グルメ
2017/2/18 18:00

なぜ私たちは「しゃぶしゃぶ食べ放題」に吸い寄せられるのか? ブッフェ評論家が考える3つの理由

今の寒い時期においしいものと言えば、何と言ってもやはり体が温まる鍋料理ではないでしょうか。「マイボイスコム」の調査によると、「週1回以上食べる人は全体の3割強」と頻繁に鍋料理が食べられていることが分かります。おでんやすき焼きが人気となっていますが、私が特に注目している鍋料理は「しゃぶしゃぶ」です。なかでもしゃぶしゃぶ食べ放題は、肉も野菜も気兼ねなく食べられるとあって好評を博しています。創意工夫を凝らした各店舗の魅力やトレンドを絡めて、人気の理由を探ってみたいと思います。

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■スープ、オーダー方式、野菜! 人気を裏付ける「3つの理由」

ここ最近しゃぶしゃぶ食べ放題が人気となっている理由として、以下の3点が挙げられると考えています。

 

・スープの多様化

・オーダー方式との融合

・野菜の充実

 

それぞれについて説明していきましょう。

 

(1)スープの多様化

以前のしゃぶしゃぶ食べ放題と言えば、スープは1種類のことが多かったのですが、ここ最近は、真ん中で2つに区切られた鍋が使われて、2種類のスープを楽しめるようになっています。さらには、そのスープを“選べる”ことが魅力を後押ししているのです。基本的な昆布出汁に加えて、すき焼き、豆乳、白出汁、塩とんこつ、旨辛キムチなど、様々な個性的なスープを提供しており、選ぶだけでも楽しくなります。

 

こういった複数のスープを提供して人気を博したのは、2007年4月、東京・新大久保にオープンした蒙古三味薬膳火鍋専門店「小尾羊(シャオウェイヤン)」でした。1つの鍋で当初から2種類、現在は3種類のスープを味わえます。種類は、カプサイシンで脂肪燃焼する麻辣紅湯(マーラーホンタン)、生活慣習法やガン予防効果があると言われているヘルシー山珍湯(サンチンタン)、美肌効果のあるコラーゲン白湯(パイタン)と、ヘルシーなものばかりなので、女性にも喜ばれます。

 

今ではスープを選べることがしゃぶしゃぶ食べ放題では基本となっています。たれと合わせると、同じ肉でも実に様々な味わいを楽しめるので、しゃぶしゃぶ食べ放題は人気となっているのです。

 

(2)オーダー方式との融合

食べ放題は、人件費を減らす代わりに食材に費用を回して運営する業態です。そのため、普通は客が自分で料理を取るブッフェ形式(バイキング形式)となります。しゃぶしゃぶ食べ放題では早くから、肉はスタッフが運んでくれるオーダー方式を採用しており、食べ放題でありながらも落ち着いて食べられる体験を提供してきました。来店客が自ら調理をしなければならない業態であるだけに、席を立たなくてもよいのは非常に助かります。

 

ワンダーテーブルが運営する「鍋ぞう」はしゃぶしゃぶ食べ放題の老舗であり、その前身「モーモーパラダイス」からーーつまり、1990年代から肉がオーダー方式で提供してきました。「しゃぶしゃぶ食べ放題=バイキング方式」が一般的な図式であった時代に、大きなインパクトを与えたと言えるでしょう。昨今のしゃぶしゃぶ食べ放題はオーダー方式が当たり前となっていますが、これは「鍋ぞう」が広めたものだったのです。

 

(3)野菜の充実

冒頭のアンケート結果にもあったように、しゃぶしゃぶ人気の理由として野菜がたっぷり食べられることが挙げられます。健康志向の現代の消費者にとっては、もってこいの選択と言えます。前述の「鍋ぞう」では、2012年4月から野菜により力を入れ、国産の産直野菜を取り揃えたり、バラエティ豊かなコンディメント(調味料・薬味)を用意したりと工夫を重ねてきました。さらには野菜だけのしゃぶしゃぶコースを提供していることからも、その注力ぶりがうかがえます。

 

ほかにも、ニラックスが運営する「しゃぶ葉」は15種類ほどの野菜を用意。「たれBAR」「薬味BAR」を提供し、しゃぶしゃぶではもちろんのこと、サラダとしても野菜を楽しめるのです。また、とんかつで有名な和幸の系列店である「しゃぶしゃぶ野の豚 トンベジ」は野菜を巻いて食べる「巻きしゃぶ」を提供しています。

 

■インバウンド、料金体系──しゃぶしゃぶ食べ放題の成長性

店舗ごとの魅力を掘り下げていくと、より個性的なものになっていきます。レインズインターナショナルが運営する「温野菜」はスペインのブランド豚「イベリコ豚」やハンガリーの国宝豚「マンガリッツァ豚」を提供するフェアをおこなってきました。牛タン、牛モツ、牛カルビといったメニューを提供しており、肉のバリエーションでアピールしています。

 

ここ最近の訪日客を意識している「鍋ぞう」は、2015年からインバウンド対策をおこなっています。販促物を中国語化したり、メニューを英語化したりと、“日本食”として人気を博すしゃぶしゃぶの外国人へ向けた積極的で有効な試みだと言えるでしょう。ダイヤモンドダイニングの「今日はしゃぶしゃぶ!!」は和食ブッフェとしゃぶしゃぶ食べ放題を組み合わせて、多彩なメニューを提供していました。加えて、利用時間を細かく区切り追加時間に関しては1分単位で課金するシステムを導入し、余計なお金がかからないので、客にとって良心的なシステムだったのです。既に撤退してしまいましたが、しゃぶしゃぶ食べ放題ではこういった画期的な試みも行われていたのです。

 

しゃぶしゃぶ食べ放題は、多様化と進化の伸びしろを十分に残すカテゴリと言えます。今後さらなる個性を発揮するために、たとえば肉を食べ比べできるようにしたり、海外の鍋と融合したりと、肉をより一層楽しむ方法を広げる選択肢もあります。そして肉以外のメニューでも、めずらしい野菜を提供したりサイドメニューを増やしたりと、消費者が満足できる要素を網羅していくことが重要になるのではないでしょうか。

 

【著者プロフィール】

東龍

1976年台湾生まれ、後に日本国籍。高校3年時から食べ歩きを始める。ブッフェ、フレンチ、スイーツ、ホテルをこよなく愛する。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。Yahoo!ニュース 個人 オーサー、All Aboutガイド、全日本司厨士協会「東京CHEFS」連載。テレビや雑誌で活躍し、講演や相談、コラボも多数。

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