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2018/7/7 16:00

いじめ加害者に対する最高の復讐とはなんだろう?――『ミスミソウ』

いきなり私事で恐縮だが、私の息子には、いじめられた経験がある。けれど私は息子にやられたらやり返せとは絶対に言わなかった。代わりに私が伝えたのは「いじめっ子のことを忘れて、これからいっぱい幸せになればいいんだよ」ということだった。人生は長い。いじめの加害者に受けた傷にこだわり、嫌な気持ちを引きずるよりは、この先の出会いを楽しみに生きていったほうがはるかに健康的だからだ。

 

 

被害者が加害者になる復讐

けれど、いじめを題材にしたマンガや映画のなかには、被害者が加害者への復讐に走る内容がある。私はそれらを読むたびに、複雑な気持ちになってしまう。いじめられた側に対し、やられたらやり返せなどという大人もいるが、実際にやり返してしまい、長く刑務所(もしくは少年院)に行くことにでもなったら、その後の人生の楽しみまでもを奪われてしまいかねない。果たしてそれは真の復讐と言えるだろうか。

 

転校してきた美少女がクラス中からいじめられるマンガ『ミスミソウ』(押切蓮介・著/双葉社・刊)は、2018年4月に実写化もされている人気作品だ。この美少女は、何も悪いことはしていない。ただ、ちょっとキレイだったり、たまたま目立ってしまったりで、クラスの連中からターゲットとして目をつけられてしまう。いじめのリーダーの気まぐれで標的になってしまって、読んでいて気の毒でしかたがなかった。

 

ホラーとしてのいじめ

『ミスミソウ』は、もともとホラーマンガ誌に連載されていたので、恐怖描写が多い。そして内容も悲惨としか言いようがない。私の周りではこのマンガを読むと落ち込む、という人が多い。私も第1話でドーンと落ち込んだ。あまりにもつらいいじめの描写が続いたからだ。これほど落ち込まさせられるなんて、作者の表現力はすごいと思う。

 

ホラーマンガには、いじめのシーンがしばしば登場する。絵になるというのもあるかもしれない。美少女が散々いじめられてしまう。靴を隠される、机に落書きをされるなんてことは当たり前、一人では出るのが困難な穴に落とされてドロドロにされたりもする。『ミスミソウ』のヒロインは、はかなげで本当に可愛い。だからこそいじめの悲惨さが浮き彫りになっていく。

 

いじめられる側の理不尽

いじめられる側のなんともいえない理不尽さは、以前にマンガ『聲の形』でも感じたことがある。聴覚に障がいがある女の子が補聴器を男の子に壊されてしまうのだ。それも5か月で8個も。総額にして170万円になる。買い直さなくてはならなくなったとき、まずお金を出さなくてはならなかったのは、いじめられた女の子の親であった。

 

その後、いじめに遭った女の子は、転校してしまう。しかし転校するということは、またそこで新しい人間関係を築いていかなくてはならず、大変なストレスになる。さらに、新しい学校の制服や鞄や上履きを買い揃える必要がある。その費用は、被害生徒の親が払うしかない。泣きっ面に蜂とはこのことである。女の子が追い出された一方で、いじめた側は何ら変わりなくいつも通り登校し、友達と学校生活を楽しんでいるのだから、本当にやりきれない。

 

 

真の意味の復讐とは

いまどきのいじめは、相手を徹底的に追い詰める。相手が転校するまで、もしくは目の前から消えるまで……。マイナスのパワーはマイナスのパワーを生む。だからなのか、いじめられた側が復讐をする話を、マンガでも映画でも、そして現実世界でも見かける。それ以外の解決方法はないのだろうかと私はずっと考えている。

 

とはいえ『ミスミソウ』で、ヒロインが反撃に出た際、加害者が慌てふためき逃げ惑うさまを見て、胸がスッとしなかったわけではない。仕返しをしてはいけないと頭ではわかっていても、人間の心の中にはこうした闇の心があるものだ。実際にはすることがない仕返しを代わりにマンガが果たしてくれている。そう考えて前向きに読んでみてもいいかもしれない。

 

 

【書籍紹介】

ミスミソウ(上下巻)

著者:押切蓮介
発行:双葉社

「私は家族を焼き殺された――。」三角草(ミスミソウ)。厳しい冬を耐え抜いた後に雪を割るようにして咲く花。閉鎖的な田舎町の中学に転校してきた少女「春花」を待っていたのは、壮絶なイジメだった。せき止められない憎しみに、少女の心は崩壊する―――!!

 

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