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2018/5/31 6:00

【今日の1冊】松岡修造は「決して残さない」「美味しかったらおかわりをする」――『おいしい記憶』

フジテレビ系列のミニ番組「くいしん坊!万才」のリポーターといえば、だれを思い浮かべますか?

 

現在のリポーターを務めているのは、元プロテニスプレーヤーの松岡修造さんです。食リポーターを第十代目である”宍戸開さん”から引き継いだのは、2000年1月のことでした。じつは、歴代1位の出演回数(800回以上)を記録しています。

 

エッセイ集『おいしい記憶』(松岡修造、上戸彩ほか・著/中央公論新社・刊)では、松岡修造さんが「くいしん坊!万才」について熱心に語っています。

 

「くいしん坊!万才」の舞台裏

松岡修造「自分でプレゼンした『くいしん坊』」

収録に入れば、三食ロケになるわけですが、出されたものはやはり全部平らげているんですよ。カメラの前でちょっと箸をつけて終わりなどということは、僕の現場ではありえません。

(『おいしい記憶』から引用)

 

松岡さんによれば、「くいしん坊!万才」のロケは、9回分をまとめて収録するそうです。1日3食×3日間。けっして短時間で収録せずに、1食をしっかり味わうためのスケジュールです。

 

そのほかにも、松岡修造の「こだわり」があります。出されたものを「残さない」ことはもちろん、おいしいものは「おかわり」をするそうです。だから食材が足りなくなって、現場スタッフが慌てることもあったり。松岡さんらしいエピソードです。

 

スポーツ解説者(キャスター)を務めている松岡さんは、海外で活躍しているアスリートの取材に出かけることも多いです。だからこそ、日本の郷土料理を食べられる「くいしん坊!万才」のロケを、いつも新鮮な心がまえで楽しんでいます。

 

 

上戸彩は「消え物」が大好き

上戸彩「母のおこわ」

うちの母親は、仕事場に突然「皆さんでどうぞ」と、お手製のおこわを持って来ることがあります。単に「娘をよろしく」の挨拶のつもりなのか、何か「ここが正念場」と感じるものがあるのか、そのタイミングは謎。

(『おいしい記憶』から引用)

 

女優の上戸彩さんは、収録現場の「消え物」が大好きであると告白しています。

 

「消え物」とは、ドラマや映画などの食事シーンで使われる「お料理」のことです。上戸さんは、自他ともに認める「食いしん坊」であり、一流のフードコーディネーターが作った「ごちそう」をいつも楽しみにしています。

 

上戸彩さんの母上が「おこわ」を差し入れするのは、共演者や支えてくれるスタッフへの気づかいであると同時に、多忙に働いている「食いしん坊」な我が娘のためかもしれません。愛を感じます。

 

親から子への情愛を示すもの。それは「お弁当」という形であらわれます。

母と娘をつなぐもの

和田佑美子さん「ふたつのお弁当箱」

ある時台所の片付けをしていると、私が高校生の時に使っていたお弁当箱と、色の違う同じ形のお弁当箱が出て来た。なぜ二つの色違いのお弁当箱があるのだろうと不思議に思い、母に聞いてみると(中略)「実はね、あなたのお弁当を作る時、お母さんの分も時々一緒に作っていたの」

(『おいしい記憶』から引用)

 

和田さんの学生時代。お昼どきになると、お母さんから携帯メールが届いたそうです。メールの内容は「お弁当の批評」でした。

 

当時は、メールの意図がわかりませんでした。じつは、娘と「おなじ時間帯」に「おなじ弁当」を食べることによって、離れていてもまるで同席しているようなランチタイムを過ごしていたわけです。母の遊び心であり、娘恋しさでもあり、涙腺をくすぐられるエピソードです。

 

家族のだれよりも早起きして、朝食を作って、さらに昼食(お弁当)の支度をする。とてつもない労力です。学生のとき、手づくりのお弁当を食べていたのなら、それこそが「愛」を証明するものです。

 

 

忘れられない「しあわせの味」

紹介したエッセイ集『おいしい記憶』は、キッコーマンが協賛する「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」コンテストの入賞作品をまとめたものです。著名人による「12本の描きおろしエッセイ」も併録しています。

 

綴られている「おいしい記憶」は、ほとんどが「家族」と過ごした思い出です。なにげない食事であっても、気持ちの通じた人たちと食べるほうが「おいしい記憶」として残るのでしょう。

 

ちなみに、松岡修造さんがリポーターを務める「くいしん坊!万才」は、キッコーマンの1社提供番組です。もはや「仕事を越えたライフワークである」と熱く語っています。

 

上戸彩さんは、キッコーマンの製品である「わが家は焼肉屋さん」「濃いだし 本つゆ」などのコマーシャルに出演しています。今回のエッセイでは、上戸さんの意外な一面や、子ども時代〜デビュー直後のこと、共働きだったお母さんの得意料理など、ほかでは読めない貴重なエピソードを語っています。お試しください。

 

【書籍紹介】

おいしい記憶

著者:上戸 彩ほか
発行:中央公論新社

人には誰にも、「おいしい記憶」があります。食の幸せ「おいしい記憶」にまつわる作家・著名人による珠玉の書き下ろしエッセイ12本を収録。そして、キッコーマン株式会社が毎年公募している「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください コンテスト」の入賞作品10本をちりばめ、構成されたアンソロジーです。カバーと本文には、けしごむはんこ画家・とみこはんの温かくおいしそうなイラストをちりばめ、食の思い出を彩ります。誰にでもある「おいしい記憶」を呼び覚ます、そして、読めば誰かと食事をしたくなる1冊です。

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