グルメ
2018/7/13 18:30

【街中華の名店】池尻大橋「鶏舎」の名物中の名物「冷し葱そば」の季節に。それつまり、禁断症状からの解放だ!

街中華の夏の風物詩といえば“冷やし中華はじめました”だろう。筆者の調べによるとゴールデンウィーク明けから秋口まで、というのが多くの店の常套パターンだが、この季節料理が名物となっている街中華がある。池尻大橋の「鶏舎」(チイシャ)だ。

 

 

ねぎを主役にしたエッジのある味がウマすぎる!

ただ同店の場合は冷やし中華ではなく「冷し葱そば」。もともとはおなじみの冷やし中華もあり、こちらも人気が高かったという。だが、独創的かつスピーディに提供できるものを。そんな想いで生まれたのが「冷し葱そば」なのだ。

↑「冷し葱そば」950円。麺が隠れるほど具が満載だが、それでも麺の量は通常の1.5倍で225gある

 

錦糸卵などがのる冷やし中華より色味の華やかさには欠けるが、ねぎを主役にしたエッジのある味わいはインパクト大。いつしか「冷し葱そば」のほうが人気となり、冷涼麺は一本化することに。ただ提供スピードは上がったものの、人気のために仕込む量が増えた。たとえば1日に使う長ねぎの量は90本にもおよぶ。

↑シャキシャキを超えた、ジャキジャキとした食感が絶妙なねぎ。細かく刻み、冷水にさらして辛味を抜くという

 

↑チャーシューは豚の肩ロースを3~4時間煮込んで使用。「冷し葱そば」には約3枚分を短冊切りにしてのせる

 

「鶏舎」はランチから長蛇の列になるほど出数が多いため、もともと仕込み開始は早い。だが「冷し葱そば」の時季は早朝4時半から。真夏の繁忙期ともなれば、さらに1~2時間早くから準備をはじめることもあるという。

↑緑茶のように見えるが、実はこれが味の骨幹となる特製のタレ

 

↑製麺所に特注した細いちぢれ麺を、すべての麺料理に使用。「冷し葱そば」はプリっと、ツルっとした食感に仕上げられる

 

全体のおいしさをまとめ上げるのがタレだ。同店のトップシークレットということで詳しくは明かせないが、決め手となるのは自家製のねぎ油。しょうゆ、塩、豆板醤などを絶妙なバランスで配合することで、香り高くヤミツキになる味わいが生み出されるのだ。

 

 

夏以外でも楽しめる絶品中華が満載だ

シーズンが終わると、確かにファンは“冷し葱そばロス”に苛まれ、また次の夏に恋い焦がれる。だが、真の常連は知っているのだ。ほかにも絶品中華があることを! そのひとつが「五目ウマニかけ飯」。いわゆる中華丼だが、同店の開業当時から人気のメニューである。

↑「五目ウマニかけ飯」950円。「冷し葱そば」同様にご飯が隠れるほどたっぷりと具材がのる

 

名称は五目だが、実際の具は5種以上。豚バラ肉、白菜、にんじん、うずらの卵、ほうれん草、きくらげ、たけのこなどがたっぷり入っている。絶妙な火加減による、野菜のシャキシャキとした食感もたまらない。また、隠し味のオイスターソースが上品さを演出。

↑「ギョウザ」500円。豚肉、にら、ねぎ、キャベツにニンニクとしょうがをブレンドした定番の具材だが、まさにお手本といえる味わいで箸が止まらないおいしさだ

 

また、サイドメニューとしてもつまみの主役にもなるのが「ギョウザ」。オーソドックスな料理ではあるものの、あんの一体感と皮の焼き加減は職人技だからこそなせる技。普遍的なおいしさで、注文率が極めて高い一品である。

 

↑長谷川 淳店主。7歳年下の弟・孝さんとその奥様・和美さん夫妻と一緒に切り盛りをしている

 

そんな「鶏舎」は店主の長谷川 淳さんが1991年にオープンさせた街中華だが、経緯には少し変わった裏話がある。さかのぼること数年前、将来の進路を考えていた長谷川さん。手に職を付けたいと思い、一度は服飾の道を志す。だが80年代中頃は世に「ユニクロ」の1号店が誕生するなど、徐々に安価なファッションが登場していた時代。注文服の難しさを見据えた長谷川さんは料理の道へ方向転換する。そして高校時代のアルバイト経験から、中華料理店の門を叩くことに。

↑長谷川 孝さんは兄の背中を見て「鶏舎」をとともに立ち上げた。オリジナルのTシャツは常連にファッション関係者が多いため、作ってくれるのだという

 

やがて修業開始から6年ほどが経ち、ついに独立して開業したのが「鶏舎」なのだ。このころは、まさにバブル崩壊の足跡が聞こえはじめていた時代。以後、ファストファッションは一層台頭することに。長谷川さんの読みは、少なからず当たっていた。

↑よく見ると「アルバイト募集」の張り紙が。もし「冷し葱そば」の秘密を知りたければ、応募してみてはいかがだろう

 

兄弟のコンビネーションも見事な「鶏舎」だが、店名を考えたのはお父さん。鶏を使った代表的な料理に親子丼があるが、親と子の絆を連想させる「鶏」のイメージが、息子を応援したい気持ちとつながったのかもしれない。そんな同店には「トリソバ」(850円)など鶏を使ったメニューも多く、もちろんどれも絶品だ。ぜひ行ってみていただきたい。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

鶏舎(チイシャ)

住所:東京都目黒区青葉台3-9-9

アクセス:東急田園都市線「池尻大橋駅」徒歩8分

営業時間:月~金曜11:30~14:30/17:00~20:30(L.O.)、土曜11:30~14:30

定休日:日曜、祝日