グルメ
2018/10/30 21:00

【街中華の名店】名物餃子を司令塔にあらゆる来店パターンを幸福に導く神保町の良心「三幸園」

昼はランチ、夜は夕食に晩酌と使える店が街中華には多く、それが魅力のひとつだ。だが、いわゆるアイドルタイムといわれる15~16時台や深夜に営業しているところはそう多くない。その点、今回紹介する「三幸園」はふところが広い。通し営業で平日は深夜2時、金曜は3時まで煌々と明かりが灯っている。しかもここは、餃子の名店としても有名なのだ。

 

月に1万2500人が食す伝統の餃子

場所は、カレーの街や本の街といわれる神保町。同店のアクセスは抜群で、駅から徒歩1分もしない好立地にある。赤くて目立つ看板、その日の定食が書かれたボード、食品サンプルが入ったディスプレイ。味のあるのれんこそないものの、これは古きよきレストランスタイルの街中華だ。

↑昼も夜もにぎやかさは不変。学生時代から通う往年のファンも多いとか

 

料理はやはり餃子から。多いときは1日2000個以上出て、月間1万2500人に食されるというから驚きだ。創業した1956年から、製法が60年以上変わらない伝統の逸品。聞けば、先代の祖母のレシピが基になっているという。

↑「餃子」530円。晩酌で楽しむなら「瓶ビール」650円を。「生ビール」(中)590円もある

 

あんの割合はキャベツ、ニラ、ネギといった野菜が8、豚のひき肉が2。これを、長年の付き合いがある製麺店に特注した皮で包んでいく。味の特徴は甘さとジューシーさ。これは野菜が多めだからでもあるが、味付けに秘密がある。それを知るのは料理長と副料理長のみだが、やはり秘伝。

↑皮はもっちり系でやや厚め。甘味の豊かなあんとの相性が抜群だ

 

食べればわかる独特の甘味。なお、にんにくとしょうがも入っているが、決して主張しすぎるレベルではない。そのため女性にも大人気だという。味がしっかりしているためそのままでもうまいが、昔は店頭で売っていたというラー油をはじめ、好みの卓上調味料で“味変”するのもまた格別だ。

↑作っては焼き、作っては焼きを繰り返す餃子。この山盛りのボウルが、1日10回以上空になるという

 

 

遅めランチも深夜晩酌も大宴会もウェルカム

餃子はもちろん鉄壁のおいしさだ。しかしパンチがあるという表現は似つかわしくなく、どこかやさしい。料理長に聞くと、「餃子以外も食べてほしいから、そういう味にしているんです」という。言い換えれば、どんな料理にも寄り添う餃子ということだろう。確かに同店のメニューは麺、丼、定食、つまみと多彩で、総数もかなり多い。なかには、中華としては珍しい肉の部位を使う一皿もある。

↑「トントロネギ炒め(塩)」700円。塩とタレから選べ、どちらにもファンが多いという

 

豚の首であるトントロは、豊かな脂と独特のシャコっとした歯ごたえをもつ焼肉の定番部位。甘くシャキっと炒められたねぎ、コリっとしたきくらげと調和して絶品だ。時代の嗜好などに合わせて開発した、比較的新しいメニューとのことだが、その傾向はほかの料理にも。

↑「エビマヨネーズ」680円。ソースにはコンデンスミルクとハチミツで、クリーミーさと甘味を演出している。また、ワンタンの皮を揚げて砕いてまぶし、クリスピーなアクセントをプラス

 

これら一品料理には200円で「ライス」を付けられ、それを定食として楽しむお客も多い。また、奮発して360円の「半チャーハン」をオーダーするという選択肢もある。ちなみにこの「半チャーハン」、セットでなければ注文できない的な“縛り”がないのもうれしい。

↑「半チャーハン」360円。ハーフでも量は多めで、通常の「チャーハン」700円と同じ内容。約2時間を使って仕上げるモモ肉のチャーシューをはじめ、具材もしっかり入る。

 

半ライスはあっても、半チャーハンをアラカルトで提供してくれる店はそう多くない。だが「三幸園」はアリなのだ。だから、酒のシメに少しだけ飯物を食べたいというニーズに応えてくれる。また酒飲みに対する理解はほかにも見られ、たとえば宴会向けの大皿メニューが豊富に用意されている。

↑「とり唐揚げ」1570円。ゴロっとしたサイズ感の唐揚げが12個も盛り付けられる。6個のハーフサイズ(860円)で注文することも可能

 

唐揚げのほかに酢豚、かに玉、海老チリなど様々な定番中華が大サイズとなっており、ハーフサイズでのオーダーもできる。事実として宴会は多く、その証拠が大皿メニューなのだが、それだけの大人数を収容できる席の多さも同店の特徴だ。その数、なんと126席。

↑こちらはテーブル席が中心の2階。1階にはカウンター席もある。そして実は3階もあり、そこには掘り炬燵の大広間が2部屋用意

 

中心的存在の餃子を司令塔に、脇を固める多彩なメニューの数々。おひとり様のランチや晩酌でも、サシ飲みの2人組でも、数人から大所帯の宴会でもいい。すべてを受け入れ、望み通りのひとときを過ごさせてくれる。そんな安定感抜群の味と空間が、常時お客が絶えない人気の理由なのだ。

↑料理長の廣田彰さん。4人以上で回す同店の厨房を取り仕切る、勤続30年以上のベテランだ

 

なお、前述したように神保町といえばカレーの街としても有名。とはいえ同店を含む駅の約50m圏内は、日本屈指の中華激戦区でもある。上海蟹の「新世界菜館」、冷やし中華の元祖的存在「揚子江菜館」、ノスタルジックな餃子店「スヰートポーヅ」が点在する奇跡のエリアなのだ。神保町の老舗中華四天王といえる陣営だが、使い勝手のよさでいえば「三幸園」に軍配が上がるだろう。この界隈で遅めのランチ、または深夜の晩酌というシーンが訪れたら、ここに救いを求めるべし!

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

三幸園

住所:東京都千代田区神田神保町1-13 1~3階

アクセス:東京メトロ半蔵門線ほか「神保町駅」A7出口徒歩1分

営業時間:月曜~木曜11:00~翌2:30/金曜11:00~翌3:30/日曜、祝日11:00~23:30(各L.O.30分前)

定休日:土曜