本・書籍
2019/1/1 6:00

今年こそ猫や犬を飼いたいと思っているあなたに――『きみとのすてきな日々』

さぁ、2019年が幕を開けた。

 

”一年の計は元旦にあり”。今年こそ新しい家族に猫や犬を迎えたいと計画している皆さんに、ぜひ読んでいただきたい一冊を紹介しよう。もちろん、すでに現在、動物たちと幸せに暮らしている方々にもおすすめなのが、『きみとのすてきな日々』(森島隆司・著/幻冬舎メディアコンサルティング・刊)だ。

 

獣医師の森島先生がこれまでに診てきた、たくさんの可愛い猫や犬たちとその飼い主たちの中から、思い出深い話をまとめたもの。動物病院を舞台に繰り広げれた悲喜こもごもは、きっとあなたの心を温め、癒してくれるはず。

 

 

冬、猫だけに多い事故にご注意!

本書には26のエピソードが収められているが、著者が獣医師ならではの動物の飼い方のアドバイスも同時に綴られており、これがとても参考になる。

 

たとえば”足をなくした3匹の子猫”の物語。ある女性が厳寒の日、クルマに乗り込みエンジンを一刻も早くかけようとキーを回した瞬間に「ガガッ」という異音、そしてその後「ギャーッ」という動物の悲鳴が響いた。ボンネットを開けるとそこには大怪我をした3匹の野良の子猫がいたのだ。

 

冬場、猫たちはクルマで暖を取ってしまうことが多いという。停車したばかりのクルマの下に入れば暖かく、さらに猫たちはキャブレターやファンベルトの横など車体の中にまで潜り込んで暖を取ろうとするのだそうだ。そして猫がいることを気づかずエンジンをかけると悲惨な事故が起きるのだ。

 

こうした事故を防ぐため、寒い季節は特に、車を動かす際には必ずボンネットをばんばんと手でたたき、そこにいるかもしれない猫を追い出すことを習慣にしてほしいと思います。

(『きみとのすてきな日々』から引用)

 

さて、事故を起こした女性は責任を感じ、足をなくした猫たちを飼うことになった。森島先生は障害をかかえた子猫を育てるには相当な覚悟がいると伝えたそうだ。女性は猫好きでもなかったが、やがて足がなくてもあるがままを受け入れ精一杯生きる姿で、猫たちのほうが女性を勇気づけるようになっていったのだという。

 

 

こたつのコードを咬んで感電した子犬

たとえば、お正月に家族でこたつに入って団欒しているときにも、ペットたちが思わぬ事故にあうリスクもあるそうだ。冬に動物病院に担ぎ込まれてくる患者で少なくないのが感電だという。特に、好奇心旺盛な幼い犬は咬み心地の良いものは片っ端から咬んでしまうため、寒い時期にはこたつに潜り込み、コードに咬みついて感電してしまうのだ。

 

ペットが急に声をあげて倒れたら、感電の恐れがあります。近くにコードがないかを確認しましょう。また、通電している可能性もあるので、あわててペットに直接触らないよう、くれぐれもご注意を。

(『きみとのすてきな日々』から引用)

 

エピソードでは生後4か月のマルチーズの例が紹介されている。飼い主さん一家がこたつに入っていると子犬もそこに潜り、はじめは家族の足にじゃれついて遊んでいたが、やがて静かになった。家族はのんびりテレビを観ていたが、「キャン」という悲鳴! こたつのなかを覗くと子犬は目を半開きにして倒れ、小刻みに震えていたそうだ。

 

幸い、マルチーズは診察をはじめるころには意識も戻り、軽症ですんだそうだが、なかには命を落とすケースもあると森島先生は警鐘を鳴らしている。

 

 

動物たちが全身全霊をもって伝えてくれること

さて、本書の26のエピソードで、私がもっとも感動したのは暴走族の少年と野良猫の偶然の出会いの物語だった。

 

ある夜、少年はバイクで暴走していて、飛び出してきた三毛猫を轢いてしまったが、そのときは助けようともせず猫を放置して走り去った。が、翌日、再び現場をバイクで通ると、足を負傷し動けなくなった猫はまだそこに倒れていて「ニャー」と小さな声で鳴いた。その猫の瞳が、少年の凍りついた心を溶かすことになったようで、少年は猫を保護し、翌日、森島先生の元に連れてきたのだそうだ。

 

もっとも少年は猫を置いて一度は立ち去ってしまうが、二週間後に彼は再び現れ、こう言ったのだ。

 

俺のこと、憎んでいないのか……。わかってるのか、俺はお前を轢いたんだぞ。(中略)俺がこいつから自由を奪ったのに、こいつはそんなことも気にしないで俺に懐いてくれる。先生、足が1本なくなったら、野良猫として生きていくのは難しいよな。自分で食っていけないよな。

(『きみとのすてきな日々』から引用)

 

三毛猫を引き取った少年は暴走をやめ、真面目に働きはじめることとなった。偶然に出会ったひ弱な一匹の野良猫が、少年を見事に更正させたというエピソード。動物のチカラってすごい!

 

森島先生もこう綴っている。

 

生きることのすばらしさ、命のすばらしさ、夢中になることのすばらしさ、素直でいることのすばらしさ、無償の愛のすばらしさ、迷いのない信頼のすばらしさ……書ききれないほど様々なものを、彼らはプレゼントしてくれます。その経験は本当に幸福そのものであり、私たちが生きる支えともなります。

(『きみとのすてきな日々』から引用)

 

この本を読み終えたとき、やっぱり猫や犬と暮らしたい、誰もがそう思うだろう。

 

【書籍紹介】

きみとのすてきな日々

著者: 森島隆司
発行:幻冬舎

可愛い動物たちと飼い主が繰り広げるちょっぴりおかしく、ちょっぴり切ない日常のエピソード集。
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