョニーがこれからもご長寿記録をどんどんのばしてくれることを願ってやまない。

 

本書には、この他に、キリンのおじいさん“リンタさん”(姫路セントラルパーク、2018年4月1日27歳で永眠)、ラッコのおばあさん“ラスカさん”(のどじま臨海公園水族館)、ウォンバットのおじいさん“ワインさん”(五月山動物園)、アザラシのおばあさん“トラさん”(おたる水族館、2016年5月8日46歳で永眠)、ライオンのおじいさん“レオさん”(天王寺動物園、2016年5月20日23歳で永眠)が登場し、それぞれの人生を詳しく知ることができる。

 

また、外国の動物園や水族館ではあまりなく、日本にはあるものが“動物慰霊碑”だそうだ。動物園や水族館で命を全うし、人々に親しまれた動物の霊を慰め、感謝するためにつくられたものだ。

 

動物園や水族館に行ったら、まず動物の赤ちゃんに会い、そしてその園で最高齢の動物を探し、そして帰りがけには慰霊碑の前で手を合わせる。それが、正しい見物の仕方なのかも。

 

【書籍紹介】

ライオンのおじいさん、イルカのおばあさん

著者:高岡昌江
発行:学研プラス

『動物のおじいさん、動物のおばあさん』第2弾。動物園・水族館で飼育されている国内最高齢動物の生い立ちや現在の姿を、飼育係さんの語りで紹介します。今回紹介するのはライオン、イルカ、キリン、チンパンジー、ウォンバット、ラッコ、アザラシの7頭です

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