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2021/4/28 18:15

準備から退出時まで油断禁物!マナー講師が教える、オンラインで失敗しないためのビジネスマナー

新年度が始まりました。就職や転職、人事異動などをきっかけに環境が変わった、という人も多いはず。そんな今だからこそ、あらためて確認しておきたいのがビジネスマナー。とくに最近は、オンラインでの会議が当たり前になっており、いままでとはちょっと異なる対応が求められています。

 

直接会うより、はるかにコミュニケーションをとるのが難しいオンラインで、どのようなマナーを踏まえて振る舞えばいいのでしょうか? 今回は、マナー講師で、マネジメントサポート代表の古谷治子さんに、オンラインミーティングでのビジネスマナーなどについて教えていただきました。

 

正しいビジネスマナーが、自分自身の武器となる

そもそも、ビジネスマナーにはどういった役割があるのでしょうか?

 

「ビジネスは人と人とが行うものだからこそ、安心や信頼が必要不可欠です。しかし信用を得たいという気持ちは思っているだけでは伝わらないため、挨拶や表情、言動などといったビジネスマナーを通して表現するんです。

 

また、コロナ禍でなかなか人に会うことができなくなった今、テレワークなどの柔軟な働き方が浸透しました。自ずと評価の仕方も『出社しなくていいから、やるべきことを自宅でやってください』といった成果主義に変わり、個人の裁量で結果を出さなくてはいけない状況になっています。各々が会社に選ばれる存在を目指す上では、ビジネスマナーが自分自身の価値を高める一種の武器となるんです」(古谷治子さん、以下同)

 

コロナ禍で、より一層重要なものとなったビジネスマナー。新社会人はもちろん、そのお手本となる先輩社員の皆さんも、今一度自分のマナーを確認しておいて損はありません! 早速、オンラインミーティングの準備~終了後までのビジネスマナーを総復習していきましょう。

 

【準備中のマナー】オンラインミーティングの良し悪しは事前準備で決まる!

まずは準備段階で気を付けるべき点について確認していきましょう。

 

・事前案内

ミーティングの日時が決まったら、主催者側がビデオ会議システムの種類とURLをお知らせしましょう。その際、時間を含めた当日のアジェンダも一緒に送るのがポイント。会議室の予約が必要ないからこそ、ダラダラと続いてしまいがちなオンラインミーティングですが、事前に時間を設定しておくことで、効率的に進められるようになります。相手も前後のスケジュールが立てやすくなるため、より親切な案内と言えます。

 

・資料の準備

事前に共有する場合には、郵送で送るべきか、メールで送るべきかを確認します。画面共有機能を使うのであれば送付の必要はないですが、資料作りに注意が必要です。スマホなどの小さな画面で参加する人を考慮して、文字数を減らしたり、イラストや図を使ったり、対面以上に見やすい資料作りを心掛けましょう。

 

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・機器の確認

思わぬトラブルでログインできない、声が聞こえない、なんてこともオンラインミーティングならでは。当日に慌てないよう、事前に一度確認しておくようにしましょう。

 

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【ミーティング当日のマナー】相手が気になる要素を排除しよう!

・身だしなみ

相手との関係に合わせた服装選びが大切です。親しい間柄であればカジュアルな服装でも良いですが、初対面の場合にはシャツなどのきちんとした格好が好ましいでしょう。また、柄選びにも注意が必要。千鳥格子や細めのストライプなど、画面を通して見ると目がチカチカするような洋服は控えるのがベターです。

 

「自宅から参加する際はマスクをせず、きちんと顔を見せて参加した方が良いと思います。オフィスから参加する場合など、周りに人がいる状況であればマスクをしたままでも問題ないですが、特徴的な柄や模様など、相手の注意が散漫するようなマスクは避けるべきですね」

 

・環境

オフィスや自宅から参加する場合、背景は壁やカーテン、障子などが無難です。社内の掲示物や洗濯物など、どうしても関係ないものが映り込んでしまうのであれば、ビデオ会議システムの機能を使ってシンプルな背景に変更します。

 

また、出先から参加してなくてはならない場合には、人の出入りが少ないカフェやカラオケボックスに入りましょう。古谷さんによると、ホテルのロビーもおすすめなのだとか。「外を走る救急車の音や周りの話し声・音楽が入らない場所が最適です。その点、ホテルは静かで人も少ないので良いと思いますよ。どうしても人の出入りの多い場所で参加せざるを得ない時には、挨拶の際、『雑音が入るかもしれません』と断るようにしましょう」

 

公共のスペースや施設の共有スペースを利用する場合は、スタッフにことわるか、周囲の状況を見て判断しましょう。

 

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では、いざミーティングがスタート、となったら、どういった点に気を付ければいいでしょうか?

 

【ミーティング中のマナー】ルール作りが肝心!

・ホスト(司会者)の役割

ホストは5分前にログインし、参加者を出迎えるようにしましょう。全員が揃ったら、司会者としてミーティングの進行を務めます。参加者の中に音が聞こえなかったり、画面が傾いていたりと、トラブルが起きている人がいたら率先して声を掛けるのも、大事な役目の一つです。

 

「質問をする時は挙手するのか、チャットを利用するのかなど、参加者が迷うポイントについては、最初にルールを設けるのが良いと思います。機器に慣れていない人を含め、参加者全員が安心してミーティングに参加できる配慮をしてください」

 

・挨拶

オンラインミーティングの場合、音声が聞き取りづらいこともしばしば。だからこそ、冒頭の挨拶はいつも以上にハッキリと名乗るのがマナーです。特に、数字や固有名詞は間違えやすいため「ひ・び・や、支店です」「し・ぶ・や、支店です」などと、際立った話し方を意識しましょう。

 

「私は初対面の方とミーティングをする時、名刺交換ができない代わりに、カメラに名刺を映してご挨拶しています。その上で、『○○会社の○○と申します。後ほどお会いした際、名刺交換をお願いいたします』とお伝えすると、親切な挨拶になりますよ」

 

・話し方

話者が気を付けたいのが、発言の終わり方。オンラインミーティングの場合、話が終わったのか、続くのかが曖昧な場面がよくあります。マナーとして、発言を終えたら「以上です」と伝えるようにしましょう。また、もし誰かと発言が被ってしまったら、瞬時に「失礼しました、どうぞ」と譲ることも大切です。

 

・聞き方

対面に比べ、相手の反応が分かりづらいのがオンラインミーティングの難点。だからこそ聞き手に回った時は、分かったのか、分かっていないのかをハッキリ伝えるのがマナーです。一対一の場合には、相槌を打つなり、頷くなり、対面で話す時と同様に反応するようにしましょう。ただ、複数人が参加するミーティングの場では、相槌がうるさく感じることも。大きめに頷いたり、ジェスチャーで示したり、声を出さなくても「分かっている」ということを伝えるのがポイントです。

 

「5人以上が参加する場合、聞き手はミュートにしておくのが良いと思います。たまに『顔を映すのが恥ずかしい』とビデオまでオフにしている方がいますが、ビジネスマナーとしてはふさわしくありません。話を聞いていることを、常に周りが把握できる状況にしておいてください」

 

・雑音が入った時

犬の鳴き声が入ったり、自宅のチャイムが鳴ったり、周りの参加者が気になる物音を立ててしまった時には、すぐに「失礼しました」「急がないので大丈夫です」などと伝えるようにしましょう。

 

「くしゃみや咳をしてしまった時も同様です。話している最中であれば、カメラのある正面ではなく、横を向き、『失礼しました、続けます』という一声を挟んでから再開してください」

 

・退出

ミーティングが終了したら、司会者が「みなさんお疲れさまでした。ご退出いただいて構いません」などと退出を促します。参加者が退出しやすい雰囲気をつくることが何よりも大切です。そして、司会者は全員が退出し終わってからログオフするようにしましょう。

 

テレワーク時代に必要なのは、会えない不安を軽減すること

オンラインミーティング以外にも、コロナ禍によってさまざまなビジネスマナーが生まれました。従来のビジネスマナーになかったものとして、古谷さんは「会えない弊害への対応」を挙げます。

 

「ビジネスマンに対し、『今、不安に感じていることは何ですか?』と聞き取りを行ったところ、一般社員からは『オフィスよりも仕事がはかどらない』『周りに相談しにくい』『さぼっているのではないかと思われそう』などの声が、管理職の方からは、『生産性が下がっているのではないか』『報連相ができていないのではないか』『さぼっているのではないか』などといった声が上がりました。両者に共通して言えるのが、生産性の低下、報連相の欠如、信頼関係の薄れに不安を抱いているということであり、これらを招かない工夫が、今の時代におけるビジネスマナーと言えます。

 

生産性の低下を防ぐため、目の前の目標を明確にする。報連相を欠かさないよう、毎日決まった時間に情報交換をする。信頼関係を保つため、積極的なコミュニケーションを心掛ける。上司に任せきりにしたり、部下が自ら動くのを待っていたりするのではなく、お互いがお互いを思いやって動くことが大切です」

 

 

最後に、古谷さんはこう説いてくださいました。「新型コロナウイルスの最中でスタートした新生活。新社会人の方の中には、十分な研修が受けられずに不安を抱いている人も少なくないでしょう。しかし、冒頭でもお伝えした通り、ビジネスマナーはセルフブランディングであり、周りに選ばれるための鎧とも言えます。だからこそ、受け身になるのではなく、自分から進んで学ぶようにしてください。そして、先輩たちはお手本となるような振る舞いを心掛けるようにしてください」

 

【プロフィール】

マネジメントサポートグループ代表 / 古谷治子

東京放送、中国新聞社で9年間実務を経験した後、大学・短大等にて「就職支援講座」「ビジネス行動学」の講師を経験。現在はマネジメントサポートグループの代表として、4つの教育専門会社を率いる傍ら、自らも講師としてビジネスマナーに関する講演を行っている。
http://www.ma-support.co.jp/