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2017/6/5 16:00

もうJPEG生活には戻れない!? 意外と手軽な「RAW現像」のキホン

お手軽RAW現像のススメ Part.1 そもそもRAW現像って何?

「RAW現像」と聞くと、「難しい」「手間がかかる」といった印象を持つ人がいるかもしれない。だが、実際にやってしまえば、意外とハードルは高くない。特にカメラに付属する純正RAW現像ソフトを使えば、お金はかからないし、作業も簡単だ。狙いどおりに写真を仕上げられるRAWの自由度を一度体験すれば、もうJPEG生活には戻れないかもしれない。

 

そもそも「RAW」とは? JPEGとの違いは?

中級以上の写真愛好家やプロカメラマンの間では、RAWによる撮影と現像を実践している人が少なくない。RAWとは、直訳すれば「生(なま)」の意味。デジカメの撮像センサーから得られたデータを、カメラ内ではあまり加工せず、生に近い状態で保存するファイルフォーマットのことだ。RAW形式で撮影したファイルを、パソコン上のRAW現像ソフトで開き、色や明るさなどを最適化して仕上げる。こうした仕上げの工程が「RAW現像」と呼ばれる作業である。

 

ちなみに、デジカメの記録形式として一般的なJPEGを選択した場合には、RAW現像は撮影の瞬間にカメラ内で自動的に行われる。つまり、JPEG撮影とRAW撮影の違いは、現像処理をカメラ内で自動で行うか、自分で行うかの違いと考えることができる。

 

JPEGファイルとRAWファイルの違いは、JPEGが8ビットで圧縮記録されたデータであるのに対し、RAWは12~14ビットの非圧縮(または劣化の少ない圧縮)データであること。同じ写真でもRAWに含まれる情報量は格段に多く、そのぶん、補正に対する耐性が強い。RAWファイルであれば現像の際に、暗部から明部までの滑らかな階調を引き出したり、ホワイトバランスや仕上がり設定を変更したり、ノイズやレンズ収差をきっちり補正したり、といったことが自由に行えるのだ。

↑RAW形式で撮影するメリットは、白とびや黒つぶれを抑えた豊かな階調を引き出せることや、狙いどおりの発色で仕上げられることにある
↑RAW形式で撮影するメリットは、白とびや黒つぶれを抑えた豊かな階調を引き出せることや、狙いどおりの発色で仕上げられることにある

 

純正RAW現像ソフトのメリットとデメリット

RAW現像ソフトは、カメラメーカーが提供している「純正RAW現像ソフト」と、カメラメーカー以外の会社が発売している「サードパーティ製のRAW現像ソフト」の2種類に大別できる。サードパーティ製のRAW現像ソフトとしては、アドビシステムズ「Lightroom」がよく知られており、その機能の豊富さと使い勝手のよさには定評がある。

 

しかし、この記事ではあえて「純正RAW現像ソフト」を取り上げたい。カメラに付属するからといって、オマケのようなソフトでは決してなく、サードパーティ製ソフトを超えるさまざまな魅力があるからだ。ここからは、純正RAW現像ソフトのメリットとデメリットを紹介する。

 

メリット1「無料で提供されている」

純正RAW現像ソフトの多くは、カメラ同梱のCD-ROM等に入っているか、ウェブで無料ダウンロードができる。カメラを購入さえすれば、RAW現像に追加出費はかからない。

 

メリット2「カメラに搭載されたものと同じ機能が利用できる」

撮影機能としてカメラに搭載されている仕上がり設定や階調補正は、メーカーごとで味付けに個性があり、大げさにいえば各社の思想が込められている。純正ソフトでも、それらの機能の設定は引き継がれ、必要に応じてソフト上で切り替えて利用できる。

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↑オリンパス「OLYMPUS Viewer 3」では、カメラの機能とほぼ同じアートフィルターやアートエフェクト、ハイライト&シャドウコントロールなどの同社独自の機能が利用できる(上:RAW現像ソフトの画面、下:カメラの設定画面)
↑オリンパス「OLYMPUS Viewer 3」では、カメラの機能とほぼ同じアートフィルターやアートエフェクト、ハイライト&シャドウコントロールなどの同社独自の機能が利用できる(上:RAW現像ソフトの画面、下:カメラの設定画面)

 

メリット3「普段のJPEGと同じ発色で現像できる」

多くのメーカーが、カメラ内で自動的に行うRAW現像と、付属ソフトで行うRAW現像で、同じ現像処理を採用している。そのため、純正ソフトを使ってストレートに現像した場合には、カメラ内で生成されるJPEGとほぼ同じ色や階調で仕上がる。最終的に調整するかしないかは別として、撮影時に背面モニターで確認した色や階調をそのままRAW現像ソフトで再現できることは純正ソフトならではのメリットだ。

 

メリット4「レンズ収差などの補正が自動で行える」

純正ソフトのレンズ補正機能では、色収差や歪曲、周辺減光といったレンズの光学特性による画質劣化を、プロファイルと呼ばれるレンズ情報に基づいて自動的に補正ができる。サードパーティ製ソフトでも同等の機能を備えた製品はあるが、対応レンズの豊富さでは純正ソフトが有利といえる。

↑キヤノン「Digital Photo Professional 4」では、レンズデータ(プロファイル)を利用した収差補正が行える
↑キヤノン「Digital Photo Professional 4」では、レンズデータ(プロファイル)を利用した収差補正が行える

 

デメリット1「他社のRAWファイルは現像できない」

純正ソフトのデメリットとしては、現像できるファイルが同じメーカーのRAWファイルに限られることが挙げられる。メーカーの異なる2台以上のカメラを併用している人にとっては、もどかしいところ。複数のRAW現像ソフトを使い分ける必要がある。

 

デメリット2「欲しい機能がない場合がある」

機能の豊富さでは、有償であるサードパーティ製ソフトに及ばないケースが多い。各社とも、色やコントラストの補正、トーンカーブといった基本的なものは揃っているが、ソフトによってはゴミのスポット修正ができないなど、自分が使いたい機能が用意されていない場合がある。カメラメーカーごとの機能の違いについては、次ページの表を参考にしてほしい。

 

各社RAW現像ソフトの機能の違い

主要なカメラメーカーが無償提供しているRAW現像ソフトとしては、下記の8つの製品がある。このうち、ソニー「Capture One Express 10 (for Sony)」はPhase OneのRAW現像ソフト「Capture One」がベースで、パナソニック「SILKYPIX Developer Studio SEバージョン」と富士フイルム「RAW FILE CONVERTER EX 2.0」は市川ソフトラボラトリーのRAW現像ソフト「SILKYPIX」がベースになっており、それぞれ有償でバージョンアップすることも可能だ。

 

また、8つの製品とも「明るさ補正」「ホワイトバランス」「仕上がり設定」「コントラスト」「階調」「色相/彩度」「シャープネス」「ノイズ低減」「周辺光量」「歪曲収差」の主要機能は用意されている。下の表では、主に機能の有無に差がある部分をまとめた。

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