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2020/11/4 20:30

日常を変え、なかったモノを創り出す−−「ない仕事」の作り方

10月28日、乃木坂46の白石麻衣さんのオンライン卒業ライブが行われた。参加した国内外のファンの推計は68万7000人。これほど大きなオーディエンスが関わるアイドルのオンラインイベントは史上初だろう。

 

エンターテインメントの新しい形

「3密を避けるという行いは、エンターテインメントがもたらす熱狂の反対側にある。ただ、世界や生き方が変わっていくなか、そこに合わせたエンターテインメントの形があるはずだ」

 

おニャン子クラブから櫻坂46まで数多くのアイドルグループをプロデュースしてきた秋元 康さんが、とある番組のインタビューで語っていた言葉だ。コロナ禍によってこれまで当たり前だったことができなくなり、さまざまなことが様変わりを強いられている。筆者としては全く認めるつもりはないが、「ニューノーマル」とか「新しい日常」という言葉も浸透しつつある。

 

そんななか、圧倒的人気を誇る乃木坂46の絶対的エースだった白石さんの卒業ライブがオンラインで行われたことは、2020年というきわめて特異な年におけるものごとの変容を端的に示すものにほかならない。

 

変更と創出

飲み会やカラオケ、ジムでのトレーニング。今まで通りの普通な感覚でできなくなったことは、挙げ始めたらきりがない。これまで当たり前だったことを変える。これまでになかったものを創り出す。今ほどこうした能力が求められる時代はないだろう。

 

では、そういう能力を自分の日常や仕事で具体的な形にしていくにはどうしたらいいのか? そんなにクリエイティブじゃないし、何から手を着ければいいのかもわからない。日常生活も仕事もルーティン要素が中心になりがちな筆者も、そう思いがちだ。そこでここでは、筆者自身も一部であるこうしたグループに属する人たちに大きなヒントと突破口をもたらすにちがいない本を紹介したい。

 

「マイブーム」

「ない仕事」の作り方』(みうらじゅん・著/文藝春秋・刊)の著者みうらじゅんさんは、ごく簡単な言い方で形容するなら多才な人だ。どんなジャンルであれ密度の高い知識を有していて、サブカルチャー分野の守備範囲が特に広いことも知っている。ただ、いまいち“本業”がわからない。そのあたりについて、ご本人は次のような文章で説明している。

 

私の仕事をざっくり説明すると、ジャンルとして成立していないものや大きな分類はあるけれどまだ区分けされていないものに目をつけて、ひとひねりして新しい名前をつけて、いろいろ仕掛けて、世の中に届けることです。

                    『「ない仕事」の作り方』より引用

 

みうらさんの造語「マイブーム」は1997年の「新語・流行語大賞」を受賞した。もう少し読み進めてみよう。

 

それまで私は、自分が「これは面白い!」と思ったものやことがらに目をつけ、原稿を書いたり、発言したりしてきましたが、世の中の話題にならないことのほうが多かったことは確かです。

『「ない仕事」の作り方』より引用

 

世の中の話題にならないことを面白いと感じる。こうした感覚から生まれた別のワードも、今やごく普通の日本語として定着している。

 

「ゆるキャラ」

みうらさんの仕事におけるキーワードは、違和感という言葉を抜きにしては語れない気がする。「ゆるキャラ」という言葉のイメージが生まれたのも、そもそもは違和感が絡むこんなシーンだった。

 

「ゆるキャラ」の存在が気になりだしたのは、20年ほど前、全国各地の物産展に赴いたときです。その土地の名産品が並び、多くの客がひしめく中、それはとても所在なさげに立っていました。

    『「ない仕事」の作り方』より引用

 

目の当たりにしたのは着ぐるみだ。こうした着ぐるみが大多数の人の記憶に残ることはない。なぜか。名称もジャンルもないからだ。あえてジャンル分けを試みればものすごく長い説明をしなければならなくなるし、説明するほうもされるほうも疲れてしまう。さらに言えば、伝わるものは何もないかもしれない。みうらさんは、「ない仕事」の出発点はここにあると語る。

 

違和感・変更・ニッチな感覚

目次を紹介しておく。

 

・まえがき すべては「マイブーム」から始まる

・ゼロから始まる仕事~ゆるキャラ

・「ない仕事」の仕事術

・仕事を作るセンスの育み方

・子どもの趣味と大人の仕事~仏像

・あとがき 本当の「ない仕事」~エロスクラップ

 

「ない仕事」の構成要素をあえて表すなら、違和感を大切にする意識、変更・変換能力を養う姿勢、そしてニッチな感覚ということになるだろうか。冒頭で紹介したインタビューで、秋元さんはこうも語っていた。「1000人、1万人の中で『面白そうだ』という感覚が生まれるよりも、10人が熱狂的に『面白い』と思うことを狙っている」

 

みうらさんのニッチな感覚と、秋元さんが語る圧倒的少数の熱狂。言い方こそ違うが、同じことを意味している気がする。先が見えない今の状況の中、こういう方向性で日々を過ごしていくことこそが、言いようのない閉塞感の突破口につながっていくはずだ。

 

【書籍紹介】

「ない仕事」の作り方

著者:みうらじゅん
発行:文藝春秋

「マイブーム」「ゆるキャラ」など新語を生み出し、それまで世の中に「なかった仕事」を企画、営業、接待も全部自分でやる「一人電通」という手法で作り続けてきたみうらじゅん。アイデアのひらめき方から印象に残るネーミングのコツ、世の中に広める方法まで、その驚きの仕事術を丁寧に解説。糸井重里さんとの対談も収録。

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