グルメ
2020/3/24 18:00

噛んだらジャリッ「砂抜き」を絶対失敗しない!春の味覚=貝の下処理と滋味たっぷりレシピ

アサリやハマグリなどの貝類が産卵期を迎える春先。栄養をたっぷりとためこんだこの時期の貝類は、肉厚で旨みが増します。でも、下処理がうまくできないと、臭みや苦みがあったり、砂を噛んでしまったり。そこで今回は、京都で育ち、和食や精進料理を研究してきた料理研究家の荒木典子さんに、貝の下処理の正しい方法と、アサリとハマグリを使ったレシピを教えていただきました。

 

国産のアサリは少なくなっている

最初に、貝類の現状について、押さえておきましょう。3月ごろから潮干狩りが盛んになるアサリは、春と秋に産卵期があるため、旬が年に二度あります。アサリは潮干狩りでも簡単に獲れ、もっとも身近な貝と言えるでしょう。しかし、実は日本での生産量は急激に減少していて、1980年代には14万トンあった生産量が2000年以降は3万トン程度しかなくなり、消費の半分を輸入に頼っている状態なのです。

理由は埋め立てや水質汚濁、温暖化による被害など、環境の変化によるものが大きいことがわかっています。現在は水産庁指導のもと、有明海で国産アサリ復活に向けての取り組みが行われています。これはハマグリも同じで、国内に流通しているほとんどが輸入によるものです。環境問題について考えることは、この国の貴重な資源を守ることにもつながっています(水産庁調べ)。

 

アサリとハマグリの違いとは?

アサリとハマグリを見分けられるでしょうか? 同じ二枚貝ですが、実は触ってみると質感が異なります。

 

「ハマグリは表面がツルツルしているのですが、アサリは貝殻がザラザラとしていて、線上に窪んでいます。そのためそこに砂が溜まりやすく、砂を吐き出させることができても、貝の表面をよく洗わずに調理してしまうと砂が入ることがあるので注意しましょう。

 

また、アサリとハマグリは風味は異なりますが、どちらも旨みが強く、今回レシピをご紹介するフォーと茶碗蒸しは、それぞれもう一方の貝でも作ることができます。味の違いも楽しんでみてくださいね」(料理研究家・荒木典子さん、以下同)

 

大事なのは塩加減! 貝の下処理の仕方

それではまず、アサリを使って下処理の仕方を確認していきましょう。ハマグリも同様に処理することができます。

 

1.塩水に浸して暗いところへ置く


アサリを平たいバットなどに入れて、海水と同じ、3%程度の濃度の塩水に浸け、暗いところに置いておきましょう。「貝は浜辺にいますから、ボウルのような深いものより、浅いバットのような器がいいでしょう。貝頭が少し出るくらいの塩水を入れます。ざるや新聞紙などで蓋をして暗くすることで、砂を吐き出します。海水程度の塩水でないと砂を吐かないので、塩分濃度に注意しましょう。貝が口を開けてから最低でも30分、できれば2時間ほど置いておけば砂を吐き切ります

 

2.貝の表面をよく洗う


砂抜きをしたら、貝をよく洗います。「特にアサリは貝の表面に砂がついているので、お互いを擦り合わせて3度ほど水を替えて洗います」

 

3.水を切ってざるにあげる


ボウルで貝を洗うと、底に砂が溜まるので、途中で貝をざるにあげて水を替えましょう。表面や口についた砂も落ちていきます。「割れている貝があったら、傷んでいる可能性があるので省いておきます。傷んでいる貝がひとつでも入っていると、煮たときに生臭さがあり、料理がダメになってしまいます」

 

4.死んでいる貝がいないか確かめる


死んでしまった貝がいないか確かめるには、ふたつの貝を合わせて叩くとわかるといいます。「叩いた音が濁っているときは、死んでいる可能性が高いので省いておきます。すべての貝を叩いてみると、それだけ違う音がするのでわかると思いますよ」

 

下処理はこれで完了です。すぐに使わないときは、砂抜きをしたら表面を拭いてチャック付き保存バッグなどに入れて冷凍しておきましょう。使うときは電子レンジなどで解凍せず、凍ったままの状態で使います。

 

それでは、貝を使った料理を早速作ってみましょう。引き続き、料理研究家の荒木典子さんに解説していただきます。

 

▼この記事は、GetNaviがプロデュースするライフスタイルウェブマガジン「@Living」から転載したものです▼

貝を使った滋味たっぷりのレシピ2

それでは、貝を使った料理を早速作ってみましょう。引き続き、料理研究家の荒木典子さんに解説していただきます。

 

1.「アサリとセリのフォー」

ナンプラーの香りが引き立つ

「アサリの風味たっぷりのだしでいただくフォーです。ナンプラーが苦手な方は、薄口しょうゆで代用するといいでしょう」(料理研究家・荒木典子さん、以下同)

 

【材料:1人分】


・ごま油…小さじ1
・にんにく…1かけ
・アサリ…300g
・水…800ml
・ナンプラー(ガルムなど魚醤でもよい)…大さじ1
・せり…1/3束
・赤玉ねぎ…1/4個
・フォー…100g
・ライム…適量

 

【作り方】

1. 鍋にごま油と丸のままのにんにくを入れて中火にかけ、香りが立ってきたら、下処理したアサリを炒める

「アサリを入れてざっと炒め、煮詰めます。にんにくは、スライスすると香りや味が強く出てしまいますが、丸ごと使うことでまろやかな香りづけができますよ」

 

2. 蓋をして蒸す

「蓋をして2~3分すると、アサリが口を開き、水分が出てきます」

 

3. 全部の口が開いているか確認する

「蓋を開けてみて、口を閉じているものがあったら軽く揺すったり叩いたりしてみましょう。貝柱が引っかかっていて閉じている場合があります。いくらやっても開かないものは、廃棄しましょう」

 

4. 水を入れて中火で加熱する

「分量の水を入れたら、沸騰するまで加熱します。煮込んでしまうと、貝がどんどん痩せていきますので、沸騰したらサッとアクを取りましょう」

 

5. ナンプラーで味つけして野菜を盛る

「必ずおだしの味見をしてから、ナンプラーで味を整えます。茹でたフォーにスープを注いだら、赤玉ねぎやセリをのせていただきましょう。お好みでライムを絞ってください」

 

2.「ハマグリのだしで作る茶碗蒸し」

お祝いごとに食べたい上品な味

「ハマグリから出ただしを使って作る茶碗蒸しは、貝の旨みをしみじみ感じられる一品です。つるんとした卵の喉越しがよく、お子さまからお年寄りまでどんな方にも人気があります。茶碗蒸しは蒸し方が難しいと思われがちですが、実は蒸し時間を守れば、誰にでも簡単に作れるんですよ」

 

【材料:1人分】


・ハマグリ…4~6個
・水…400ml
・卵…2個
・菜の花…4本
・薄口しょうゆ…小さじ1ほど

 

【作り方】

1. 下処理したハマグリを分量の水で煮る

「ハマグリを入れた水を中火にかけると、アクが出てきます。口が開いたらハマグリを取り出しながらアクを取り除きましょう」

 

2. 貝殻を使って身を外す

「取り出したハマグリは、他の貝殻を使うと、上手に身を外すことができますよ」

 

3. 卵液をつくる
20200316_atliving_clam_018
「ハマグリから取っただしが冷めたら、よく溶いた卵、薄口しょうゆと混ぜてからざるなどで漉します。口当たりがなめらかになるので、茶碗蒸しのときは必ず漉してください」

 

4. 器に流し入れて蒸気の上がった蒸し器で蒸す

「卵液を入れる器は、蓋つきの茶碗蒸し用でなくても、蕎麦猪口やマグカップで大丈夫です。八分目くらいまで流し入れたら、蒸気が上がっている蒸し器に入れていきます。このときはいったん火を止めないと、蒸気で火傷してしまうので注意してください」

 

5. 卵液の表面が全体的に白く濁ってきたら弱火にする合図

「火をつけたら、最初1〜2分強火にし、表面全体が白っぽくなったら、弱火にして4〜5分蒸しましょう。表面が白く濁ってきたらきちんと火が通っている証拠です。中心に竹串を刺して透明のだしが出てきたらできあがりです。ハマグリと、茹でた菜の花をのせて蓋をし、温めましょう」

 

貝料理は下処理がある分、ある程度の手間がかかりますが、おいしくできあがったときはうれしいもの。酒蒸しやお鍋、炊き込みご飯などの和食だけでなく、ボンゴレやワイン蒸し、シチュー、アクアパッツァなどさまざまな料理で活躍します。旬の味を楽しんでみてくださいね。

 

【プロフィール】

料理研究家 / 荒木典子

京都で育ち、料理上手な祖母と母に囲まれて料理への興味を抱く。大学卒業後にフランスへ留学。帰国して調理師学校へ進み、料理の基礎を学ぶ。その後、世界文化社で料理本の編集者として働き、2007年より独立。書籍や雑誌の仕事を中心に、企業へのレシピ提供、料理店の監修、料理教室の開催など、幅広く活躍している。
http://arakinoriko.com/

 

▼この記事は、GetNaviがプロデュースするライフスタイルウェブマガジン「@Living」から転載したものです▼