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お酒
2017/11/26 19:00

次は「酒屋さん」が食われる…? Amazonが切り拓くネット酒販の地平

Amazonは、2017年10月20日(金)~29日(日)の10日間、期間限定の『Amazon Bar』を銀座にオープンしました。ずらりと並んだ約5000本のお酒から、来店客の気分に応じて専用端末がお酒をすすめる『メニューのないBar』です。これが連日大行列の盛況ぶりで大きな話題になりました。酒類の取扱数日本最大級を自負するAmazonは、お酒の小売業界をどう変えるのでしょうか。

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■酒販とECは相性抜群

Amazonはよく使うけどお酒は買わない。そんな人も多いのではないでしょうか。Amazonは今、急速に酒類のラインナップを充実させています。2014年4月に『お酒ストア』をオープン。17年6月には、ボタンを押すだけで注文できる『アマゾン ダッシュボタン』に酒類を追加し、同7月に『定期オトク便』でもお酒を買えるようにしました。お酒ストアの16年度売り上げはオープン当初から約2.7倍に増え、着実に売り上げを伸ばしています。

 

酒類の取扱数日本最大級を自負するお酒ストアは、定番のビール、日本酒、ワイン、焼酎、梅酒、チューハイ、洋酒・リキュールだけでなく、Amazonが各国のワイナリーから直輸入したワインも取り揃えています。専属の『Amazonソムリエ』が電話やメールを通じて無料でワインの相談に乗ってくれるサービスや、毎月違うワインが定期的に届く頒布会などのサービスも整えています。このようにAmazonは、消費財の中でも成長著しいカテゴリーのひとつとして、酒類の販売に力を入れているのです。

 

日本酒やワインなど瓶入りのお酒やケース入りの缶ビールなど、持ち歩くには重い酒類は、ネット通販に適しています。また、実店舗より多く、さまざまな種類を揃えられるところもネット通販に適していると言えます。世界中の珍しいお酒を自宅まで届けてくれるのは、消費者としてはとてもありがたいこと。

 

筆者も、店頭での取り扱いがほとんどないオレゴンワインをネットで買ったり、晩酌のお酒が無いことに気付いて『Amazon Prime Now(プライム ナウ)』の1時間便で購入したりと、お酒を買うときもネットの恩恵を最大限に受けています。ちなみに、プライム ナウでは11月16日0時に解禁されるボジョレー・ヌーヴォーを前日22時から注文受付開始し、早ければ解禁と同時の0時に届けてくれるというから驚きです。

 

■「地域の酒屋さん」がAmazonと勝負するには…

消費者にとって便利なお酒のネット通販。それでも、手がける業者は多くありません。『なんでも酒屋 カクヤス』『やまや』などの大型酒販店は、それぞれ独自の強みを打ち出してネットでも気を吐いていますが、Amazonのライバルと言える企業はまだまだ限られていると言ってもいいでしょう。このままAmazonが酒販に力を入れると、酒の小売業界も家電小売業界のようにAmazonの「独り勝ち状態」になってしまうのではないか、と危惧する人も多いのではないでしょうか。すでに数が減っている地域の酒屋さんはもちろん、大型スーパーやディスカウントストア、コンビニなど酒類を取り扱う店舗は、危機感を覚えているでしょう。

 

酒の小売業界がAmazonの独り勝ちを食い止め生き残るには、Amazonにない「きめ細やかな」サービス、独自性が求められます。たとえば、セブン&アイ・ホールディングスは、アスクルと提携して生鮮食品宅配サービス『IYフレッシュ』を始めると発表しています。これは4月に始まった同様のサービス「Amazonフレッシュ」への対抗策でしょう。『IYフレッシュ』はセブン&アイ・ホールディングスが全国に張り巡らせた流通・販売網を活かすとされており、筆者としては酒類のネット販売でもこうした持ち味が活かされることを期待します。

 

消費者として選択肢が増えるのは大歓迎。小売業界もAmazonに対抗すべくさらなる切磋琢磨を続け、より良いサービスが増えるといいですね。

 

【著者プロフィール】

ECアナリスト/ネット通販コンシェルジュ・遠藤奈美子

ネットショップの運営に携わり、自身でも日常生活のほぼ全ての買い物をオンラインで行っていることから、ユーザー目線かつ運営者としての厳しい視点で情報を発信。EC事業者と消費者の橋渡し役を目指す。